1月, 2026年
所有権留保と譲渡担保権の衝突
売買における売主が,代金の支払いを受けるまで目的物の所有権を留保するのが所有権留保であるところ,第三者との関係(対外的効力)が問題となります。
所有権が留保された動産について第三者に対して譲渡担保権が設定された場合の所有権留保と譲渡担保権の関係が問題となった最高裁平成30年12月7日判決は,「本件売買契約は,金属スクラップ等を反復継続して売却するものであり,本件条項は,その売買代金の支払を確保するために,目的物の所有権がその完済をもって被上告人から美崎産業に移転し,その完済までは被上告人に留保される旨を定めたものである。 本件売買契約では,毎月21日から翌月20日までを一つの期間として,期間ごとに納品された金属スクラップ等の売買代金の額が算定され,一つの期間に納品された金属スクラップ等の所有権は,上記の方法で額が算定された当該期間の売買代金の完済まで被上告人に留保されることが定められ,これと異なる期間の売買代金の支払を確保するために被上告人に留保されるものではない。上記のような定めは,売買代金の額が期間ごとに算定される継続的な動産の売買契約において,目的物の引渡しからその完済までの間,その支払を確保する手段を売主に与えるものであって,その限度で目的物の所有権を留保するものである。 また,被上告人は,美崎産業に対して金属スクラップ等の転売を包括的に承諾し いたが,これは,被上告人が美崎産業に本件売買契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であると解され,このことをもって上記金属スクラップ等の所有権が美崎産業に移転したとみることはできない。以上によれば,本件動産の所有権は,本件条項の定めどおり,その売買代金が完済されるまで被上告人から美崎産業に移転しないものと解するのが相当である。したがって,本件動産につき,上告人は,被上告人に対して本件譲渡担保権を主張することができない」として所有権留保が優先すると判示しています。
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担保不動産の収益執行における管理人の権限
担保不動産の収益執行においては開始決定と同時管理人が選任されるところ,この管理人の権限が問題となることがあります。
管理人の権限に関して賃借人の相殺が問題となった最高裁平成21年7月3日判決は,「担保不動産収益執行は,担保不動産から生ずる賃料等の収益を被担保債権の優先弁済に充てることを目的として設けられた不動産担保権の実行手続の一つであり,執行裁判所が,担保不動産収益執行の開始決定により担保不動産を差し押さえて所有者から管理収益権を奪い,これを執行裁判所の選任した管理人にゆだねることをその内容としている(民事執行法188条,93条1項,95条1項)。管理人が担保不動産の管理収益権を取得するため,担保不動産の収益に係る給付の目的物は,所有者ではなく管理人が受領権限を有することになり,本件のように担保不動産の所有者が賃貸借契約を締結していた場合は,賃借人は,所有者ではなく管理人に対して賃料を支払う義務を負うことになるが(同法188条,93条1項),このような規律がされたのは,担保不動産から生ずる収益を確実に被担保債権の優先弁済に充てるためであり,管理人に担保不動産の処分権限まで与えるものではない(同法188条,95条2項)。 このような担保不動産収益執行の趣旨及び管理人の権限にかんがみると,管理人が取得するのは,賃料債権等の担保不動産の収益に係る給付を求める権利(以下 「賃料債権等」という。)自体ではなく,その権利を行使する権限にとどまり,賃料債権等は,担保不動産収益執行の開始決定が効力を生じた後も,所有者に帰属しているものと解するのが相当であり,このことは,担保不動産収益執行の開始決定が効力を生じた後に弁済期の到来する賃料債権等についても変わるところはない。そうすると,担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後も,担保不動産の所有者は賃料債権等を受働債権とする相殺の意思表示を受領する資格を失うものではないというべきである」「次に,抵当権に基づく担保不動産収益執行の開始決定の効力が生じた後において,担保不動産の賃借人が,抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権を自働債権とし,賃料債権を受働債権とする相殺をもって管理人に対抗 することができるかという点について検討する。被担保債権について不履行があったときは抵当権の効力は担保不動産の収益に及ぶが,そのことは抵当権設定登記によって公示されていると解される。そうすると,賃借人が抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権については,賃料債権と相殺することに対する賃借人の期待が抵当権の効力に優先して保護されるべきであるから」「担保不動産の賃借人は,抵当権に基づく担保不動産収益執行の開始決定の 効力が生じた後においても,抵当権設定登記の前に取得した賃貸人に対する債権を 自働債権とし,賃料債権を受働債権とする相殺をもって管理人に対抗することができるとして賃借人は相殺をもって対抗できると判示しています。
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担保不動産の競売手続における買受人による所有権の取得
担保不動産の競売手続において,買受人は,代金を納付した時に不動産を取得する(民事執行法79条,188条)とされ,同法184条は代金納付による買受人の不動産の取得は担保権の不存在又は消滅により妨げられないとしているところ,この同法184条の適用が問題となることがあります。
この規定の適用について,所有者が競売手続上当事者として扱われたことの要否が問題となった最高裁平成5年12月17日判決は,「担保権に基づく不動産の競売は担保権の実現の手続であるから,その基本となる担保権がもともと存在せず,又は事後的に消滅していた場合には,売却による所有権移転の効果は生ぜず,所有者が目的不動産の所有権を失うことはないとするのが,実体法の見地からみた場合の論理的帰結である。しかし,それでは,不動産競売における買受人の地位が不安定となり,公の競売手続に対する信用を損なう結果ともなるので,民事執行法一八四条は,この難点を克服するため,手続上,所有者が同法一八一条ないし一八三条によって当該不動産競売手練に関与し,自己の権利を主張する機会が保障されているにもかかわらず,その権利行使をしなかった場合には,実体上の担保権の不存在又は消滅によって買受人の不動産の取得が妨げられることはないとして,問題の立法的解決を図ったものにほかならない。したがって, 実体法の見地からは本来認めることのできない当該不動産所有者の所有権の喪失を肯定するには,その者が当該不動産競売手続上当事者として扱われ,同法一八一条ないし一八三条の手続にのっとって自己の権利を確保する機会を与えられていたことが不可欠の前提をなすものといわなければならない。これを要するに,民事執行法一八四条を適用するためには,競売不動産の所有者が不動産競売手続上当事者として扱われたことを要し,所有者がたまたま不動産競売手続が開始されたことを知り,その停止申立て等の措置を講ずることができたというだけでは足りないものと解すべきである」として当事者として扱われたことを必要と判示しています。
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