Archive for the ‘相続’ Category

遺留分を害する遺贈又は贈与とその効力

2021-04-26

 被相続人の処分によって奪われることのない相続人に留保された相続財産の一定の割合を遺留分と言います。そして、遺留分権利者及びその承継人は、この遺留分を保全するのに必要な限度で遺贈及び贈与の減殺を請求することができる(民法1031条)とされています。

 この遺留分を害する遺贈又は贈与に関する裁判例を見ると、最高裁平成14年11月5日判決は、自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為は本条に規定する遺贈又は贈与に当たるものではなく、これに準ずるものということもできないとしています。

 また、この遺留分を害する処分の効力に関する裁判例を見ると、最高裁昭和25年4月28日判決は、被相続人がその全財産を相続人以外の者に贈与した場合に遺留分減殺請求権を認めた民法の趣意からしても、右遺贈が公序良俗に反し無効であるとはいえないとしています。

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扶養義務者間の順位と求償

2021-04-19

 直径血族と兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある(民法877条1項)とされています。また、家庭裁判所は、特別の事情があるときは、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる(同法同条2項)とされています。そして、このような扶養をする義務を負う者が数人ある場合において、扶養すべき者の順序について、当事者間の協議が不調または不可能なときは、家庭裁判所が定める(同法878条)とされています。

 この扶養義務者の順位に関する裁判例を見ると、離婚後の父母の扶養義務について、大阪高裁昭和37年1月31日決定は、子に対し親権を有する者又は同居する者が当然他方より先順位にあるのではないとしています。また、非嫡出子の父母の扶養義務について、仙台高裁昭和37年6月15日決定は、親権や共同生活のいかんにかかわらず違いはないとしています。

 なお、扶養義務者間の求償について、最高裁昭和26年2月13日判決は、現に扶養をしている扶養義務者の意に反して扶養権利者を引き取って扶養したという事実だけでは、引き取った他の扶養義務者が自己のみで扶養費用を負担すべきものとすることはできないとしています。

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「相続させる」趣旨の遺言の効力

2021-04-12

 被相続人は、遺言で遺産の分割の方法を定めることができる(民法908条)とされているところ、遺産を「相続させる」という遺言がこの遺産の分割の方法の指定になるかどうかが問題となることがあります。

 この問題に関する裁判例を見ると、最高裁平成3年4月19日判決は、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺言書の記載からその趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺産の分割の方法を定めたものであるとし、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合は、その遺言において、相続による承継をその相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡時に直ちにその遺産はその相続人に相続により承継されるものとしています。

 また、登記に関し、最高裁平成7年1月24日判決は、遺言により所有権を取得した相続人は、単独で登記手続をすることができるとし、最高裁平成14年6月10日判決は、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言によって不動産を取得した者は、登記なくしてその権利を第三者に対抗することができるとしています。

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自筆証書遺言の方式

2021-04-05

 遺言者が、遺言の全文・日付け及び氏名を自書しこれに印を押して行う遺言を自筆証書遺言と言います(民法968条1項)。

 この自筆証書遺言の方式が問題となった裁判例を見ると、日付について、最高裁昭和52年11月21日判決は、記載された日付が真実の作成日付と相違してもその誤記であること及び真実の作成の日が証書の記載その他から容易に判明する場合には遺言は無効とならないとしています。一方、最高裁昭和54年5月31日判決は、「昭和四拾壱年七月吉日」と記載されている遺言は無効としています。

 また、氏名について、大審院大正4年7月3日判決は、遺言者が何人であるかを知ることができ、他人との混同が生じない場合には名のみの記載でよいとしています。

 また、押印について、最高裁平成元年2月16日判決は、遺言者が印章に代えて拇印その他の指頭に墨・朱肉等を付けて押印することをもって足りるとし、最高裁平成6年6月24日判決は、本文の自署名下には押印が無かったが、これを入れた封筒の封じ目にされた押印があれば押印に欠けるところはないとしています。

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公正証書遺言の方式

2021-03-29

 遺言は、公正証書によって行うことができる(民法906条)とされています。

そして、

①証人二人以上の立会があること(同条1号)、②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること(同条2号)、

③公証人が遺言者の口授を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させること(同条3号)、

④遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名捺印すること(同条4号)、

⑤公証人がその証書は以上の方式に従って作成したものである旨を付記して署名捺印すること(同条5号)

がその方式とされています。

 この公正証書遺言の方式が問題となった裁判例を見ると、①の証人の立会いについて、最高裁平成10年3月13日判決は、証人は、遺言者が本条4号所定の署名及び押印をするに際してもこれに立ち会うことを要するとしています。

 また、②の口授について、最高裁昭和51年1月16日判決は、公証人の質問に対し遺言者が言語をもって陳述することなく、単に肯定又は否定の挙動を示したにすぎないときは口授があったとはいえないとしています。

