Archive for the ‘裁判外’ Category

労働者に対する降格・減給

2022-03-07

   賃金は労働者の生活の糧として労働者に大きな影響を及ぼします。そのため、賃金にかかわる降格・減給が争いになることがあります。

   この降格・減給に関する裁判例を見ると、東京地裁平成12年1月31判決は、備っていると判断された職務遂行能力が営業成績や勤務評価が低い場合にこれを備えないものとして降格させることを予定していない一般的な職能資格制度の下では、労働者の自由意思に基づいてなされた同意等の法的根拠なく、使用者が降格や職能給の減額措置を行うことはできないとしています。

   また、東京地裁平成16年3月31日判決は、労働契約の内容として成果主義による基本給の降給が定められている場合であっても降給が許容されるためには、さらに降給が決定される過程に合理性があること、その過程が従業員に告知されてその言い分を聞く等の公正な手続が存することが必要である。降給の仕組み自体に合理性と公正さが認められその仕組みに沿った降給の措置が採られた場合には、個々の従業員の評価の過程に特に不合理ないし不公正な事情が認められない限り、当該降給の措置は当該仕組みに沿って行われたものとして許容されるとしています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



当事務所内で咲く花

金融商品取引と適合性原則

2019-02-18

 金融商品取引においては、顧客(消費者)保護という観点から、適合性原則という法理が問題とされます。

 この法理については最高裁平成17年7月14日判決が、「適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは、当該行為は不法行為法上も違法となる」とし、この判決を受けて金融商品取引法(金商法)40条1号が「金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。 一 金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けるおそれがあること」と規定しています。

 なお、日本証券業協会による自主規制規則として、「新たな有価証券等の販売を行うにあたっては、当該有価証券等の特性やリスクを十分に把握し、当該有価証券等に適合する顧客が想定できないものについては、販売してはならない」とする協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則3条3項があります。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

親族の扶養の程度・方法

2018-08-27

 親族の扶養の程度又は方法については、民法879条が当事者間の協議か扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮した上で家庭裁判所の審判で定めるとしています。

 また、扶養方法としては引取扶養と給与扶養があり、給与扶養については金銭給与扶養と現物給与扶養があるとされています。

 なお、扶養義務者が複数存在する場合、引取扶養をする者と給与扶養を行うものを決めることも可能で、大阪家裁昭和40年3月20日審判、仙台家裁昭和56年3月31日審判などは、扶養義務者のうちのある者に対し引取扶養を、他の者に対し金銭給与扶養を命じています。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

労働者の能力不足・成績不良による解雇

2017-03-06

労働者の能力不足・成績不良・適格性の欠如は、労働者の解雇の理由となり、就業規則において「労働能率が劣り、向上の見込みがないとき」は解雇理由になるなどと規定されることがありますが、労働義務・付随義務違反といった債務不履行があるだけでは足りず、その事実が雇用を終了させてもやむをえないと認められる程度に達していることが必要で、能力不足等が解雇を正当化するのはそれが労働契約の継続を期待し難いほど重大な程度に達している場合に限られるとされています。

そこで、裁判例を見ると、配転や研修の機会を与えても能力・適格性が向上せず改善の余地がない場合は雇用の継続を期待し難いことから解雇は相当とされています(東京地裁平成15年12月22日判決、東京高裁平成25年3月21日判決)が、①問題となる能力・成績は容易に是正し難いほど不良であることを要し、また、たとえこのことが認められるとしても②指導・教育や職種転換(配転・降格)によって能力を活用する余地があればそれらの措置によって雇用を継続する努力が求められ(東京高裁平成25年4月24日判決)、東京地裁平成11年10月15日判決は、「労働能率が劣り、向上の見込みがないこと」という解雇理由による解雇が許されるのは、著しく労働能率が劣り向上の見込みがない場合に限られるところ人事考課の低さだけではこれに該当せず、教育・指導や配置転換の措置を尽くしていないとして解雇を無効としています。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

当事務所内で咲く花

住宅等の建物に瑕疵がある場合における責任追及

2016-10-24

   住宅等の建物について漏水、有害物質の発生等といった不具合がある場合、契約関係にある当事者間においては瑕疵担保責任(売買契約であれば民法570条、請負契約であれば民法634条以下)を、契約関係にない当事者間においては不法行為責任(民法717条等)を追及することが考えられますが、当該不具合が条文でいうところの「瑕疵」にあたるかどうかが問題となります。

   まず、売買契約における「瑕疵」に関する裁判例を見ると、大審院昭和8年1月14日判決が「売買ノ目的物ガアル性能ヲ有スルコトヲ売主ニオイテ特ニ保証シタルニカカワラズ之ヲ具備セザル場合ハ瑕疵ナルモノトスル」とし、最高裁平成22年6月1日判決が「売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては、売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべき」と判示しています。

   次に、請負契約における「瑕疵」に関する裁判例を見ると、最高裁平成15年10月10日判決が「本件請負契約においては、上告人及び被上告人間で、本件建物の耐震性を高め、耐震性の面でより安全性の高い建物にするため、南棟の主柱につき・・・を使用することが、特に約定され、これが契約の重要な内容になっていたものというべきである。そうすると、この約定に違反して、・・・を使用して施工された南棟の主柱の工事には、瑕疵がある」と判示しています。

   最後に、民法717条の不法行為(土地工作物責任)における「瑕疵」に関する裁判例を見ると、最高裁平成19年7月6日判決が「建物は、その利用者や隣人、通行人等の生命、身体又は財産を危険にさらすことがないよう基本的な安全性を備えていなければならず」とし、最高裁平成23年7月21日判決が「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵とは、居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず、当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する」と判示しています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)



