4月, 2025年
遺産分割協議の債務不履行による法定解除
遺産分割においては共同相続人のひとりが相続財産を取得する代わりに親の世話をすることを他の共同相続人と約束することがありますが,この約束が守られなかった場合に債務不履行を理由として遺産分割協議を解除できるのかという問題があります。
この問題に関し,最高裁平成元年2月9日判決は,「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に,相続人の一人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであつても,他の相続人は民法五四一条によつて右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。 けだし,遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し,その後は右協議において右債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関 係が残るだけと解すべきであり,しかも,このように解さなければ民法九〇九条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ,法的安定性が著しく害されることになるからである」と判示してこの債務不履行による解除を否定しています。
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ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)
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遺留分侵害額請求権の代位行使の可否
遺留分を侵害された場合,遺留分権利者とその承継人が遺留分侵害額請求権者とされるところ,この権利者や被相続人の債権者が自己の債権を保全するために遺留分侵害額請求権を代位行使することの可否という問題があります。
この問題に関し,法改正前の遺留分減殺請求権について最高裁平成13年11月22日判決が「遺留分制度は,被相続人の財産処分の自由と身分関係を背景とした相続人の諸利益との調整を図るものである。民法は,被相続人の財産処分の自由を尊重して,遺留分を侵害する遺言について,いったんその意思どおりの効果を生じさせるものとした上,これを覆して侵害された遺留分を回復するかどうかを,専ら遺留分権利者の自律的決定にゆだねたものということができる」「そうすると,遺留分減殺請求権は,前記特段の事情がある場合を除き,行使上の一身専属性を有すると解するのが相当であり,民法423条1項ただし書にいう「債務者ノ一身ニ専属スル権利」に当たるというべきであって,遺留分権利者以外の者が,遺留分権利者の減殺請求権行使の意思決定に介入することは許されないと解するのが相当である。民法1031条が,遺留分権利者の承継人にも遺留分減殺請求権を認めていることは,この権利がいわゆる帰属上の一身専属性を有しないことを示すものにすぎず,上記のように解する妨げとはならない。なお,債務者たる相続人が将来遺産を相続するか否かは,相続開始時の遺産の有無や相続の放棄によって左右される極めて不確実な事柄であり,相続人の債権者は,これを共同担保として期待すべきではないから,このように解しても債権者を不当に害するものとはいえない」と判示して代位行使を否定しています。
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遺産共有持分と他の共有物が併存する場合の分割手続き
遺産分割前の遺産(相続財産)は共同相続人の共有(遺産共有)となるところ,遺産共有の状態にある共有持分とその他の共有持分が併存する場合にその分割の手続きが問題となります。
この問題に関し,最高裁平成25年11月29日判決は,「共有物について,遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分(以下「遺産共有持分」といい,これを有する者を「遺産共有持分権者」という。)と他の共有持分とが併存する場合,共有者(遺産共有持分権者を含む。)が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり,共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与された財産は遺産分割の対象となり,この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべきものと解するのが相当である」「民法258条に基づく共有物分割訴訟は,その本質において非訟事件であって,法は,裁判所の適切な裁量権の行使により,共有者間の公平を保ちつつ,当該共有物の性質や共有状態の実情に適合した妥当な分割が実現されることを期したものと考えられることに照らすと,裁判所は,遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ,その者に遺産共有持分の価格を賠償させてその賠償金を遺産分割の対象とする価格賠償の方法による分割の判決をする場合には,その判決において,各遺産共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で,遺産共有持分を取得する者に対し,各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができるものと解するのが相当である。」と判示しています。
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