Archive for the ‘ハラスメント’ Category

インターネット上の名誉毀損と真実性の証明・故意

2019-10-15

 人の名誉を毀損した場合、名誉毀損罪(刑法230条1項)の成立が考えられますが、公益を図る目的で公共の利害に関する事実を適示した場合には適示した事実が真実であるとの証明があればこれを処罰しないとされています(同法230条の2)。そして、近時、インターネットを介した名誉毀損が問題となるケースが増加しているところ、インターネット上の表現であることがこの真実性の証明や故意の成否に影響するかどうかという問題があります。

 この問題に関する裁判例を見ると、最高裁平成22年3月15日決定が、このような場合でも真実性は合理的な疑いを入れない程度に証明されることが必要で、また、確実な資料・根拠がなければ故意は否定されないとしています。



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不貞行為による不法行為

2018-11-12

 不貞行為は民法上の不法行為とされるところ、どのような行為が不法行為としての不貞行為となるかが問題となります。

 そこで、この問題に関する裁判例を見ると、子を妊娠、出産すること、その子の認知請求することが問題となった事案について東京高裁昭和57年9月30日判決は、「懐胎、出産したことは」「不法行為責任の範囲、程度の大小にかかわる問題であって、別個独立の不法行為自体が生ずるものとみることはできない。そして、一旦非嫡の子が出生した以上、父に対して認知を求めることはその子の権利であるから、・・・認知請求をした行為を違法な行為とみることもできない」と判示しています。

 また、ホステスとの面会が問題となった事案について東京地裁平成21年7月16日判決は、「婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性のある交流、接触であるとは認め難く、婚姻共同生活の平和を侵害する蓋然性があるとはいえないから、不法行為に当たらない」と判示しています。

 さらに、愛情表現を含むメールを送ることが問題となった事案について東京地裁平成24年11月28日判決は、「婚姻生活の平穏を害するようなものというべきである」として不法行為の成立を肯定しましたが、東京地裁平成25年3月15日判決は、「婚姻生活を破綻に導くことを殊更意図していたとはいえない」として不法行為の成立を否定しています。

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プライバシーの侵害の成立要件

2018-11-05

 インターネット上の投稿などによるプライバシーの侵害が問題とされるケースが生じているところ、プライバシーの侵害の成立要件が問題となります。

 この点、小説によるプライバシーの侵害が問題となったいわゆる「宴のあと事件」について東京地裁昭和39年9月28判決が、
① 私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること、
② 一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められる事柄であること、
③ 一般の人々にいまだ知られていない事柄であること、
④ このような公開によって当該私人が実際に不快、不安の念を覚えたこと
をプライバシー侵害の成立要件としています。

そして、その後の裁判例では、上記判決で提示された要件で判断しているものが多いようです。

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労働者の人事異動としての降格

2018-07-17

 企業の中における人事異動として昇進・昇格・降格があるところ、降格が認められるかどうかが裁判上問題となっています。

① 役職の引下げとしての降格について、使用者は、就業規則に特別の根拠がなくても人事権により降格を命じることができる(東京高裁平成21年11月4日判決)とされていますが、退職に追い込むことを意図した降格を権利の濫用とした裁判例(東京地裁平成7年12月4日判決)があります。

② 資格の引下げとしての降格を命じるには、労働者の同意または就業規則・給与規程上の根拠が必要とされています(東京地裁平成8年12月11日決定)。

③ 職務等級の引下げとしての降格を命じるにも、労働者の同意または就業規則上の根拠が必要とされ、東京高裁平成23年12月27日判決は、職務の変更と役割グレードの引下げが分離して運用されている場合は、職務の変更が有効でも役割グレードを一方的に引き下げることはできないとしています。

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企業における教育訓練・能力開発

2018-07-02

 労働者に必要な職業能力を身につけさせるために企業において教育訓練が行われることがありますが、能力開発促進法は、労働者の職業能力の開発・向上に対する援助を事業主の責務とし(同法4条1項)、そのための機会確保措置として業務の遂行の過程内における職業訓練、業務の遂行の過程外における職業訓練等の訓練(同法9条)、労働者が行う職業能力開発の支援(同法10条の2、10条の3)について規定しています。

