1月, 2023年

詐害行為取消の要件についての民法の改正

2023-01-30

   詐害行為取消の要件について民法は改正を行っています。

   詐害行為取消の要件は,ア「債務者が債権者を害することを知って」「行為」をしたこと,イ「取消しを裁判所に請求」したこと,ウ受益者が「その行為の時において債権者を害することを知らなかった」場合でないこと(以上につき424条1項),エ「財産権を目的としない行為」でないこと(同条2項),オ債権者の債権が詐害行為「の前の原因に基づいて生じたものである場合」であること(同条3項),カ債権者の債権が「強制執行により実現することのできないもの」でないこと(同条4項)であるところ,改正民法は,さらに以下のような規定をおいています。

   1 相当の対価を得てした財産の処分行為(相当価格処分行為)について

   民法424条の2は,相当価格処分行為について,①「その行為が,不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により,債務者において隠匿,無償の供与その他の債権者を害することとなる処分」「をするおそれを現に生じさせるものであること」,②「債務者が,その行為の当時,対価として取得した金銭その他の財産について,隠匿等の処分をする意思を有していたこと」,③「受益者が,その行為の当時,債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと」のすべてに該当していた場合に限り,詐害行為として取消請求できるとしています。

   2 特定の債権者に対する担保の供与等について

   民法424条の3の1項は,既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について,①「その行為が,債務者が支払不能」「の時に行われたものであること」,②「その行為が,債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること」のいずれにも該当していた場合に限り,詐害行為として取消請求できるとしています。

また,同条2項は,既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為が「債務者の義務に属せず,又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合」について,①「その行為が,債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること」,②「その行為が,債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものである」のいずれにも該当していた場合には詐害行為として取消請求できるとしています。

   3 過大な代物弁済等について

   民法424条の4は,受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて,民法424条に規定する要件に該当するときは,「その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分について」詐害行為として取消請求できるとしています。


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詐害行為取消権の行使の方法等についての民法の改正

2023-01-23

   詐害行為取消権の行使の方法や被告について民法は改正を行っています。

   ① 詐害行為取消権は,「債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求する」権利(424条1項)であるところ,その被告は「受益者」又は「転得者」とされています(424条の7の1項)。

   ② そして,受益者を被告とする場合は,「債務者がした行為の取消しとともに,その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求する」「受益者がその財産を返還することが困難であるときは・・・その価額の償還を請求する」ちし,転得者を被告とする場合は,「債務者がした行為の取消とともに,転得者が転得した財産の返還を請求する」「転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは・・・その価額の償還を請求する」とされています(424条の6の1項)。

   ③ また,債権者が詐害行為取消訴訟を提起したときは,「遅滞なく,債務者に対し,訴訟告知をしなければならない」とされています(424条の7の2項)。


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債権者代位権についての民法の改正

2023-01-16

   債務者に対する債権を債権者が実現する手段として第三者に対し行使する権限として債権者代位権がありますが,改正民法は,これについて以下のような改正を行っています。

   ① 被保全債権の期限到来前は,保存行為を除き代位権を行使できないことにし,裁判上の代位を廃止(423条2項)しました。また,強制執行により実現することができないもの(同条1項),差押えを禁止された権利(同条1項但書)につき,被代位権利として行使できないとしました。

   ② 「被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは,相手方に対し,その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる」(423条の3)とする一方で,「被代位権利の目的が可分であるときは,自己の債権の額の限度においてのみ,被代位権利を行使することができる(423条の2),債務者は,債権者が代位権を行使した場合でも「被代位権利について,自ら取立てその他の処分をすること」ができ,「相手方も,被代位権利について,債務者に対して履行をすることを妨げられない」(423条の5)として,債権回収機能を限定的に認めました。

   ③ 債権者が「被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは,遅滞なく,債務者に対し,訴訟告知をしなければならない(423条の6)としました。