当事務所内で咲く花

当ウェブサイト内のサイトページ追加のお知らせについて

2016-10-17

 当ウェブサイト内の「取扱分野」のカテゴリー内の「裁判外」において、以下のサイトページを追加したのでお知らせします。

公害等紛争ADR(裁判外紛争解決手続)に関する悩み

URL: https://hirama-law.jp/service/pollution-dispute/

建設工事紛争ADR(裁判外紛争解決手続)に関する悩み

URL: https://hirama-law.jp/service/construction-dispute/

住宅紛争ADR(裁判外紛争解決手続)に関する悩み

URL: https://hirama-law.jp/service/housing-dispute/

保険紛争ADR(裁判外紛争解決手続)に関する悩み

URL: https://hirama-law.jp/service/insurance-dispute/

今後とも、本サイトをご愛嬌いただけますよう心からお願い申し上げます。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)



当事務所内で咲く花

日本に居住する外国人夫婦の離婚

2016-09-26

   日本に住んでいる外国人の夫婦が日本で離婚をしようとする場合、日本の裁判所を利用することが出来ますが、この場合に適用される法律(準拠法)が問題となります。

   離婚の成立要件について適用される法律は、

   ①   その夫婦の本国法が同じであるときはその本国法(共通本国法)

   ②   共通本国法は無いがその夫婦の常居所地法が同じであるときはその常居所地法(共通常居所地法)

   ③   共通本国法、共通常居所地法のいずれも無いときはその夫婦と最も密接な関係のある地の法律(密接関連地法)となります(法の適用に関する通則法25条、27条)。

   また、離婚の方式について適用される法律は、上記の離婚の成立要件について適用される法律か行為地法となります(法の適用に関する通則法34条)。


Divorce between foreign nationals in Japan – Applicable Law of Divorce

If one party is a Japanese residing in Japan, the Japanese civil code applies. How about a couple who are both foreign nationals? Article 27 applied the same provisions as in Article 25, regarding the effectiveness of marriage. According to article 25,

(1) If both party’s home country law is the same, then according that law applies.

(2) If there is no such law, if the couple have a common place of domicile, the law of that country applies.

(3) If neither the above are applicable, then the law of the country the couple has the closest tie to shall apply.

Therefore, if for example, a couple of differing nationalities resides in Japan, even if neither one may be a Japanese national, the Japanese civil code will apply. In cases such as this where the Japanese civil code is applicable, divorce by consent can take place. *Kobori, S. 2008. Living with the Japanese Law A Guide for Foreign Nationals in Japan Q&A107 The 3er edition. Japan: T Sakai.

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)



当事務所内で咲く花

民事調停制度の利用

2015-11-30

   裁判所の関与によって民事紛争を解決する制度として訴訟が存在しますが、この他に裁判所の関与によって民事紛争を解決する制度として民事調停が存在します。

   訴訟と対比すると、調停には①当事者双方の自由意思による合意によって自主的に紛争を解決する手段であり、事案の実情に即して当事者の生活関係全般にわたっての解決を図ることが出来る。②裁判官(民事調停官)と民事調停委員で構成される調停委員会が紛争解決のあっせんにあたり、健全な良識等を紛争の解決に反映させることが出来る。③非公開の席で行われるため、当事者が素直に意見を述べることが出来る。④当事者の合意によって紛争が解決されるため、相手方の任意の履行を期待出来る。といった特色があると言われています。

   調停手続を経ることなく訴訟を提起することが出来るというのが原則ですが、地代・土地の借賃の増減額請求や建物の借賃の増減額請求については、調停による解決に適しているとの考えから、まず、調停の申立てをしなければならない(調停前置主義)とされています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



当事務所内で咲く花

交通事故に関するトラブルとADR(裁判外紛争解決手続)の利用

2014-05-26

   交通事故による被害者がその損害の賠償を受ける方法としては、加害者、保険会社などとの交渉や裁判の他に、裁判外紛争処理機関に対して紛争処理(ADR: Alternative Dispute Resolution)を申し立てるという方法も存在します。

   判断が難しい法律問題がある場合や事故状況などについて双方の言い分が大きく食い違っている場合などADRによる処理になじまない事案もありますが、裁判などに比べ費用が少なくて済む、早期の解決を図りやすいといったメリットがADRにはあります。

   交通事故に関するADRとしては、①公益財団法人日弁連交通事故相談センター、②公益財団法人交通事故紛争処理センター、③一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構、④損害保険相談・紛争解決サポートセンター(そんぽADRセンター)
といったものがあります。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



当事務所内で咲く花

金融商品・金融サービスに関するトラブルと金融ADR

2014-03-03

   金融商品・金融サービスに関するトラブルを裁判によらずに解決する制度として金融ADRが存在します。金融ADRとは、金融分野における裁判外の簡易・迅速な紛争解決制度です。

   そして、業態ごとに指定紛争解決機関(全銀協、生命保険協会、日本損害保険協会、FINMAC等)が設けられ、また、対象業態について指定紛争解決機関が存在しない場合には各金融機関において指定紛争解決機関に代わる苦情処理措置及び紛争解決措置(認証ADR、弁護士会仲裁センター等におけるあっせんまたは仲裁手続等)を講じることとされています。

   金融商品・金融サービスに関するトラブルが生じた場合、それぞれのメリット、デメリットを検討して訴訟と金融ADRあるいはその他の手段の中で適切と思われるものを利用することになります。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



当事務所内で咲く花

« Older Entries
ページの上へ

   Copyright© 2010-2022 ひらま総合法律事務所: 東京都港区白金で弁護士相談 All Rights Reserved.   プライバシーポリシー