Archive for the ‘雇用・労働’ Category

労働者の退職後における競業避止義務

2022-08-29

   企業がそのノウハウの外部への流出を防止するために就業規則や個別の特約により労働者に対し退職後の競業避止義務を課すことがあるところ、どの範囲までこの義務を課すことができるかが問題となることがあります。

   この労働者の退職後の競業避止義務に関し、東京地裁平成7年10月16日決定は、労働者の職務内容が使用者の営業秘密に直接かかわるために特別な当事者の信頼関係から合意がなくても当然に生じる場合と特別の合意によって初めて創設される場合とがあるが、前者の場合にはその禁止期間、禁止行為の範囲や場所を具体化した約定については禁止内容が不当なものでない限り原則として有効と解され、後者の場合には競業行為の禁止の内容が必要最小限度にとどまりかつ十分な代償措置が執られていなければならない。また、労働者に退職後の競業避止義務を負わせる特約に基づいて競業行為の差止請求をするに当たっては、当該競業行為によって使用者の営業上の利益が現に侵害されているか、又は侵害される具体的なおそれがあることを要するとしています。


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就業規則による労働契約の内容である労働条件の変更

2022-08-22

   労働契約法9条本文は,「使用者は,労働者と合意することなく,就業規則を変更することにより,労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と定めていますが,同法10条は,その変更が「合理的なものであるときは,労働契約の内容である労働条件は,当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」としています。

   この就業規則による労働条件の変更について,最高裁昭和43年12月25日判決は,就業規則の作成又は変更によって,労働者の既得の権利を奪い,あるいは不利益な労働条件を一方的に課すことは原則として許されないが,労働条件の統一的かつ画一的処理の要請から当該条項が合理的なものである限り個別の同意がなくても労働者に適用されるとして,55歳停年制を新たに定めた就業規則の改正は,諸般の事情から合理的なもので有効と解されるとしています。


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労働者の解雇期間中の賃金と中間利益の控除

2022-07-25

   権利の濫用になる解雇は無効とされる(労働契約法16条)ところ,解雇されたことにより就労しなかった期間の賃金の扱いが問題となります。

   この解雇期間中の賃金について,最高裁昭和59年3月29日判決は,ユニオン・ショップ協定に基づく解雇が無効で,解雇期間中の労働者の労務提供の不履行が使用者の責に帰すべき事由による場合,労働者は反対給付としての賃金請求権を失わないとしています。

   また,最高裁昭和62年4月2日判決は,使用者が労働者に対して負う解雇期間中の賃金支払債務のうち平均賃金額の六割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許され,右利益の額が平均賃金額の四割を超える場合には更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金の全額を対象として利益額を控除することが許される。そして,賃金から控除し得る中間利益は,その利益の発生した期間が右賃金の支給の対象となる期間と時期的に対応するものであることを要し,ある期間を対象として支給される賃金からそれとは時期的に異なる期間内に得た利益を控除することは許されないとしています。


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労働条件を変更するための変更解約告知

2022-07-11

   使用者からの労働条件の変更の申込を労働者が承諾しないことを理由として行われる解雇を変更解約告知と言います。

   この変更解約告知に関する裁判例を見ると、東京地裁平成7年4月13日決定は、雇用契約により特定された職種等の労働条件を変更するために新契約締結の申込みを伴う雇用契約の解約を行うことは、当該労働条件の変更が会社の業務運営にとって必要不可欠であり、その必要性が労働条件の変更によって労働者が受ける不利益を上回っていて労働条件の変更を伴う新契約締結の申込みがそれに応じない場合の解雇を正当化するに足るやむを得ないものと認められ、かつ、解雇を回避するための努力が十分に尽くされているときには有効であるとしています。また、大阪地裁平成10年8月31日判決は、変更解約告知といわれるものは、その実質は労働条件変更のために行われる解雇であるが、労働条件変更については就業規則の変更によってされるべきものであり、ドイツ法と異なって明文のない我が国においては変更解約告知という独立の類型を設けることは相当でない。本件解雇の意思表示はその実質は整理解雇にほかならないのであるから整理解雇と同様の厳格な要件が必要であるとしています。


