Archive for the ‘ブログ’ Category

自筆証書遺言における押印

2025-08-18

 遺言者が遺言の全文,日付,氏名を自書し,これに押印する方式の遺言を自筆証書遺言と言うところ,この押印と認められるかどうかが問題となることがあります。

 花押を書いた遺言が問題となった最高裁平成28年6月3日判決は,「花押を書くことは,印章による押印とは異なるから,民法968条1項の押印の 要件を満たすものであると直ちにいうことはできない。そして,民法968条1項が,自筆証書遺言の方式として,遺言の全文,日付及び氏名の自書のほかに,押印をも要するとした趣旨は,遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに,重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ」「我が国において,印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。 以上によれば,花押を書くことは,印章による押印と同視することはできず,民法968条1項の押印の要件を満たさないというべきである」と判示して花押では要件を充たさないとしています。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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節税のための養子縁組

2025-08-11

 養子縁組が成立するには縁組意思の合致が必要であり,縁組意思を欠く場合は無効(民法802条1号)とされるところ,節税のための養子縁組は縁組意思を欠き無効となるのではないかが問題となったことがあります。

 相続税を減らす目的での養子縁組が問題となった最高裁平成29年1月31日判決は,「養子縁組は,嫡出親子関係を創設するものであり,養子は養親の相続人となるところ,養子縁組をすることによる相続税の節税効果は,相続人の数が増加することに伴い,遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは,このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず,相続税の節税の動機と縁組をする意思とは,併存し得るものである。したがって,専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない」と判示してこのような養子縁組を有効としています。

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凍結精子を用いて生まれた子による認知請求

2025-08-04

 生殖補助医療として体外受精が行われることがあるところ,この方法によって生まれた子の親子関係が問題となることがあります。

 死亡した男性の精子を用いて行われた人工生殖により懐胎出産された子と当該男性との間における法律上の親子関係が問題となった最高裁平成18年9月4日判決は,「民法の実親子に関する法制は,血縁上の親子関係を基礎に置いて,嫡出子については出生により当然に,非嫡出子については認知を要件として,その親との間に法律上の親子関係を形成するものとし,この関係にある親子について民法に定める親子,親族等の法律関係を認めるものである。ところで,現在では,生殖補助医療技術を用いた人工生殖は,自然生殖の過程の一部を代替するものにとどまらず,およそ自然生殖では不可能な懐胎も可能とする までになっており,死後懐胎子はこのような人工生殖により出生した子に当たるところ,上記法制は,少なくとも死後懐胎子と死亡した父との間の親子関係を想定していないことは,明らかである。すなわち,死後懐胎子については,その父は懐胎前に死亡しているため,親権に関しては,父が死後懐胎子の親権者になり得る余地はなく,扶養等に関しては,死後懐胎子が父から監護,養育,扶養を受けることはあり得ず,相続に関しては,死後懐胎子は父の相続人になり得ないものである。また,代襲相続は,代襲相続人において被代襲者が相続すべきであったその者の被相続人の遺産の相続にあずかる制度であることに照らすと,代襲原因が死亡の場合には,代襲相続人が被代襲者を相続し得る立場にある者でなければならないと解されるから,被代襲者である父を相続し得る立場にない死後懐胎子は,父との関係で代襲相続人にもなり得ないというべきである。このように,死後懐胎子と死亡した父との関係は,上記法制が定める法律上の親子関係における基本的な法律関係が生ずる余地のないものである。そうすると,その両者の間の法律上の親子関係の形成に関する問題は,本来的には,死亡した者の保存精子を用いる人工生殖に関する生命 倫理,生まれてくる子の福祉,親子関係や親族関係を形成されることになる関係者の意識,更にはこれらに関する社会一般の考え方等多角的な観点からの検討を行った上,親子関係を認めるか否か,認めるとした場合の要件や効果を定める立法によって解決されるべき問題であるといわなければならず,そのような立法がない以上,死後懐胎子と死亡した父との間の法律上の親子関係の形成は認められないというべきである」と判示して死後懐胎子と死亡した男性との法律上の親子関係を否定しています。


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性別の取扱いの変更をした者の親子関係

2025-07-28

 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(特例法)に基づいて性別の取扱いの変更が行われることがありますが,この変更の審判を受けた者の親子関係が問題となったことがあります。

