7月, 2022年

労働者の解雇期間中の賃金と中間利益の控除

2022-07-25

   権利の濫用になる解雇は無効とされる(労働契約法16条)ところ,解雇されたことにより就労しなかった期間の賃金の扱いが問題となります。

   この解雇期間中の賃金について,最高裁昭和59年3月29日判決は,ユニオン・ショップ協定に基づく解雇が無効で,解雇期間中の労働者の労務提供の不履行が使用者の責に帰すべき事由による場合,労働者は反対給付としての賃金請求権を失わないとしています。

   また,最高裁昭和62年4月2日判決は,使用者が労働者に対して負う解雇期間中の賃金支払債務のうち平均賃金額の六割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許され,右利益の額が平均賃金額の四割を超える場合には更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金の全額を対象として利益額を控除することが許される。そして,賃金から控除し得る中間利益は,その利益の発生した期間が右賃金の支給の対象となる期間と時期的に対応するものであることを要し,ある期間を対象として支給される賃金からそれとは時期的に異なる期間内に得た利益を控除することは許されないとしています。


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誹謗中傷対策としての侮辱罪の法定刑の引き上げ

2022-07-18

   令和4年6月13日,侮辱罪の法定刑を「1年以下の懲役若しくは禁固若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」(刑法230条)とする「刑法等の一部を改正する法律」が成立しました。

   法務省のホームページは,この法定刑の引上げの必要性について,「インターネット上の誹謗中傷が特に社会問題となっていることを契機として,誹謗中傷全般に対する非難が高まるとともに,こうした誹謗中傷を抑止すべきとの国民の意識が高まっている 近時の誹謗中傷の実態への対処として,侮辱罪の法定刑を引き上げ,厳正に対処すべきとの法的評価を示し,これを抑止するとともに,悪質な侮辱行為に対して厳正に対処することが必要」としています。

   この規定は,同年7月7日から施行されます。


参照(外部リンク)
内閣府大臣官房政府広報室「政府広報オンライン」サイト 令和4年(2022年)4月8日 SNSの誹謗中傷  あなたが奪うもの、失うもの#NoHeartNoSNS(ハートがなけりゃSNSじゃない!)
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上での誹謗中傷等について紹介しています。


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労働条件を変更するための変更解約告知

2022-07-11

   使用者からの労働条件の変更の申込を労働者が承諾しないことを理由として行われる解雇を変更解約告知と言います。

   この変更解約告知に関する裁判例を見ると、東京地裁平成7年4月13日決定は、雇用契約により特定された職種等の労働条件を変更するために新契約締結の申込みを伴う雇用契約の解約を行うことは、当該労働条件の変更が会社の業務運営にとって必要不可欠であり、その必要性が労働条件の変更によって労働者が受ける不利益を上回っていて労働条件の変更を伴う新契約締結の申込みがそれに応じない場合の解雇を正当化するに足るやむを得ないものと認められ、かつ、解雇を回避するための努力が十分に尽くされているときには有効であるとしています。また、大阪地裁平成10年8月31日判決は、変更解約告知といわれるものは、その実質は労働条件変更のために行われる解雇であるが、労働条件変更については就業規則の変更によってされるべきものであり、ドイツ法と異なって明文のない我が国においては変更解約告知という独立の類型を設けることは相当でない。本件解雇の意思表示はその実質は整理解雇にほかならないのであるから整理解雇と同様の厳格な要件が必要であるとしています。


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人員整理のための整理解雇

2022-07-04

   業績の悪化や経営不振などといった使用者側の事情によって人員整理のためにおこなわれる解雇を整理解雇と言います。

   この整理解雇が問題となった裁判例を見ると,東京高裁昭和54年10月29日判決が,整理解雇は,事業部門の閉鎖が企業の合理的運営上やむを得ない必要に基づいており,右事業部門に勤務する従業員を他の事業部門の同一あるいは類似の職種に配転する余地がなく,解雇対象者の選定が客観的・合理的基準に基づくものであることの三要件を充足する場合に有効となる。また,労働協約や就業規則における人事協議条項に基づく協議を経ない場合,その他労働者に対する十分な説明を欠くなど手続上の信義則に違反した場合には,整理解雇は権利の濫用として無効となるとしています。また,東京地裁平成12年1月21日決定が,いわゆる整理解雇の四要件は,整理解雇の範疇に属すると考えられる解雇について解雇権の濫用に当たるかどうかを判断する際の考慮要素を類型化したものであって各々の要件が存在しなければ法律効果が発生しないという意味での法律要件ではなく,解雇権濫用の判断は,本来事案ごとの個別具体的な事情を総合考慮して行うほかないものであるとしています。


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