Archive for the ‘相続’ Category

医療過誤を判断する基準としての医療水準

2019-06-10

 医療過誤においては医療機関に課される注意義務の程度が問題となるところ、この程度を判断する基準として医療水準という概念が存在します。

 この医療水準に関する裁判例を見ると、最高裁平成7年6月9日判決は、「新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情が存しない限り、右知見は右医療機関にとっての医療水準である」と判示しています。

 なお、この医療水準から要求される注意義務を軽減する特約の効力に関する裁判例として、東京高裁昭和42年7月11日判決は、手術の結果について異議を申し立てないとする誓約書についてその効力を否定しています。



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終身借家権(終身建物賃貸借)

2019-04-15

 建物の賃貸借に関し、借家人が生きている限り存続し、死亡したときに終了する終身借家権(終身建物賃貸借制度)という制度が認められています(高齢者の居住の安定確保に関する法律)。そして、この借家契約においては、

① 書面によって行われること(同法54条2号、57条)

② 都道府県知事の認可事業であること(同法52条以下)

③ 建物の規模及び設備等が国土交通省例で定める基準に適合すること

④ 借家人は60歳以上の者であること

 などが要件とされ、不確定期限(同法52条、54条2号)で、相続権が排除(同法52条)されます。

 なお、上記の制度の他に、期間が定められた契約で賃借人が死亡した場合には期間が満了する前でも契約が終了する期間付き死亡時終了建物賃貸借制度があります。



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不動産に関する消費者被害

2019-02-25

 詐欺的な取引によって消費者被害が生じることがあるところ不動産に関するものとして価値の乏しい土地を売りつける原野商法や不要なリフォーム工事を行わせるようなリフォーム詐欺があります。

 原野商法については所定の要件をみたす場合にクーリングオフによる契約の解除(宅地建物取引業法37条の2)が可能となりますが、クーリングオフができない場合でも契約を錯誤により無効(東京地裁昭和58年6月29日判決)、公序良俗違反(名古屋地裁昭和63年7月22日判決)とした裁判例、不法行為の成立を認めた裁判例(東京地裁平成2年9月5日判決、大阪高裁平成7年5月30日判決)があります。  また、リフォーム詐欺についてもクーリングオフや不実告知による契約の取消(消費者契約法4条1項1号、同条5項3号)などが考えられるところ、さらに、請負人の瑕疵担保責任と不法行為を認めた裁判例(高松高裁平成20年2月21日判決)があります。



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相続放棄の申述と意思表示の瑕疵

2018-12-10

 相続人は、相続を承認するか放棄するかを選ぶことができますが、この相続の放棄につき錯誤等があった場合にその効力が否定されるかどうかが問題となります。

 この点、最高裁昭和40年5月27日判決は、「相続放棄は家庭裁判所がその申述を受理することによりその効力を生ずるものであるが、その性質は私法上の財産法上の法律行為であるから、これにつき民法95条の規定の適用があることは当然である」と判示してその効力が否定される可能性を認め、また、福岡高裁平成10年8月26日判決は、「相続放棄の申述に動機の錯誤がある場合、当該動機が家庭裁判所において表明されていたり、相続の放棄により事実上および法律上の影響を受ける者に対して表明されているときは、法律行為の要素の錯誤として相続放棄は無効になる」として要素の錯誤があった場合は無効になると判示しています。



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祭祀(さいし)承継者の決定

2018-11-26

 祭祀承継者について民法897条は、被相続人が指定することができ、この指定が無い場合には慣習により定まる、慣習も無い場合には家庭裁判所が定めるとしているところ、家庭裁判所はどのようにして祭祀承継者を決めるかが問題となります。

 そこで、この問題に関する裁判例を見ると、東京高裁平成18年4月19日判決が、「承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係、承継候補者と祭具等との間の場所的関係、祭具等の取得の目的や管理等の経緯、承継候補者の祭祀主催の意思や能力、その他一切の事情・・・を総合して判断すべきであるが、祖先の祭祀は今日もはや義務ではなく、死者に対する慕情、愛情、感謝の気持ちといった心情により行われるものであるから、被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって、被相続人に対し上記のような心情を最も強く持ち、他方、被相続人からみれば、同人が生存していたとすれば、おそらく指定したものであろう者をその承継者と定めるのが相当である」と判示しています。

