5月, 2021年

証拠の申出とその撤回

2021-05-31

 裁判所に対し、証拠方法の取調べを要求する当事者の申立てを証拠の申出と言います。そして、この証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない(民事訴訟法180条1項)とされています。

 この証拠の申出に関する裁判例を見ると、最高裁昭和32年6月25日判決が、証人尋問の終了後は、その申請を撤回することができないとしています。また、最高裁昭和58年5月26日判決は、いったん裁判所の心証形成の資料に供された証拠について、その申出を撤回することは許されず、裁判所は申出人に有利か否かにかかわらず当事者双方に共通する証拠としてその価値を判断しなければならないとしています。

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調査の嘱託

2021-05-24

 民事裁判において、証拠の取調に関し多くの手続きがありますが、そのなかに調査の嘱託と言う制度が存在し、裁判所は、申立てまたは職権で、必要な調査を内外の官庁公署、学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる(民事訴訟法186条)とされています。

 この調査の嘱託に関する裁判例を見ると、最高裁昭和45年3月26日判決は、調査の嘱託によって得られた結果を証拠とするには、裁判所がそれを口頭弁論で提示して当事者に意見陳述の機会を与えれば足り、当事者の援用を要しないとしています。また、大阪高裁平成19年1月30日判決は、調査嘱託として口座開設者の氏名住所等の個人情報の回答を求められた場合には、本人の同意の有無にかかわらず当然に回答する義務を負うが、これは裁判所に対する公的義務であって個々の依頼者が回答を求める権利を有しているのではないから、銀行が右情報につき回答を拒否しても不法行為の要件には該当しないとしています。

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時機に遅れた攻撃防御方法の却下

2021-05-17

 民事訴訟法156条は、攻撃又は防御の方法は「訴訟の進行状況に応じ適切な時期」に提出しなければならない(適時提出主義)とし、同法157条は、当事者が「故意又は重大な過失」によって「時機に遅れて提出した攻撃又は防御の方法」について、これを審理したのでは「訴訟の完結を遅延させる」場合に申立または職権で却下しうるとしています。

 この「故意又は重過失」について、大審院昭和6年11月4日判決は、第一審の口頭弁論期日に出頭しなかったために主張しなかった抗弁を控訴審で提出したのに対し、その不出頭に対する帰責事由の有無を判断せずに右抗弁を却下した原判決は違法としています。また、「訴訟の完結を遅延させる」場合について、

 東京高裁平成元年3月27日判決は、自白後弁論終結までの間にこれを撤回する機会が十分ありながら格別の措置をとることなく弁論の終結を迎え、その後弁論再開の申請と共にした自白撤回の申出は訴訟の完結を著しく遅延させる時機に遅れたものとしています。なお、最高裁昭和30年4月27日判決は、申請された検証がたとえ一定の要証事実に対する唯一の証拠方法であったとしても、本条に該当するときはこれを却下することができるとしています。

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親権者とその子との利益相反行為

2021-05-10

 成年に達しない子は、父母の親権に服する(民法818条1項)とされていますが、親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為について、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない(同法826条1項)とされています。

 この利益相反行為について、大審院大正10年8月10日判決は、単に親権者と未成年の子とが当事者となりその間になす法律行為のみに限らず、親権者のために利益にして未成年者のために不利益な法律行為を包括指称するとしています。

 そして、この利益相反行為への該当性に関し、最高裁昭和37年10月2日判決は、親権者が子の名において金員を借り受け子の不動産に抵当権を設定することは、仮に借受金を親権者自身の用途に充当する意図であっても利益相反行為とはいえないが、親権者自身が金員を借り受けるに当たり子の不動産に抵当権を設定することは、仮に借受金を子の養育費に充当する意図であったとしても利益相反行為に当たるとし、最高裁昭和42年4月18日判決は、親権者が子を代理してした行為自体を外形的・客観的に考察して判定すべきであって、親権者の動機・意図をもって判定すべきでないとしています。

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離縁原因としての悪意の遺棄・3年以上の生死不明

2021-05-06

 離婚について民法770条が悪意の遺棄・3年以上の生死不明を離婚事由としている(同条2号、3号)ところ、離縁についても同様の規定が置かれ、同法814条1号が、「他の一方から悪意で遺棄されたとき」、その2号が、「他の一方の生死が3年以上明らかでないとき」を離縁事由としています。

 この離婚事由に関する裁判例を見ると、悪意の遺棄に関し、遺棄とは、現代における合理的養親子関係として養成される程度の精神的共同生活を破棄すること(大審院昭和13年3月24日判決)とされています。

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