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有責配偶者からの離婚請求
当事者の婚姻関係が破綻している場合、裁判によって離婚を請求することが考えられるところ、婚姻関係の破綻について責任のある側(有責配偶者)からの離婚請求が認められるのかという問題があります。
この問題に関する裁判例としては、「踏んだり蹴ったり判決」と呼ばれる最高裁昭和27年2月19日判決が破綻について責任のある者からの離婚請求を認めないという考え方(消極的破綻主義)を採用したとされていますが、この判決が出た後、破綻についての責任が双方にある場合に責任の小さい者からの請求を認めるとした最高裁昭和30年11月24日判決や破綻後の異性との関係は有責行為にならないとした最高裁昭和46年5月21日判決を経て、最高裁昭和62年9月2日判決は、「有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚請求を許容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない」と判示しています。
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ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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遺言書の偽造・変造等による相続欠格
民法891条は、相続人となる資格を失う相続欠格事由につき定めているところ、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿がこの相続欠格事由のひとつとされています(同条5号)。
そこで、この遺言書の偽造等が問題となった裁判例をみると、最高裁昭和56年4月3日判決は、「被相続人の遺言書がその方式を欠くために無効である場合又は有効な遺言書についてされている訂正がその方式を欠くために無効である場合に、相続人がその方式を具備させることにより有効な遺言書としての外形又は有効な訂正としての外形を作出する行為は、同条5号にいう遺言書の偽造又は変造にあたるけれども、相続人が遺言者たる被相続人の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨で右の行為をしたにすぎないときは、右相続人は同号所定の相続欠格者にはあたらない」と判示しています。
また、最高裁平成9年1月28日判決は、「相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法891条5号所定の相続欠格者には当たらない」「遺言書の破棄又は隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、これを遺言に関する著しく不当な干渉行為ということはできず、このような行為をした者に相続人となる資格を失わせるという厳しい制裁を課することは、同条5号の趣旨に沿わないからである」と判示しています。
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みなとタバコルール宣言について
東京都港区の「みなとタバコルール宣言」に、ひらま総合法律事務所は登録を行い、『みなとタバコルール』の趣旨を理解し、賛同し、ルールを守るため、行動することを宣言しました。
みなとタバコルールとは
港区公式ホームページ「たばこ対策」(外部リンク)をご覧ください。
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親権者の子に対する監護教育権と医療行為への同意
親権者は、子供の利益を図るために子の監護及び教育を行う権利を有し、また、義務を負う(民法820条)ところ、この監護教育の権利・義務に基づいて子に対する医療行為について同意する権限が認められると考えられていますが、親権者の宗教上の理由による子に対する手術への同意拒否は親権の濫用に当たるとして児童相談所長が親権喪失宣告を申し立てた事例につき名古屋家裁平成18年7月25日審判は、手術の拒否に合理的理由を認めることはできないとして親権者の職務の執行を停止して職務代行者として選任した弁護士の同意によって手術を行わせています。また、手術をしなければ数ヶ月以内に死亡するが手術により視力が失われるとして親権者が子に対する手術への同意を拒否した事案につき津家裁平成20年1月25日審判も、親権の濫用の可能性が高いとして同様の対応をしています。
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身寄りや資力のない人による成年後見制度の利用
成年後見制度を利用する場合、費用を負担できる資力や申立てを行ってくれる親族などが必要になりますが、費用の負担が難しい人や身寄りのいない人が少なくありません。そこで、4親等内の親族がいない場合、市区町村長が申し立てをすることができるとされているところ、国民年金等を受給して特別養護老人ホームに入所している人につき成年後見を開始して社会福祉士を成年後見人に選任した事案につき非訟事件手続法26条により手続費用を市長に負担させている(大阪家裁平成14年5月8日審判)一方で、弁護士を成年後見人に選任した事案につき本人の資産内容を考慮して非訟事件手続法28条により手続費用を申立人である区長ではなく本人に負担させています(東京家裁平成14年5月14日審判)。
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離婚後における親子の面会交流の方法
離婚により親権者・監護者でなくなった親が子と会ったり手紙・電話等で交流することを面会交流と言います(民法766条)が、父母の葛藤が激しかったり信頼関係の再構築が十分でない場合などには家庭裁判所調査官の指導(大阪家裁昭和54年11月5日審判)、弁護士の付き添い(名古屋家裁平成2年5月31日審判)などといった第三者の指導や立会いがその条件とされることがあります。また、子が別居している親と会いたがらない場合などには直接会うのではなく手紙、写真、ビデオの送付などによる間接的な交流にとどめる(浦和家裁平成12年10月20日、京都家裁平成18年3月31日等)ことがあります。
