2月, 2026年

時効取得者と抵当権の設定登記をした者との対抗問題

2026-02-16

 債務者または抵当権設定者でない者が抵当不動産につき取得時効に必要な占有をしたときは,抵当権はこれによって消滅する(民法397条)とされているところ,時効取得者と抵当権者との間で対抗問題が生じることがあります。

 取得時効の完成後にこれに基づく所有権移転登記が行われないでいる間に抵当権設定登記が行われたが,さらにその後時効取得に必要な期間の占有が継続した場合について,最高裁平成24年3月16日判決は,「時効取得者と取得時効の完成後に抵当権の設定を受けてその設定登記をした者との関係が対抗問題となることは,所論のとおりである。しかし,不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者が,その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したときは,上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者は,上記不動産を時効取得し,その結果,上記抵当権は消滅すると解するのが相当である。

 その理由は,以下のとおりである。 ア 取得時効の完成後,所有権移転登記がされないうちに,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了したならば,占有者がその後にいかに 長期間占有を継続しても抵当権の負担のない所有権を取得することができないと解することは,長期間にわたる継続的な占有を占有の態様に応じて保護すべきものとする時効制度の趣旨に鑑みれば,是認し難いというべきである。 イ そして,不動産の取得時効の完成後所有権移転登記を了する前に,第三者に上記不動産が譲渡され,その旨の登記がされた場合において,占有者が,上記登記後に,なお引き続き時効取得に要する期間占有を継続したときは,占有者は,上記第三者に対し,登記なくして時効取得を対抗し得るものと解されるところ」「不動産の取得時効の完成後所有権移転登記を了する前に,第三者が上記不動産につき抵当権の設定を受け,その登記がされた場合には,占有者は,自らが時効取得した不動産につき抵当権による制限を受け,これが実行されると自らの所有権の取得自体を買受人に対抗することができない地位に立たされるのであって,上記登記がされた時から占有者と抵当権者との間に上記のような権利の対立関係が生ずるものと解され,かかる事態は,上記不動産が第三者に譲渡され,その旨の登記がされた場合に比肩するということができる。また,上記判例によれば,取得時効の完成後に所有権を得た第三者は,占有者が引き続き占有を継続した場合に,所有権を失うことがあり,それと比べて,取得時効の完成後に抵当権の設定を受けた第三者が上記の場合に保護されることとなるのは,不均衡である」として取得時効の援用により抵当権は消滅すると判示しています。


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不動産と商事留置権

2026-02-09

 商法521条は,商行為によって占有を取得した債務者の所有する物または有価証券を留置する商事留置権を規定してるところ,民事留置権とは要件や沿革が異なることから,その成否が問題となることがあります。

 この商事留置権の目的物である「物」に不動産が含まれるかが問題となった最高裁平成29年12月14日判決は,「民法は,同法における「物」を有体物である不動産及び動産と定めた上(85条,86条1項,2項),留置権の目的物を「物」と定め (295条1項),不動産をその目的物から除外していない。一方,商法521条は,同条の留置権の目的物を「物又は有価証券」と定め,不動産をその目的物から除外することをうかがわせる文言はない。他に同条が定める「物」を民法における「物」と別異に解すべき根拠は見当たらない。 また,商法521条の趣旨は,商人間における信用取引の維持と安全を図る目的で,双方のために商行為となる行為によって生じた債権を担保するため,商行為によって債権者の占有に属した債務者所有の物等を目的物とする留置権を特に認めたものと解される。不動産を対象とする商人間の取引が広く行われている実情からすると,不動産が同条の留置権の目的物となり得ると解することは,上記の趣旨にか なうものである。 以上によれば,不動産は,商法521条が商人間の留置権の目的物として定める 「物」に当たると解するのが相当である」として不動産が商事留置権の目的物となることを認めています。

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所有権留保における留保所有者の第三者に対する責任

2026-02-02

 所有権留保付で売買が行われた物によって第三者に損害が発生した場合にその第三者に対する責任が問題となることがあります。

 所有権留保付で売買された自動車の留保所有者の責任が問題となった最高裁平成21年3月10日判決は,「動産の購入代金を立替払する者が立替金債務が完済されるまで同債務の担保として当該動産の所有権を留保する場合において,所有権を留保した者(以下,「留保所有権者」といい,留保所有権者の有する所有権を「留保所有権」という。)の有する権原が,期限の利益喪失による残債務全額の弁済期(以下「残債務弁済期」という。)の到来の前後で上記のように異なるときは,留保所有権者は,残債務弁済期が到来するまでは,当該動産が第三者の土地上に存在して第三者の土地所有権の行使を妨害しているとしても,特段の事情がない限り,当該動産の撤去義務や不法行為責任を負うことはないが,残債務弁済期が経過した後は,留保所有権が担保権の性質を有するからといって上記撤去義務や不法行為責任を免れることはないと解するのが相当である。なぜなら,上記のような留保所有権者が有する留保所有権は,原則として,残債務弁済期が到来するまでは,当該動産の交換価値を把握する にとどまるが,残債務弁済期の経過後は,当該動産を占有し,処分することができる権能を有するものと解されるからである。もっとも,残債務弁済期の経過後であっても,留保所有権者は,原則として,当該動産が第三者の土地所有権の行使を妨害している事実を知らなければ不法行為責任を問われることはなく,上記妨害の事実を告げられるなどしてこれを知ったときに不法行為責任を負う」として留保所有者が責任を負う場合について判示しています。


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