   ④ 「登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は,その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは,その権利を行使しないときは,その権利を行使することができる。この場合においては,前3条の規定を準用する」(423条の7)として登記・登録請求権を保全するための債権者代位権の規定を設けました。


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労働時間・休憩・休日に関する規制の適用除外

2023-01-09

   労働基準法は,労働時間,休憩,休日に関して規制を及ぼしているところ(同法32条1項,2項,34条1項,35条1項2項等),①農・水産業に従事する者,②管理監督者,機密事務取扱者,③監視・断続的労働者についてはこの規制が及ばないとされています(同法41条)。

   もっとも,これらの労働者についても深夜労働や有給休暇の規制は及ぶとされ,最高裁平成21年12月18日判決は,「労基法における労働時間に関する規定の多くは,その長さに関する規制について定めており,同法37条1項は,使用者が労働時間を延長した場合においては,延長された時間の労働について所定の割増賃金を支払わなければならないことなどを規定している。他方,同条3項は,使用者が原則として午後10時から午前5時までの間において労働させた場合においては,その時間の労働について所定の割増賃金を支払わなければならない旨を規定するが,同項は,労働が1日のうちのどのような時間帯に行われるかに着目して深夜労働に関し一定の規制をする点で,労働時間に関する労基法中の他の規定とはその趣旨目的を異にすると解される。 また,労基法41条は,同法第4章,第6章及び第6章の2で定める労働時間,休憩及び休日に関する規定は,同条各号の一に該当する労働者については適用しないとし,これに該当する労働者として,同条2号は管理監督者等を,同条1号は同法別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者を定めている。一方,同法第6章中の規定であって年少者に係る深夜業の規制について定める61条をみると,同条4項は,上記各事業については同条1項ないし3項の深夜 業の規制に関する規定を適用しない旨別途規定している。こうした定めは,同法41条にいう「労働時間,休憩及び休日に関する規定」には,深夜業の規制に関する規定は含まれていないことを前提とするものと解される。 以上によれば,労基法41条2号の規定によって同法37条3項の適用が除外されることはなく,管理監督者に該当する労働者は同項に基づく深夜割増賃金を請求することができる」としています。


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債権の消滅時効についての民法・商法の改正

2023-01-02

   改正前の民法において,債権の消滅時効期間は原則として10年とされ,また,5年,3年,1年を時効期間とする短期消滅時効制度がありました。また,商法は,商事債権の消滅時効期間を5年としていました。さらに,時効の中断という制度がありました。ところが,これらの制度は,大きく改正されました。

① 改正民法166条1項1号は,「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」と規定して,債権の消滅時効期間を5年間としました(なお,債権者が権利行使をできる時をしらない場合については,同条同行2項で「権利を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき」と規定して従前と同様に10年間としています)。また,商法における商事債権の消滅時効についての規定が削除されました。

② 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については,改正民法167条が「二十年間」とすると規定して,消滅時効期間を20年間としました。

③ 短期消滅時効についての規定は削除され,債権の消滅時効期間は5年間に統一されました。

④ 時効の中断が時効の完成猶予及び更新に変わりました(改正民法147条)。そして,同条は,その事由について「裁判上の請求」「支払督促」等と規定しました。

⑤ 改正民法151条が,「権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは」「時効は完成しない」と規定して協議を行う旨の合意による時効の完成猶予の制度を導入しました。

⑥ 改正民法161条が,「その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は,時効は,完成しない」と規定して天災等の場合における時効の完成猶予期間を3か月としました。


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令和5年 新年のごあいさつ

2023-01-01

新年明けましておめでとうございます。

本年が皆様にとって良い年でありますようお祈り申し上げます。

新型コロナウイルス感染症は,人と人とが繋がる機会を失わせて事業や生活の基盤に対し極めて未だに深刻な影響を与えています。このような中,ひらま総合法律事務所では,感染防止策を引き続き講じながら業務を進めてまいりますので,ご協力とご理解をお願い致します。

本年も,どうぞよろしくお願い致します。


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