なお、面会交流の合意が履行されない場合に家庭裁判所による履行勧告や強制執行が問題となるところ、強制執行につき大阪高裁平成14年1月15日決定は、「面接交渉義務を負う者が、正当の理由がないのに義務を履行しない場合には、面接交渉権を行使できる者は、特別の事情のない限り、間接強制により、権利の実現を図ることができる」とし、最高裁平成25年3月28日決定は、間接強制が認められるために必要な給付内容の特定につき、面会交流の日時または頻度、各回の面会交流時間の長さ等が具体的に定められていることとしています。
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高齢者などによる縁組意思を欠いた養子縁組
養子縁組は、養親となるべき者と養子となるべき者との合意に基づく養子縁組届によって行われます(民法799条)が、財産的な法律関係を作出することのみを目的とする場合には縁組意思を欠くものとして養子縁組は無効とした裁判例(大阪高裁平成21年5月15日判決)があります。
また、判断能力が低下した高齢者の財産獲得を目的とする養子縁組がみられるところ、認知症を発症した高齢者の養子縁組を無効とした裁判例として東京高裁平成21年8月6日判決、名古屋家裁平成22年9月3日判決があります。
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交通事故などの不法行為による年金受給者の死亡
交通事故などの不法行為によって年金受給者が死亡した場合にその相続人が加害者に対し、この年金受給権の喪失を逸失利益として損害賠償請求できるかという問題があります。そこで、この問題に関する裁判例をみると、
① 地方公務員等共済組合法に基づく退職年金について、最高裁平成5年3月24日判決が「相続人は、加害者に対し、退職年金の受給者が生存していればその平均余命期間に受給することができた退職年金の現在額を同人の損害として、その賠償を求めることができる」と判示しています。
② 普通恩給および国民年金法に基づく国民年金(老齢年金)について最高裁平成5年9月21日判決が「普通恩給は、当該恩給権者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであるとともに、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても、同一の機能を営むものと認められるから」「普通恩給は、その逸失利益として相続人が相続によりこれを取得する」「国民年金(老齢年金)もまた、その目的・趣旨は右と同様のものと解されるから」「国民年金は、その逸失利益として相続人が相続によりこれを取得し、加害者に対してその賠償を請求することができる」と判示しています。
③ 国民年金法に基づく障害基礎年金と厚生年金保険法に基づく障害厚生年金について最高裁平成11年10月22日判決が「原則として、保険料を納付している被保険者が所定の障害等級に該当する障害の状態になったときに支給されるものであって・・・程度の差はあるものの、いずれも保険料が拠出されたことに基づく給付としての性格を有している。したがって」「その相続人は、加害者に対し」「障害年金の現在額を同人の損害として、その賠償を求めることができる」と判示しています。
④ 厚生年金保険法に基づく遺族年金について最高裁平成12年11月14日判決が「遺族厚生年金は、受給権者自身の生存中その生活を安定させる必要を考慮して支給するものであるから」「逸失利益には当たらない」と判示しています。
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交通事故によるペットの死傷と慰謝料・治療費の賠償
交通事故によって人が死傷した場合、財産的損害の賠償や精神的損害についての慰謝料が問題となりますが、飼っているペットが死傷した場合にも治療費の賠償や精神的損害についての慰謝料が問題となります。
そこで、この問題に関する裁判例を見ると、追突事故により飼い犬が負傷して後肢麻痺、排尿障害が残った事案につき、名古屋高裁平成20年9月30日判決が「愛玩動物のうち家族の一員であるかのように遇されているものが不法行為によって負傷した場合の治療費等については、生命を持つ動物の性質上、必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく、当面の治療や、その生命の確保、維持に必要不可欠なものについては、時価相当額を念頭に置いた上で、社会通念上、相当と認められる限度において、不法行為との間に因果関係のある損害に当たる」として治療費と慰謝料の請求を認めています。
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交通事故の後発的事情(被害者の自殺、病死)による死亡
交通事故による後遺障害が残った被害者が後発的事情によって死亡した場合にこの後発的事情が損害の算定においてどのように評価されるかが問題となることがあります。
この点、後遺障害が残った被害者が自殺した場合について、最高裁平成5年9月9日判決は、「本件事故の態様が・・・に大きな精神的衝撃を与え、しかもその衝撃が長い年月にわたって残るようなものであったこと、その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となって、・・・が災害神経症状態に陥り、更にその状態から抜け出せないままうつ病になり、その改善をみないまま自殺に至ったこと、自らに責任のない事故で傷害を受けた場合には災害神経症状態を経てうつ病に発展しやすく、うつ病にり患した者の自殺率は全人口の自殺率と比較してはるかに高いなど原審の適法に確定した事実関係を総合すると、本件事故と・・・の自殺との間に相当因果関係があるとした上、自殺には同人の心因的要因も寄与しているとして相応の減額をして死亡による損害額を定めた原審の判断は、正当として是認することができ」ると判示しています。
一方、後遺障害が残った被害者が病死した場合について、最高裁平成8年4月25日判決は、「交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益の算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではない」と判示しています。
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