3月, 2025年
遺産分割の当事者と遺産確認の訴え
遺産分割は,被相続人の共同相続人間で行われることになりますが,遺産分割の前にその相続分を全部譲渡した共同相続人がその前提となる財産の遺産帰属性を確認することができるのかという問題があります。
この問題に関し,最高裁平成26年2月14日判決は,「遺産確認の訴えは,その確定判決により特定の財産が遺産分割の対象である財産であるか否かを既判力をもって確定し,これに続く遺産分割審判の手続等において,当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないとすることによって共同相続人間の紛争の解決に資することを目的とする訴えであり,そのため,共同相続人全員が当事者として関与し,その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共 同訴訟と解されているものである」「しかし,共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する割合的な持分を全て失うことになり,遺産分割審判の 手続等において遺産に属する財産につきその分割を求めることはできないのであるから,その者との間で遺産分割の前提問題である当該財産の遺産帰属性を確定すべき必要性はないというべきである。そうすると,共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しないと解するのが相当である」と判示しています。
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相続財産から生ずる果実と遺産分割
相続財産の中に不動産がある場合,遺産分割が行われるまでにその賃料債権という果実が生じることがありますが,遺産分割によってその帰属が影響を受けるのかが問題となります。
この問題に関し,最高裁平成17年9月8日判決は,「遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けないものとい うべきである」と判示しています。
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特別受益の持戻しと生命保険金請求権
共同相続人の中に特別受益を得た者がいるときは,その持戻し(民法903条,904条)を行うことになりますが,その特別受益財産として持戻しの対象となるのかが問題となるものとして生命保険金請求権があります。
この生命保険金請求権の持戻しが問題となった最高裁平成16年10月29日判決は,「養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である。もっとも,上記死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は,被相続人が生前保険者に支払ったものであり,保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相 当である。上記特段の事情の有無については,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率のほか,同居の有無,被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活 実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである」と判示しています。
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生存配偶者の居住権の保障
2018年における相続法の改正により,生存配偶者に配偶者短期居住権と配偶者居住権という新しい居住権が規定されました。
配偶者居住権について,民法1028条1項は,「被相続人の配偶者」「は,被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において,次の各号のいずれかに該当するときは,その居住していた建物」「の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する」とし,同法1030条は,その存続期間について,「配偶者居住権の存続期間は,配偶者の終身の間とする。ただし,遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき,又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは,その定めるところによる」と規定しています。
また,同法1037条1項は,配偶者短期居住権について,「配偶者は,被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には,次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間,その居住していた建物」「の所有権を相続又は遺贈により取得した者」「に対し,居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては,その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有するとし,その存続期間について,「一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日,二 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日」と規定しています。
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特別受益における具体的相続分
民法903条,904条は,共同相続人のなかに,被相続人から遺贈を受け,または婚姻,養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは,そのような特別受益の持戻しを行うとして相続開始の時に被相続人が有した財産の価格に特別受益財産の価格を加えたものを相続財産とみなし,このみなし相続財産について法定・指定相続分の割合によって算定した相続分から当該遺贈または贈与の価格を控除した残額をその相続人の相続分(具体的相続分)としているところ,この具体的相続分の法的性質という問題があります。
この法的性質との関係で,具体的相続分の価格または割合の確認の利益が問題となった最高裁平成12年2月24日判決は,「具体的相続分は,このように遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって,それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず,遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり,右のような事件を離れて,これのみを別個独立に判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない」として「共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは,確認の利益を欠くものとして不適法である」と判示しています。
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