 この特例法に基づく性別の変更の審判を受けた者とその妻が懐胎した子との父子関係が問題となった最高裁平成24年12月26日決定は,「特例法4条1項は,性別の取扱いの変更の審判を受けた者は,民法その他の法令の規定の適用については,法律に別段の定めがある場合を除き,その性別につき他の性別に変わったものとみなす旨を規定している。したがって,特例法3条1項の規定に基づき男性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者は,以後,法令の規定の適用について男性とみなされるため,民法の規定に基づき夫として婚姻することができるのみならず,婚姻中にその妻が子を懐胎したときは,同法772条の規定により,当該子は当該夫の子と推定されるというべきである。もっとも,民法772条2項所定の期間内に妻が出産した子について,妻がその子を懐胎すべき時期に,既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ,又は遠隔地に居住して,夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には,その子は実質的には同条の推定を受けないことは,当審の判例とするところであるが」「性別の取扱いの変更の審判を受けた者については,妻との性的関係によって子をもうけることはおよそ想定できないものの,一方でそのような者に婚姻することを認めながら,他方で,その主要な効果である同条による嫡出の推定についての規定の適用を,妻との性的関係の結果もうけた子であり得ないことを理由に認めないとすることは相当 でないというべきである。そうすると,妻が夫との婚姻中に懐胎した子につき嫡出子であるとの出生届がされた場合においては,戸籍事務管掌者が,戸籍の記載から夫が特例法3条1項の規定に基づき性別の取扱いの変更の審判を受けた者であって当該夫と当該子との間の血縁関係が存在しないことが明らかであるとして,当該子が民法772条による嫡出の推定を受けないと判断し,このことを理由に父の欄を空欄とする等の戸籍の記載をすることは法律上許されないというべきである」と判示してこの場合における嫡出の推定を認めています。


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生殖補助医療を利用した場合の親子関係

2025-07-21

 不妊症等に対処するため生殖補助医療が利用されることがあるところ,生殖補助医療を利用して生まれた子の親子関係が問題となることがあります。

 女性の卵子を用いた生殖補助医療により生まれた子との母子関係が問題となった最高裁平成19年3月23日決定は,「実親子関係は,身分関係の中でも最も基本的なものであり,様々な社会生活上の関係における基礎となるものであって,単に私人間の問題にとどまらず,公益に深くかかわる事柄であり,子の福祉にも重大な影響を及ぼすものであるから,どのような者の間に実親子関係の成立を認めるかは,その国における身分法秩序の根幹をなす基本原則ないし基本理念にかかわるものであり,実親子関係を定める基準は一義的に明確なものでなければならず,かつ,実親子関係の存否はその基準によって一律に決せられるべきものである。したがって,我が国の身分法秩序を定めた民法 は,同法に定める場合に限って実親子関係を認め,それ以外の場合は実親子関係の成立を認めない趣旨であると解すべきである。以上からすれば,民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものであり,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するといわなければならない。このことは,立法政策としては現行民法の定める場合以外にも実親子関係の成立を認める余地があるとしても変わるものではない」「我が国の民法上,母とその嫡出子との間の母子関係の成立について直接明記した規定はないが,民法は,懐胎し出産した女性が出生した子の母であり,母子関係は懐胎,出産という客観的な事実により当然に成立することを前提とした規定を設けている(民法772条1項参照)。また,母とその非嫡出子との間の母子関係についても,同様に,母子関係は出産という客観的な事実により当然に成立すると解されてきた」「 民法の実親子に関する現行法制は,血縁上の親子関係を基礎に置くものであるが,民法が,出産という事実により当然に法的な母子関係が成立するものとしているのは,その制定当時においては懐胎し出産した女性は遺伝的にも例外なく出生した子とのつながりがあるという事情が存在し,その上で出産という客観的かつ外形上明らかな事実をとらえて母子関係の成立を認めることにしたものであり,かつ,出産と同時に出生した子と子を出産した女性との間に母子関係を早期に一義的に確定させることが子の福祉にかなうということもその理由となっていたものと解される。 民法の母子関係の成立に関する定めや上記判例は,民法の制定時期や判決の言渡しの時期からみると,女性が自らの卵子により懐胎し出産することが当然の前提となっていることが明らかであるが,現在では,生殖補助医療技術を用いた人工生殖は,自然生殖の過程の一部を代替するものにとどまらず,およそ自然生殖では不可能な懐胎も可能にするまでになっており,女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産することも可能になっている。そこで,子を懐胎し出産した女性とその子に係る卵子を提供した女性とが異なる場合についても,現行民法の解釈として,出生した子とその子を懐胎し出産した女性との間に出産により当然に母子関係が成立することとなるのかが問題となる。この点について検討すると,民法には,出生した子を懐胎,出産していない女性をもってその子の母とすべき趣旨をうかがわせる規定は見当たらず,このような場合における法律関係を定める規定がないことは,同法制定当時そのような事態が想定されなかったことによるものではあるが,前記のとおり実親子関係が公益及び子の福祉に深くかかわるものであり,一義的に明確な基準によって一律に決せられるべきであることにかんがみると,現行民法の解釈としては,出生した子を懐胎し出産した女性をその子の母と解さざるを得ず,その子を懐胎,出産していない女性との間には,その女性が卵子を提供した場合であっても,母子関係の成立を認めることはできない」と判示して子を懐胎し出産した女性を母としています。