 また、使用者は、人事権により教育訓練・能力開発の受講を命じることができるとされ、安全衛生・職場規律に関するものなど業務との関連性の認められる受講命令は認められます(東京高裁昭和52年1月26日判決)が、文化・一般教養研修など業務との関連性が乏しい事項に関する受講命令は許されない可能性があります。

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非正規雇用とセクシャル・マタニティーハラスメント

2016-04-11

   職場を労働者にとって働きやすいものにするため、企業によるハラスメント対策が必要になります。

   厚生労働省によれば、全国の労働局に寄せられる男女雇用機会均等法関連の相談のうちセクシャルハラスメント(セクハラ)に関するものは毎年1万件前後で平成26年は1万1289件となっており、平成28年4月7日付け新聞は、非正規労働者など弱い立場の人との地位の差がその背景に有るとの識者の見解を紹介しています。

   また、厚生労働省が平成27年に行った調査によれば、正社員の約2割、派遣労働者の約5割がマタニティーハラスメント(マタハラ)の被害にあっています。

   立法を見ると、マタハラの防止策を企業に義務づける男女雇用機会均等法などの改正案が通常国会で成立し、来年の1月に施行されることになっています。


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過重労働による健康被害

2015-09-24

   使用者は、労働者に対し、労務指揮権や人事権等の権限を有する一方で、労働者の健康管理の責務を負います。

   健康被害に関する労災支給決定件数を見ると、脳・心臓疾患に関する労災支給決定件数は年間300万件前後で推移し、精神障害に関する労災支給決定件数は400件以上になっています。そして、労災支給決定の原因の多くが過重労働やパワハラ・セクハラ等となっています。

   判例も労働者の健康管理につき言及しています。最高裁平成12年3月24日判決は、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当」と判示しています。


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リベンジポルノ対策

2015-07-06

   嫌がらせや報復などのために元の交際相手などの性的な写真・動画をインターネット上に流出させるいわゆる「リベンジポルノ」が問題になっていることを受けて、平成26年11月19日、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律が成立し、同年同月27日に公布されました。この法律の主な内容は、以下のようなものです。

   ①目的(ア 私事性的画像記録の提供等により私生活の平穏を侵害する行為の処罰、イ 私事性的画像記録に係る情報の流通によって名誉・私生活の平穏が侵害された場合における「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任制限法)の特例、ウ 被害者に対する支援体制の整備等について定めることによる、個人の名誉・私生活の平穏の侵害による被害の発生・拡大の防止)

   ②私事性的画像記録・私事性的画像記録物の定義

   ③私事性的画像記録提供等の罪(提供・公然陳列等)

   ④プロバイダ責任制限法の特例(同意照会期間の短縮・申出主体の拡大)

   ⑤被害者に対する支援体制の整備

   ⑥被害の発生を未然に防止するための教育・啓発活動


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児童ポルノの所持・提供等と児童の権利の擁護(児童ポルノ禁止法)

2015-06-15

   児童ポルノに対して有効な規制をするという見地から平成11年に「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(児童ポルノ禁止法)が制定されましたが、この法律の改正法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律)が平成26年6月18日に成立し、同月25日に公布されました。この改正の主な内容は以下のようなものです。


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妊娠・出産を理由とした職場での嫌がらせ(マタニティーハラスメント)

2014-11-04

   妊娠や出産を理由とした女性に対する職場での嫌がらせをマタニティーハラスメント(マタハラ)と言い、男女雇用機会均等法は妊娠中や出産後1年未満における解雇を無効とするなど女性の労働者に対して不利益を被らせる取り扱いを規制していますが、妊娠によって降格させられたのはこのマタハラに当たるとして元の勤務先に対して損害賠償を請求した事件についての最高裁の上告審判決が平成26年10月23日にありました。

   そして、1審、2審では原告が敗訴していましたが、この最高裁判決は、「本人が降格を承諾したか、雇用主に降格が必要な特段の事情がない限り、降格は違法」という判断をして、2審判決を破棄して広島高等裁判所に審理を差し戻しています。

   平成26年10月24日付けの新聞報道によれば、昨年度において各地の労働局には「妊娠や出産を理由とした不利益取り扱い」に関する相談が計2090件寄せられましたが、労働局が是正を指導したのはわずか28件だったそうです。このような状況に対してこの最高裁の判決がどのような影響を与えるかに注目する必要があります。


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