8月, 2025年
自筆証書遺言における押印
遺言者が遺言の全文,日付,氏名を自書し,これに押印する方式の遺言を自筆証書遺言と言うところ,この押印と認められるかどうかが問題となることがあります。
花押を書いた遺言が問題となった最高裁平成28年6月3日判決は,「花押を書くことは,印章による押印とは異なるから,民法968条1項の押印の 要件を満たすものであると直ちにいうことはできない。そして,民法968条1項が,自筆証書遺言の方式として,遺言の全文,日付及び氏名の自書のほかに,押印をも要するとした趣旨は,遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに,重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ」「我が国において,印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。 以上によれば,花押を書くことは,印章による押印と同視することはできず,民法968条1項の押印の要件を満たさないというべきである」と判示して花押では要件を充たさないとしています。
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節税のための養子縁組
養子縁組が成立するには縁組意思の合致が必要であり,縁組意思を欠く場合は無効(民法802条1号)とされるところ,節税のための養子縁組は縁組意思を欠き無効となるのではないかが問題となったことがあります。
相続税を減らす目的での養子縁組が問題となった最高裁平成29年1月31日判決は,「養子縁組は,嫡出親子関係を創設するものであり,養子は養親の相続人となるところ,養子縁組をすることによる相続税の節税効果は,相続人の数が増加することに伴い,遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは,このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず,相続税の節税の動機と縁組をする意思とは,併存し得るものである。したがって,専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない」と判示してこのような養子縁組を有効としています。
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凍結精子を用いて生まれた子による認知請求
生殖補助医療として体外受精が行われることがあるところ,この方法によって生まれた子の親子関係が問題となることがあります。
死亡した男性の精子を用いて行われた人工生殖により懐胎出産された子と当該男性との間における法律上の親子関係が問題となった最高裁平成18年9月4日判決は,「民法の実親子に関する法制は,血縁上の親子関係を基礎に置いて,嫡出子については出生により当然に,非嫡出子については認知を要件として,その親との間に法律上の親子関係を形成するものとし,この関係にある親子について民法に定める親子,親族等の法律関係を認めるものである。ところで,現在では,生殖補助医療技術を用いた人工生殖は,自然生殖の過程の一部を代替するものにとどまらず,およそ自然生殖では不可能な懐胎も可能とする までになっており,死後懐胎子はこのような人工生殖により出生した子に当たるところ,上記法制は,少なくとも死後懐胎子と死亡した父との間の親子関係を想定していないことは,明らかである。すなわち,死後懐胎子については,その父は懐胎前に死亡しているため,親権に関しては,父が死後懐胎子の親権者になり得る余地はなく,扶養等に関しては,死後懐胎子が父から監護,養育,扶養を受けることはあり得ず,相続に関しては,死後懐胎子は父の相続人になり得ないものである。また,代襲相続は,代襲相続人において被代襲者が相続すべきであったその者の被相続人の遺産の相続にあずかる制度であることに照らすと,代襲原因が死亡の場合には,代襲相続人が被代襲者を相続し得る立場にある者でなければならないと解されるから,被代襲者である父を相続し得る立場にない死後懐胎子は,父との関係で代襲相続人にもなり得ないというべきである。このように,死後懐胎子と死亡した父との関係は,上記法制が定める法律上の親子関係における基本的な法律関係が生ずる余地のないものである。そうすると,その両者の間の法律上の親子関係の形成に関する問題は,本来的には,死亡した者の保存精子を用いる人工生殖に関する生命 倫理,生まれてくる子の福祉,親子関係や親族関係を形成されることになる関係者の意識,更にはこれらに関する社会一般の考え方等多角的な観点からの検討を行った上,親子関係を認めるか否か,認めるとした場合の要件や効果を定める立法によって解決されるべき問題であるといわなければならず,そのような立法がない以上,死後懐胎子と死亡した父との間の法律上の親子関係の形成は認められないというべきである」と判示して死後懐胎子と死亡した男性との法律上の親子関係を否定しています。
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