Archive for the ‘交通事故’ Category

内縁関係の当事者が死亡した場合における財産分与

2020-12-14

 夫婦が離婚する場合、財産分与(民法768条)が問題となるところ、内縁関係の当事者の一方が死亡した場合にも上記規定が適用されるのかという問題があります。

 この問題に関する裁判例を見ると、その一方が死亡したことによって内縁関係が消滅した場合に関し、最高裁平成12年3月10日判決が、「離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、純婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を承認し得るとしても、死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである。

 また、死亡した内縁配偶者の扶養義務が遺産の負担となってその相続人に承継されると解する余地はない」として、民法768条の類推適用を否定しています。

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転院による移送費と健康保険

2020-05-25

 入院先の病院から別の病院に移る場合、その要件をみたせば健康保険から移送費が支給されます。

 被保険者が療養の給付を受けるため、病院又は診療所に移送されたときは、保険者が必要であると認める場合に移送費が支給され(健康保険法97条、国民健康保険法54条の2)、保険者が必要と認める場合とは、

①移送により法に基づく適切な療養を受けたこと

②移送の原因である疾病又は負傷により移動をすることが著しく困難であったこと

③緊急その他やむを得なかったこと

 のいずれにも被保険者が該当する場合(健康保険法施行規則81条、国民健康保険法施行規則27条の10)とされています。

 そして、この移送費の額は、最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の費用により算定した金額となりますが、実際に移送に要した費用の金額を超えることはないとされています(健康保険法施行規則80条、国民健康保険法施行規則27条の9)。

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不法行為に基づく損害賠償請求と相殺の禁止

2020-03-09

 債権を相互に有する者の間では、相殺による処理が考えられます。ところが、不法行為に基づく損害賠償請求権については、被害者に現実の賠償を受けさせるため、「債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない」とされています(民法509条)。
 ただ、その被害者の救済という制度の趣旨から、被害者が損害賠償請求権を自動債権として加害者に対し負担している債務と相殺することは可能(最高裁昭和42年11月30日判決)とされ、また、契約により相殺することも可能(大審院大正元年12月16日判決)とされています。
 なお、双方の損害賠償請求権が交通事故のような同一事実によって発生した場合については、相殺による処理を認める説が有力ですが、最高裁昭和49年6月28日判決は、「同一交通事故によって生じた物的損害に基づく損害賠償債権相互間においても、民法509条の規定により相殺が許されない」と判示しています。



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責任無能力者が第三者に加えた損害についての監督者の責任

2020-02-03

 民法714条は、「監督する法定の義務を負う者」「監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者」が、責任無能力者による第三者に対する損害について賠償をすることを定めています。

 そして、この責任の成立には「責任無能力者がその責任を負わない場合」であることが必要とされますが、最高裁昭和49年3月22日判決が「未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する」としています。



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過失運転致死傷罪の新設・移動

2019-10-15

 2007年に自動車運転過失致死傷罪(刑法211条2項)が新設されましたが、この規定は2013年に自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷行為処罰法)5条に移りました。

 この規定をみると、法定刑の上限が業務上過失致死傷罪の5年(刑法211条1項)より重い7年となっています。また、傷害が軽い場合は情状によりその刑を免除することができるとされています。

 なお、この規定ができたことによって他の過失犯との適用関係が問題となりますが、東京高裁平成25年6月11日判決は、自動車の運転者が降車のため運転席のドアを開けて事故になった事案について、運転過失ではなく業務上過失としています。



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危険運転致傷罪の行為態様(2019年8月19日分)

2019-10-07

 2013年の法改正により、刑法208条の2の危険運転致致死傷罪や同法211条2項の自動車運転過失致死傷罪などが「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷行為処罰法)に移り、また、準危険運転致死傷罪が新設(同法3条)されました。

 危険運転致死傷罪の行為態様は、アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で運転し人を死傷させた場合の

 ①酩酊運転致死傷(同法2条1号)、進行を制御することが困難な高速度で運転し人を死傷させた場合の

 ②高速度運転致死傷(同法2条2号)、進行を制御する技能を有しないで運転し人を死傷させた場合の

 ③未熟運転致死傷(同法2条3号)、人または車の通行を妨害する目的で著しく接近しかつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転し人を死傷させた場合の