 また、③の読み聞かせ等について、最高裁昭和43年12月20日判決は、公証人があらかじめ他人から聴取した遺言の内容を筆記し公正証書用紙に清書した上、その内容を遺言者に読み聞かせたところ、遺言者が右遺言の内容と同趣旨を口授しこれを承認して右書面に自ら署名捺印した場合に本条の方式に違反しないとしています。

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推定相続人の廃除原因

2021-03-22

 民法892条は、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができると規定し、同法893条は、遺言による推定相続人の廃除を規定しています。

 そこで、この推定相続人の排除原因に関する裁判例を見ると、東京高裁平成4年12月11日判決が、虐待又は重大な侮辱について、被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を毀損する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的協同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるものをも含むとしています。

一方、大審院大正11年7月25日判決は、老齢の尊属親に対する甚だしい失行があったとしてもそれが一時の激情に出たものである場合は重大な非違とはいえないとし、また、大審院大正15年6月2日判決は、父がその子を非道に待遇したためにその子の非行を誘発するようになった場合は廃除権が常に生じるものではないとしています。

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相続の放棄の熟慮期間の起算点とその期間の伸長

2021-03-08

 民法915条1項は、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続について単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならないが、この期間は利害関係人、検察官の請求によって家庭裁判所において伸長することができるとしています。

 この3か月という熟慮期間の起算点に関し、最高裁昭和59年4月27日判決は、被相続人に相続財産が全く存在しないと信ずるにつき相当な理由がある場合には、相続財産の全部または一部の存在を認識した時または通常これを認識し得るべき時から起算するとしています。

 また、同法916条は、再転相続の場合につき、相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、熟慮期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算するとし、最高裁昭和63年6月21日判決は、甲の相続人につきその相続人乙が承認放棄をしないで死亡し、乙の相続人丙が乙の相続につき放棄をしていない場合に関し、甲の相続について放棄をすることができ、また、その後に丙が乙の相続を放棄しても、丙が先に甲の相続についてした放棄の効力がさかのぼって無効になることはないとしています。

 なお、相続人が未成年者、成年被後見人であるときの熟慮期間は、その法定代理人が本人のために相続の開始があったことを知った時から起算する(同法917条)とされています。

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限定承認の申述

2021-03-01

 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務および遺贈を弁済すべきことを留保して相続の承認をすることができ(限定承認、民法922条)、相続人が数人あるときは、共同相続人の全員が共同してのみ限定承認をすることができる(同法923条)とされています。また、限定承認をしようとするときは、同法915条1項の期間内に相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨の申述をしなければならない(同法924条)とされています。

 この限定承認が問題となった裁判例を見ると、被相続人が設定した抵当権が限定承認の当時に未登記であった事案に関し、大審院昭和14年12月21日判決は、抵当権者は、相続人に対し、その設定登記を請求する利益を有せず、登記を請求できないとしています。

 また、不動産の死因贈与の受贈者が贈与者の相続人であって限定承認がなされた事案に関し、最高裁平成10年2月13日判決は、死因贈与に基づく限定承認者への所有権移転登記が相続債権者による差押登記より先になされたとしても、信義則に照らし、限定承認者は、相続債権者に対し、不動産の所有権取得を対抗することができないとしています。

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遺産分割の効力

2021-02-01

 遺産の分割は、相続の開始した時に遡ってその効力を生ずる(遡及効、民法909条本文)とされています。また、この遺産分割の遡及効は、第三者の権利を害することができない(同条但書)とされています。そして、遺産の相続によって不動産に関する権利を取得した相続人は、登記を経なければ遺産の分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相続分を超える権利の取得を対抗できない(最高裁昭和46年1月25日判決)とされています。

 なお、登記実務では、遺産分割の合意があったときは、被相続人の登記名義のままで、直ちに各人名義の相続登記をすることができる(昭和19年10月19日民事甲692号回答)とされています。

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遺言執行者の解任請求

2021-01-25

 遺言者は、遺言で遺言執行者を指定し、または、その指定を第三者に委託することができる(民法1006条1項)とされています。また、遺言執行者が指定されていないときまたはなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって遺言執行者を選任する(同法1010条)と規定されています。

 そして、この遺言執行者は、その任務を怠ったときその他正当の事由があるときは、利害関係人は、その遺言執行者の解任を家庭裁判所に請求することができる(同法1019条1項)とされています。

 そこで、この解任の事由が問題となった裁判例を見ると、遺言内容の実現に関する事務について適正な処理を怠ったこと(名古屋高裁昭和32年6月1日決定、福岡家裁大牟田支部昭和45年6月17日審判)、相続人の一部との意見の対立のため不公正等の感情をいだかせたこと(東京高裁昭和44年3月3日決定)は解任の事由となりうるとされていますが、相続人の協力を得られないことなどから円滑な職務執行が妨げられた場合に解任の事由を否定(広島高裁松江支部平成3年4月9日決定等)しています。

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