Archive for the ‘保証’ Category
投資信託の購入による被害
投資信託は、投資者から集めた資金を運用の専門家が株式や債券などに投資して運用する金融商品です。
投資信託は、さまざまな資産に対して投資できる、運用が専門家によって行われるといったメリットがあるものですが、内容の理解が難しいものがある、元本が保証されていないといったことなどからその購入により損失を被ったとしてトラブルが生じることがあります。
そこで、投資信託の購入による損失が問題となった裁判例を見ると、大阪地裁平成18年4月26日判決が、証券取引経験のない高齢の主婦に乗り換え売買等を行わせた事案について説明義務違反や無意味な売買などにあたるとして賠償責任を認めています。また、東京地裁平成23年2月28日判決が、高齢者に対しリスクの大きいノックイン型投資信託の購入を勧誘した事案について説明義務違反にあたるとして賠償責任を認めています。
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差押債権者による取立て
差押命令が債務者に送達されて1週間が経過すると、差押債権者は、第三債務者から直接取立てをすることができます(民事執行法155条1項)。そして、この取立権によって、差押債権者は、自己の名において、差押債権に関し債務者の権利を行使できるとされており、最高裁平成11年9月9日判決は、生命保険に関し債務者の有する解約権を行使することができるとしています。
差押債権者が取立権を行使して第三債務者から支払いを受けたときはその限度で弁済を受けたものとみなされます(同法155条2項)。差押債権者は、取立権の行使により第三債務者から支払いを受けたときは直ちにその旨を執行裁判所に届け出なければならないとされています(同法155条3項)。
また、差押債権者が取立権に基づいて取立てをしたが第三債務者が支払わない場合や差押等が競合したのに供託しない場合、差押債権者は、取立訴訟を提起することができます(同法157条)。そして、差押債権者は、取立訴訟の判決に基づいて第三債務者の財産に対して強制執行をすることができます。
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債権に対する強制執行
債権に対する執行には、債権執行と債権担保権の実行がありますが、債権執行が利用されることが多いようです。
債権執行とは、金銭債権や引渡請求権を差し押さえ、換価・配当をする手続です(民事執行法143条等)。強制執行で必要とされる執行費用も、当該手続で取り立てることができる(同法42条)とされています。
債権執行の申立は、債務者の普通裁判籍の所在地か差し押さえる債権の所在地を管轄する地方裁判所に対して行います(同法144条第1項)。
強制執行は、請求債権の期限到来後に開始することができるのが原則(同法30条1項)ですので、弁済期がある場合や期限の利益の喪失が条件の場合、弁済期の到来や期限の利益の喪失を主張することになります。
また、差押債権の特定が必要とされ、差押債権が不特定である債権差押命令は無効とされます(最高裁昭和46年11月30日判決)。
執行裁判所は、債務者に対して差押債権の処分行為を禁止し、第三債務者に対して債務者への弁済を禁止する命令を発します(同法145条第1項)。そして、差押債権者は、債務者に差押命令が送達されてから1週間が経過すれば差押債権を取立てることができます(同法155条)。
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クレジット業者に対する抗弁の対抗
クレジット取引における販売契約とクレジット契約は当事者の異なる別個の契約ですが、購入者は、クレジット業者の支払請求に対し、販売契約についての無効・取消・解除等の事由をもって対抗できるとされています(抗弁の対抗、抗弁の接続 同法30条の4、35条の3の19)。
この規定の性質については争いがありますが、判例は、上記の抗弁の対抗はこの規定によって創設的に認められたという創設的規定説を採用している(最高裁平成23年10月25日判決、最高裁平成2年2月20日判決)と評価されています。
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終身借家権(終身建物賃貸借)
建物の賃貸借に関し、借家人が生きている限り存続し、死亡したときに終了する終身借家権(終身建物賃貸借制度)という制度が認められています(高齢者の居住の安定確保に関する法律)。そして、この借家契約においては、
① 書面によって行われること(同法54条2号、57条)
② 都道府県知事の認可事業であること(同法52条以下)
③ 建物の規模及び設備等が国土交通省例で定める基準に適合すること
④ 借家人は60歳以上の者であること
などが要件とされ、不確定期限(同法52条、54条2号)で、相続権が排除(同法52条)されます。
なお、上記の制度の他に、期間が定められた契約で賃借人が死亡した場合には期間が満了する前でも契約が終了する期間付き死亡時終了建物賃貸借制度があります。
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定期借家契約における事前説明文書
借家契約のなかには普通の借家契約と異なり契約が更新されることがなく期間の満了によって終了する定期借家契約が存在するところ、この定期借家契約においては、契約を締結するに際し、契約書とは別に事前に書面を交付してこの契約が定期借家契約であることを説明しなければならない(借地借家法38条2項)とされ、このような事前の書面による説明を怠った場合には、契約書が作成されていても、その契約は普通の借家契約となります(同法38条3項)。
そこで、家主は、定期契約書とは別に説明用の事前説明文書を作成した上でこれを借家人になろうとする者に対し交付し、さらにこれから締結しようとしている契約が定期借家契約であることを説明することが必要になります。