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子の引渡しを受けるための人身保護請求

2025-07-14

 夫婦の関係が悪化するとその子の奪い合いになることがありますが,その子の引渡しを求めるために人身保護請求が利用されることがあります。

 共同親権者間における幼児の人身保護請求が問題となった最高裁平成6年4月26日判決は,「夫婦の一方(請求者)が他方(拘束者)に対し,人身保護法に基づき,共同親権に服する幼児の引渡しを請求した場合において,拘束者による幼児に対する監護・ 拘束が権限なしにされていることが顕著である(人身保護規則四条)ということができるためには,右幼児が拘束者の監護の下に置かれるよりも,請求者の監護の下 に置かれることが子の幸福に適することが明白であること,いいかえれば,拘束者が幼児を監護することが,請求者による監護に比して子の幸福に反することが明白であることを要すると解される」「そして,請求者であると拘束者であるとを問わず,夫婦のいずれか一方による幼児に対する監護は,親権に基づくものとして,特段の事情のない限り適法であることを考えると,右の要件を満たす場合としては,拘束者に対し,家事審判規則五二条の二又は五三条に基づく幼児引渡しを命ずる仮処分又は審判が出され,その親権行使が実質上制限されているのに拘束者が右仮処分等に従わない場合がこれに当たると考えられるが,更には,また,幼児にとって,請求者の監護の下では安定した生活を送ることができるのに,拘束者の監護の下においては著しくその健康が損なわれたり,満足な義務教育を受けることができないなど,拘束者の幼児に対する処遇が親権行使という観点からみてもこれを容認することができないような例外的な場合がこれに当たるというべき」と判示しています。


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遺言の解釈による遺言事項の拡大

2025-07-07

 遺言できる事項は民法に規定されているところ,遺言事項として規定されていない事項の遺言が認められるかが問題となることがあります。

 受遺者の選定を遺言執行者に委託する旨の遺言が問題となった最高裁平成5年1月19日判決は,「遺言の解釈に当たっては,遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが,可能な限りこれを有効となるように解釈することが右意思に沿うゆえんであり,そのためには,遺言書の文言を前提にしながらも,遺言者が遺言書作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮することも許されるものというべきである。このような見地から考えると,本件遺言書の文言全体の趣旨及び同遺言書作成時のDの置かれた状況からすると,同人としては,自らの遺産を上告人ら法定相続人に取得させず,これをすべて公益目的のために役立てたいという意思を有していたことが明らかである。そして,本件遺言書において,あえて遺産を「公共に寄與する」として,遺産の帰属すべき主体を明示することなく,遺産が公共のために利用されるべき旨の文言を用いていることからすると,本件遺言は,右目的を達成することのできる団体等(原判決の挙げる国・地方公共団体をその典型とし,民法三四条に基づく公益法人あるいは特別法に基づく学校法人,社会福祉法人等をも含む。)にその遺産の全部を包括遺贈する趣旨であると解 するのが相当である。また,本件遺言に先立ち,本件遺言執行者指定の遺言書を作成してこれを被上告人に託した上,本件遺言のために被上告人に再度の来宅を求めたという前示の経緯をも併せ考慮すると,本件遺言執行者指定の遺言及びこれを前提にした本件遺言は,遺言執行者に指定した被上告人に右団体等の中から受遺者として特定のものを選定することをゆだねる趣旨を含むものと解するのが相当である。このように解すれば,遺言者であるDの意思に沿うことになり,受遺者の特定にも欠けるところはない。そして,前示の趣旨の本件遺言は,本件遺言執行者指定の遺言と併せれば,遺言者自らが具体的な受遺者を指定せず,その選定を遺言執行者に委託する内容を含むことになるが,遺言者にとって,このような遺言をする必要性のあることは否定できないところ,本件においては,遺産の利用目的が公益目的に限定されている上, 被選定者の範囲も前記の団体等に限定され,そのいずれが受遺者として選定されても遺言者の意思と離れることはなく,したがって,選定者における選定権濫用の危 険も認められないのであるから,本件遺言は,その効力を否定するいわれはないものというべき」としてこの遺言を有効としています。


