5月, 2025年
遺留分の侵害と遺留分額への相続債務の加算
遺留分を算定する際の基礎財産は,被相続人が相続開始時に有した財産に所定の贈与財産を加え,そこから相続債務を差し引いたもの(民法1043条1項)とされていますが,相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合において,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することの可否が問題となったことがあります。この問題について,最高裁平成21年3月24日判決は,「相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により相続分の全部が当該相続人に指定された場合,遺言の趣旨等から相続債 務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り,当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表示されたものと解すべきであり,これにより,相続人間においては,当該相続人が指定相続分の割合に応じて相続債務をすべて承継することになると解するのが相当である」「そして,遺留分の侵害額は,確定された遺留分算定の基礎となる財産額に民法1028条所定の遺留分の割合を乗じるなどして算定された遺留分の額から,遺留分権利者が相続によって得た財産の額を控除し,同人が負担すべき相続債務の額を加算して算定すべきものであり」「その算定は,相続人間において,遺留分権利者の手元に最終的に取り戻すべき遺産の数額を算出するものというべきである。したがって,相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされ,当該相続人が相続債務もすべて承継したと解される場合,遺留分の侵害額の算定においては,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないものと解するのが相当である」と判示して相続債務の加算を否定しています。
【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)
最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)

公園で咲く花
不明瞭な遺言の解釈
その人の最終意思を死後に実現するための制度として遺言が利用されますが,その趣旨が不明瞭な場合,その解釈が必要になります。
この遺言の解釈が問題となった事案について,最高裁平成17年7月22日判決は,「遺言を解釈するに当たっては,遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく,遺言者の真意を探究すべきであり,遺言書が複数の条項から成る場合に,そのうちの特定の条項を解釈するに当たっても,単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出し,その文言を形式的に解釈するだけでは十分でなく,遺言書の全記載との関連,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して ,遺言者の真意を探究し,当該条項の趣旨を確定すべきである」と判示して,遺言者の真意を探求して遺言の趣旨を確定すべきとしています。
【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)
最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)

公園で咲く花
遺留分の算定と相続分の譲渡
遺留分を算定する際の基礎財産は,被相続人が相続開始時に有した財産に所定の贈与財産を加え,そこから相続債務を差し引いたもの(民法1043条1項)とされていますが,この遺留分の算定において相続分の譲渡が考慮されるかという問題があります。
この問題について,最高裁平成30年10月19日判決は,「共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは,積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し,相続分の譲渡に伴って個々の相続財産についての共有持分の移転も生ずるものと解される。そして,相続分の譲渡を受けた共同相続人は,従前から有していた相続分と上記譲渡に係る相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割手続等に加わり,当該遺産分割手続等において,他の共同相続人に対し,従前から有していた相続分と上記譲渡に係る相続分との合計に相当する価額の相続財産の分配を求めることが できることとなる。このように,相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができる。遺産の分割が相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法909条本 文)とされていることは,以上のように解することの妨げとなるものではない。したがって,共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,上記譲渡をした者の相続において,民法903条1項に規定する「贈与」に当たる」と判示して,相続分の譲渡が考慮されることを認めています。
【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)
最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)

公園で咲く花
面会交流の履行確保のための強制執行
離婚が問題となって父母の一方が子と別居しているような場合に親子の交流を実現する権利を面会交流権と言い,この面会交流について協議・調停・審判等で取り決めをすることがありますが,この取り決めが履行されない場合に強制執行が認められるのかという問題があります。
この問題について,最高裁平成25年3月28日決定は,「子を監護している親(以下「監護親」という。)と子を監護していない親(以下「非監護親」という。)との間で,非監護親と子との面会交流について定める場合,子の利益が最も優先して考慮されるべきであり(民法766条1項参照),面会交流は,柔軟に対応することができる条項に基づき,監護親と非監護親の協力の下で実施されることが望ましい。一方,給付を命ずる審判は,執行力のある債務名義と同一の効力を有する(平成23年法律第53号による廃止前の家事審 判法15条)。監護親に対し,非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判は,少なくとも,監護親が,引渡場所において非監護親に対して子を引き渡し,非監護親と子との面会交流の間,これを妨害しないなどの給付を内容とするものが一般であり,そのような給付については,性質上,間接強制をすることができないものではない。したがって,監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である」と判示しています。
【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)
最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)

公園で咲く花