3月, 2019年
定期借家契約における事前説明文書
借家契約のなかには普通の借家契約と異なり契約が更新されることがなく期間の満了によって終了する定期借家契約が存在するところ、この定期借家契約においては、契約を締結するに際し、契約書とは別に事前に書面を交付してこの契約が定期借家契約であることを説明しなければならない(借地借家法38条2項)とされ、このような事前の書面による説明を怠った場合には、契約書が作成されていても、その契約は普通の借家契約となります(同法38条3項)。
そこで、家主は、定期契約書とは別に説明用の事前説明文書を作成した上でこれを借家人になろうとする者に対し交付し、さらにこれから締結しようとしている契約が定期借家契約であることを説明することが必要になります。
なお、最高裁平成24年9月13日判決は,この事前説明文書について、
「法38条1項の規定に加えて同条2項の規定が置かれた趣旨は、定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って、賃借人になろうとする者に対し、定期建物賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了することを 理解させ、当該契約を締結するか否かの意思決定のために十分な情報を提供することのみならず、説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止することにあるものと解される。」「以上のような法38条の規定の構造及び趣旨に照らすと、同条2項は、定期建物賃貸借に係る契約の締結 に先立って、賃貸人において、契約書とは別個に、定期建物賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により 終了することについて記載した書面を交付した上、その旨を説明すべきものとしたことが明らかである。」「そして、紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると、上記書面の交付を要するか否かについては、当該契約の締結に至る経緯、当該契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といっ た個別具体的事情を考慮することなく、形式的、画一的に取り扱うのが相当である。」「法38条2項所定の書面は、賃借人が、当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず、契約書とは別個独立の書面であることを要する」と 判示しています。
また、東京地裁平成24年3月3日判決が、「定期建物賃貸借契約の更新がないこととする定めが有効であるためには、賃貸人において、賃借人に対し、 賃貸借契約締結前に、締結される建物賃貸借契約が、同法38条1項の規定による定期建物賃貸借契約であること、当該建物賃貸借契約は契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了することを記載した書面を契約書とは別に交付するとともに、これを口頭で説明することを要すると解される(同条3項参照)。」 「説明書面を交付して行うべき説明は、締結される建物賃貸借契約が、一般的な建物賃貸借契約とは異なる類型の定期建物賃貸借契約であること、その特殊性は、同法26条所定の法定更新の制度及び同法28条所定の更新拒絶に正当事由を求める制度が排除されることにあるといった定期建物賃貸借契約という制度の少なくとも概要の説明と、その結果、当該賃貸借契約所定の契約期間の満了によって確定的に同契約が終了することについて、相手方たる賃借人が理解してしかるべき程度の説明を行うことを要する」と判示しています。
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クレジットに関するトラブル
購入した商品の代金の決算については現金決済のほかにクレジット決済がありますが、このクレジット決済において消費者から名義を借りて販売業者が立替金を不正に取得することがあります。
このような名義貸しの事案について、最高裁平成29年2月21日判決は、立替払契約の締結の判断に影響を及ぼす重要事項の不実告知にあたるのであれば不実告知による取消を認めることができるとしています。
なお、クレジットの不正利用としては特約があるのに契約書や電話応対では商品販売のみであるように表示するというものやモニター料を支払うので支払いの負担はないと言ってクレジット契約を締結させるというものもあります。
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訪問販売に対する特定商取引法による規制
訪問販売とは、営業所、代理店、露店、屋台店その他これに類する店以外の場所において契約する場合(特定商取引法2条1項1号)、特定顧客については営業所等において契約をした場合(同法2条1項1号)とされているところ、同法は、この訪問販売について以下のような規制をしています。
①事業者名、商品等の種類、勧誘目的等の明示の義務付け(同法3条)
②販売目的秘匿勧誘の禁止(同法6条4項)
③契約書面の交付の義務付け(同法4条、5条)
④クーリングオフ(同法9条)
⑤過量販売解除(同法9条の2)
⑥不実の告知、故意の事実不告知、威迫・困惑行為等の禁止(同法6条、7条)
⑦損害賠償額の制限(同法10条)
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建物の借主の追い出し屋
不動産に関するトラブルにはさまざまなものがありますが、建物の鍵を交換して賃借人を締め出すなどのいわゆる「追い出し屋」による被害が近時増加しているようです。賃借人の了解を得ずに部屋の鍵を交換して賃借人が建物に入ることをできなくしたり、賃借人の了解を得ずに部屋の中に入って賃借人の持ち物を外に運び出すといったことをします。
そこで、このような追い出し屋が問題になった事案に関する裁判例を見ると、大阪高裁平成23年6月10日判決が、賃借人を追い出し、室内にある動産を処分した不動産の管理業者と賃貸人の共同不法行為を認めています。
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