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人員整理のための整理解雇

2022-07-04

   業績の悪化や経営不振などといった使用者側の事情によって人員整理のためにおこなわれる解雇を整理解雇と言います。

   この整理解雇が問題となった裁判例を見ると,東京高裁昭和54年10月29日判決が,整理解雇は,事業部門の閉鎖が企業の合理的運営上やむを得ない必要に基づいており,右事業部門に勤務する従業員を他の事業部門の同一あるいは類似の職種に配転する余地がなく,解雇対象者の選定が客観的・合理的基準に基づくものであることの三要件を充足する場合に有効となる。また,労働協約や就業規則における人事協議条項に基づく協議を経ない場合,その他労働者に対する十分な説明を欠くなど手続上の信義則に違反した場合には,整理解雇は権利の濫用として無効となるとしています。また,東京地裁平成12年1月21日決定が,いわゆる整理解雇の四要件は,整理解雇の範疇に属すると考えられる解雇について解雇権の濫用に当たるかどうかを判断する際の考慮要素を類型化したものであって各々の要件が存在しなければ法律効果が発生しないという意味での法律要件ではなく,解雇権濫用の判断は,本来事案ごとの個別具体的な事情を総合考慮して行うほかないものであるとしています。


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労働契約法16条が定める解雇権の濫用法理

2022-06-27

   労働契約法16条は,「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする」と規定しています。

   この規定は,裁判例の蓄積によって確立した解除権濫用法理を明文化したものです。この法理に関する裁判例を見ると,最高裁昭和50年4月25日判決が,「使用者の解雇権の行使も,それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には,権利の濫用として無効になる」としています。また,最高裁昭和52年1月31日判決が,労働者に解雇事由がある場合においても,「当該具体的な事情のもとにおいて,解雇に処することが著しく不合理であり,社会通念上相当なものとして是認することができないときには,当該解雇の意思表示は,解雇権の濫用として無効になる」としています。


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労働契約の内容となる就業規則の合理性

2022-06-13

   労働者と使用者との間の労働契約について労働契約法7条は、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるものと規定しています。

   この就業規則の効力について、最高裁昭和61年3月13日判決は、就業規則が労働者に対し一定の事項につき使用者の業務命令に服すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものである限りにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができるとしています。

   また、会社の都合による特別な場合のほかは満65歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日が到来したときは、それ以後雇用契約を更新しないと定める就業規則の合理性について、最高裁平成30年9月14日判決は、期間雇用社員について労働契約法にいう合理的な労働条件を定めるものであるとしています。


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時間外・休日・深夜労働についての割増賃金の支払い

2022-06-06

   使用者は、時間外・休日・深夜労働について割増賃金を支払わなければならない(労働基準法37条1項4号)とされています。そして、この割増賃金は、時間外労働の場合は通常の労働時間又は労働日の賃金の25%以上、休日労働の場合は35%以上(同法同条1項2項)、深夜労働の場合は通常の労働時間の賃金の25%以上(同法同条4項)とされています。

   この割増賃金の支払いと通常の労働時間の賃金に支払いについて、裁判例は、支払いが通常の労働時間の賃金と割増賃金部分との判別が不可能な場合には割増賃金が支払われたとはいえないとしています(最高裁平成6年6月13日判決、最高裁平成24年3月8日判決、最高裁平成29年7月7日判決等)。


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職場環境への配慮等についての親会社の責任

2022-05-30

   使用者は、労働者の職場環境に配慮する義務を負うとされますが、グループ企業においては、子会社の職場環境についてコンプライアンスを統括する親会社の責任が問題とされることがあります。

   この親会社の責任が問題となった裁判例を見ると、親会社が自社及び子会社等のグループ会社における法令遵守体制を整備し法令等の遵守に関する相談窓口を設け相談への対応を行っていたという事案に関し、最高裁平成30年2月15日判決は、親会社が子会社の従業員による相談の申出に求められた対応をしなかったことをもって信義則上の義務違反とはいえないとしています。


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労働契約の内容となる就業規則の合理性

2022-05-02

   労働者と使用者との間の労働契約について労働契約法7条は、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるものと規定しています。

   この就業規則の効力について、最高裁昭和61年3月13日判決は、就業規則が労働者に対し一定の事項につき使用者の業務命令に服すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものである限りにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができるとしています。また、会社の都合による特別な場合のほかは満65歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日が到来したときは、それ以後雇用契約を更新しないと定める就業規則の合理性について、最高裁平成30年9月14日判決は、期間雇用社員について労働契約法にいう合理的な労働条件を定めるものであるとしています。


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