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相続放棄の熟慮期間の起算点

2018-11-19

 民法915条1項は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に」「承認又は放棄をしなければならない」と定めているところ、この3箇月の熟慮期間の起算点が問題となります。

 この点、最高裁昭和59年4月27日判決は、熟慮期間は、原則として、相続開始の原因たる事実およびこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から起算すべきとした上で、「右各事実を知った場合であっても、右各事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、・・・熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識したとき又は通常これを認識しうべき時から起算すべき」と判示しています。

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マンションの瑕疵と契約の解除

2018-09-24

 マンションを購入した後にさまざまな不都合が判明することがありますが、このような瑕疵がマンションの売買契約の解除原因となるかが問題となります。

 まず、マンション内で自殺があったことが判明した事案について、横浜地裁平成元年9月7日判決は、「売買の目的物に瑕疵があるというのは、その物が通常保有する性質を欠いていることをいうのであって、右目的物が建物である場合、建物として通常有すべき設備を有しない等の物理物欠陥としての瑕疵のほか、建物は、継続的に生活する場であるから、建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に原因する心理的欠陥も瑕疵と解することができる」「解除をしうる瑕疵であるというためには、単に買主において右事由の存する建物の居住を好まないだけでは足らず、それが通常一般人において、買主の立場におかれた場合、右事由があれば、住み心地の良さを欠き、居住の用に適さないと感ずることに合理性があると判断される程度にいたったものであることを必要とする」とした上で、解除原因と認めています。

 また、シックハウスであることが判明した事案について、東京地裁平成17年12月5日判決は、「本件建物にはその品質につき当事者が前提としていた水準に到達していないという瑕疵が存在する」「当該瑕疵は取引上要求される一般的な注意を払っていても容易に発見し得ないものであるというべきである」として、解除原因と認めています。

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認知されていない子との間での扶養の権利義務

2018-09-10

 嫡出でない子と父との法律上の父子関係は認知によって発生するところ、認知のない血縁上の父子の間に扶養の権利義務関係は生じないかという問題があります。

 この問題に関する裁判例をみると、東京地裁昭和54年3月28日判決は、「非嫡出子については、父が認知しないかぎり法律上の父子関係が発生しなく、法律上の父子関係がない以上父は単に血縁上の子に対しては扶養義務を負わない」と判示しています。

 一方、認知請求訴訟の係属中でその判決が確定する前に扶養を請求した事案について、福岡家裁昭和40年8月6日審判は、認知請求を正当として扶養義務を肯定し、また、請求者が内縁の夫の子であると推定される事案について、東京家裁昭和50年7月15日審判は、認知請求事件の判決をまたずに扶養義務を肯定しています。

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内縁関係における費用の分担

2018-09-03

 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して婚姻から生じる費用(婚姻費用)を分担する(民法760条)とされているところ、内縁も婚姻に準ずる関係として婚姻におけるのと同様の費用の分担が認められるかどうかが問題となります。

 そこで、この問題に関する裁判例をみると、最高裁昭和33年4月11日判決が「内縁が法律上の婚姻に準ずる関係と認むべきであること前記説明の如くである以上、民法760条の規定は、内縁に準用されるものと解すべき」とした上、「被上告人の支出した医療費は、別居中に生じたものであるけれども、なお、婚姻から生じる費用に準じ、同条の趣旨に従い、上告人においてこれを分担すべきものといわなければならない」と判示しています。

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親族の扶養の程度・方法

2018-08-27

 親族の扶養の程度又は方法については、民法879条が当事者間の協議か扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮した上で家庭裁判所の審判で定めるとしています。

 また、扶養方法としては引取扶養と給与扶養があり、給与扶養については金銭給与扶養と現物給与扶養があるとされています。

 なお、扶養義務者が複数存在する場合、引取扶養をする者と給与扶養を行うものを決めることも可能で、大阪家裁昭和40年3月20日審判、仙台家裁昭和56年3月31日審判などは、扶養義務者のうちのある者に対し引取扶養を、他の者に対し金銭給与扶養を命じています。

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