 ④妨害運転致死傷(同法2条4項)、赤色信号等をことさらに無視しかつ重大な危険を生じさせる速度で運転し人を死傷させた場合の

 ⑤信号無視運転致死傷(同法2条5号)、通行禁止道路を進行したりしかつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転し人を死傷させた場合の

 ⑥通行禁止道路運転致死傷(同法2条6号)です。そして、これらにおいて死傷の結果についての故意は不要とされています。



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刑事訴訟法「人を死亡させた罪」の時効期間の延長と時効の廃止

2019-09-30

 一定の期間が経過することによって公訴を提起できなくなる公訴時効という制度が存在しますが、2010年にこの制度の改正が行われました。

 すなわち、刑事訴訟法は、「人を死亡させた罪であって禁固以上の刑に当たるものについて」時効期間を30年等に延長しました。また、これについて「死刑に当たるものを除く」として、殺人、強盗殺人等について時効を廃止しました(同法第250条第1項)。

 なお、この改正法は、同法施行の際に公訴時効が完成していないものについては適用されますが施行の際に公訴時効が完成しているものには適用されません(改正法附則第3条第2項)。



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協議・合意手続(2019年8月5日分)

2019-09-24

 2016年における法改正により一定の財政経済犯罪と薬物銃器犯罪を対象(刑訴法350条の2第2項)として協議・合意手続が導入されました。

1 合意手続 合意の内容となる被疑者・被告人の行為は、他人の刑事事件について、取調べ・証人尋問の際に真実の供述をすること、証拠の提出その他必要な協力をすること、検察官の処分は、被疑者・被告人の事件ついて公訴を提起しないこと・取り消すこと、特定の訴因・罰条により公訴を提起・維持すること、特定の訴因・罰条の追加・撤回・変更を請求すること、論告で特定の刑を科すべき旨の意見を陳述することとされています。

2 協議手続 検察官は、協議において、被疑者・被告人に対し、他人の刑事事件について供述を求めることができる(聴取手続)とされています。

3 合意が成立した場合には合意内容書面が作成されます。そして、合意をした被疑者の事件について公訴を提起したとき、検察官は、公判において遅滞なく合意内容書面の取調べを請求しなければならない、また、合意に基づく被疑者・被告人の供述が証拠として用いられる他人の刑事事件の公判においても、合意内容書面の取り調べを請求しなければならないとされています。

 なお、合意の当事者が合意に違反した場合、合意の相手方は合意から離脱することができる、検察官が合意に基づいた求刑をしたものの裁判所がこれより重い刑を言い渡した場合等、被疑者・被告人の供述内容が真実でないことが明らかになった場合等に検察官は合意から離脱することができるとされています。



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医療過誤を判断する基準としての医療水準

2019-06-10

 医療過誤においては医療機関に課される注意義務の程度が問題となるところ、この程度を判断する基準として医療水準という概念が存在します。

 この医療水準に関する裁判例を見ると、最高裁平成7年6月9日判決は、「新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情が存しない限り、右知見は右医療機関にとっての医療水準である」と判示しています。

 なお、この医療水準から要求される注意義務を軽減する特約の効力に関する裁判例として、東京高裁昭和42年7月11日判決は、手術の結果について異議を申し立てないとする誓約書についてその効力を否定しています。



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新しい民法(7)債権の消滅時効における時効期間と起算点

2018-06-25

 現行民法では、債権の消滅時効における時効期間と起算点について、「権利を行使することができる時から10年」としています(民法166条1項、167条1項)が、改正法では、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」か、「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」に時効によって消滅する(改正民法166条1項)としています。

 また、現行民法は、170条から174条で短期消滅時効について規定していますが、改正法は、これらの規定を削除しています。

 さらに、改正法は、定期金債権について、行使することができることを知ったときから10年間行使しないときか、これらの各債権を行使することができるときから20年間行使しないときは、時効によって消滅する(改正民法168条1項)とし、生命、身体の侵害による損害賠償請求権について、5年間と20年間のいずれかによって時効消滅する(改正民法167条、724条の2)としています。

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