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精神障害者に対する監督責任

2025-06-30

 民法714条は,責任無能力者の監督責任を規定しているところ,精神障害者に関して同条の責任が問題となることがあります。

 同居している配偶者とその長男の責任が問題となった最高裁平成28年3月1日判決は,「精神障害者と同居する配偶者であるからといって,その者が民法714条1項にいう「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」に当たるとすることはできないというべきである」「被告Y2はAの長男であるが,Aを「監督する法定の義務を負う者」に当たるとする法令上の根拠はないというべきである」としながら,「もっとも,法定の監督義務者に該当しない者であっても,責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし,第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には,衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視してその者に対し民法714条に基づく損害賠償責任を問うことができるとするのが相当であり,このような者については,法定の監督義務者に準ずべき者として,同条1項が類推適用されると解すべきである 」「その上で,ある者が,精神障害者に関し,このような法定の監督義務者に準ずべき者に当たるか否かは,その者自身の生活状況や心身の状況などとともに,精神障害者との親族関係の有無・濃淡,同居の有無その他の日常的な接触の程度,精神障害者の財産管理への関与の状況などその者と精神障害者との関わりの実情,精神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容,これらに対応して行われている監護や介護の実態など諸般の事情を総合考慮して,その者が精神障害者を現に監督しているかあるいは監督することが可能かつ容易であるなど衡平の見地からその者に対し精神障害者の行為に係る責任を問うのが相当といえる客観的状況が認められるか否かという観点から判断すべきである」判示しています。


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共同相続人による相続財産の使用と管理

2025-06-23

 不動産の所有者が死亡するとその不動産について相続が開始することになりますが,その不動産は共同相続人の共有となるためその使用と管理が問題となることがあります。

 相続不動産を占有する相続人に対し他の相続人が賃料の支払やその明渡を求めることができるかが問題となった最高裁平成8年12月17日判決は,「共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物にお いて被相続人と同居してきたときは,特段の事情のない限り,被相続人と右同居の相続人との間において,被相続人が死亡し相続が開始した後も,遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は,引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって,被相続人が死亡した場合は,この時から少なくとも遺産分割終了までの間は,被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり,右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。けだし,建物が右同居の相続人の居住の場であり,同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると,遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが,被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである」と判示して,このような場合には相続財産である建物の相続開始後の使用について被相続人と相続人との間に使用貸借契約の成立が推認されるとしています。


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学校における自習時間中の事故による損害賠償責任

2025-06-16

 学校生活に関して児童生徒が被害者となる事故を学校事故と言うことがありますが,自習時間中の事故についての責任が問題となることがあります。

 この自習時間中の事故について,最高裁平成20年4月18日判決は,「本件事故は,朝自習の時間帯に,教室入口付近の自席に座っていた担任教諭の下に4,5名の児童が忘れ物の申告をするなどの話をしに来ており,被上告人X自身も,教科書を机に入れたりした後,ランドセルをロッカーにしまおうとして席を立ったという状況の下で発生したのであるが,朝自習の時間帯であっても,朝の会に移行する前に,忘れ物の申告等担任教諭に伝えておきたいと思っていることを話すために同教諭の下に行くことも,教科書など授業を受け るのに必要な物を机に入れてランドセルをロッカーにしまうことも,児童にとって必要な行動というべきであるから,「用もないのに自分の席を離れない」という学級の約束は,このような児童にとって必要な行動まで禁じるものではなく,児童が必要に応じて離席することは許されていたと解されるし,それは合理的な取扱いでもあったというべきである。そして,Aが日常的に乱暴な行動を取っていたなど,担任教諭において日ごろから特にAの動静に注意を向けるべきであったというような事情もうかがわれないから,Aが離席したこと自体をもって,担任教諭においてその動静を注視すべき問題行動であるということはできない。」「Aは,離席した後にロッカーから落ちていたベストを拾うため教室後方に移動し,ほこりを払うためベストを上下に振るなどした後,更に移動してベストを頭上で振り回したというのであり,その間,担任教諭は,教室入口付近の自席に座り,他の児童らから忘れ物の申告等を受けてこれに応対していてAの動静を注視していなかったというのであるが,ベストを頭上で振り回す直前までのAの行動は自然なものであり,特段危険なものでもなかったから,他の児童らに応対していた担任教諭において,Aの動静を注視し,その行動を制止するなどの注意義務があったとはいえず,Aがベストを頭上で振り回すというような危険性を有する行為に出ることを予見すべき注意義務があったともいえない。したがって,担任教諭が,ベストを頭上で振り回すという突発的なAの行動に気付かず,本件事故の発生を未然に防止することができなかったとしても,担任教諭に児童の安全確保又は児童に対する指導監督についての過失があるということはできない」として教諭に過失は認められないことを判示して,事故についての責任を否定しています。


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