なお、最高裁平成24年9月13日判決は,この事前説明文書について、
「法38条1項の規定に加えて同条2項の規定が置かれた趣旨は、定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って、賃借人になろうとする者に対し、定期建物賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了することを 理解させ、当該契約を締結するか否かの意思決定のために十分な情報を提供することのみならず、説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止することにあるものと解される。」「以上のような法38条の規定の構造及び趣旨に照らすと、同条2項は、定期建物賃貸借に係る契約の締結 に先立って、賃貸人において、契約書とは別個に、定期建物賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により 終了することについて記載した書面を交付した上、その旨を説明すべきものとしたことが明らかである。」「そして、紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると、上記書面の交付を要するか否かについては、当該契約の締結に至る経緯、当該契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といっ た個別具体的事情を考慮することなく、形式的、画一的に取り扱うのが相当である。」「法38条2項所定の書面は、賃借人が、当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず、契約書とは別個独立の書面であることを要する」と 判示しています。
また、東京地裁平成24年3月3日判決が、「定期建物賃貸借契約の更新がないこととする定めが有効であるためには、賃貸人において、賃借人に対し、 賃貸借契約締結前に、締結される建物賃貸借契約が、同法38条1項の規定による定期建物賃貸借契約であること、当該建物賃貸借契約は契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了することを記載した書面を契約書とは別に交付するとともに、これを口頭で説明することを要すると解される(同条3項参照)。」 「説明書面を交付して行うべき説明は、締結される建物賃貸借契約が、一般的な建物賃貸借契約とは異なる類型の定期建物賃貸借契約であること、その特殊性は、同法26条所定の法定更新の制度及び同法28条所定の更新拒絶に正当事由を求める制度が排除されることにあるといった定期建物賃貸借契約という制度の少なくとも概要の説明と、その結果、当該賃貸借契約所定の契約期間の満了によって確定的に同契約が終了することについて、相手方たる賃借人が理解してしかるべき程度の説明を行うことを要する」と判示しています。
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金融商品取引と適合性原則
金融商品取引においては、顧客(消費者)保護という観点から、適合性原則という法理が問題とされます。
この法理については最高裁平成17年7月14日判決が、「適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは、当該行為は不法行為法上も違法となる」とし、この判決を受けて金融商品取引法(金商法)40条1号が「金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。 一 金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けるおそれがあること」と規定しています。
なお、日本証券業協会による自主規制規則として、「新たな有価証券等の販売を行うにあたっては、当該有価証券等の特性やリスクを十分に把握し、当該有価証券等に適合する顧客が想定できないものについては、販売してはならない」とする協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則3条3項があります。
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新しい民法(7)債権の消滅時効における時効期間と起算点
現行民法では、債権の消滅時効における時効期間と起算点について、「権利を行使することができる時から10年」としています(民法166条1項、167条1項)が、改正法では、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」か、「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」に時効によって消滅する(改正民法166条1項)としています。
また、現行民法は、170条から174条で短期消滅時効について規定していますが、改正法は、これらの規定を削除しています。
さらに、改正法は、定期金債権について、行使することができることを知ったときから10年間行使しないときか、これらの各債権を行使することができるときから20年間行使しないときは、時効によって消滅する(改正民法168条1項)とし、生命、身体の侵害による損害賠償請求権について、5年間と20年間のいずれかによって時効消滅する(改正民法167条、724条の2)としています。
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新しい民法(6)賃貸借における敷金と原状回復
現行法では、敷金という用語が使われています(民法316条、619条2項)がその意義などについての規定が存在しなかったところ、改正法は、敷金の意義等について規定しています。また、現行法では、内容が不明確であったところ、改正法は、原状回復義務の範囲などについて規定しています。
まず、改正法は、敷金の意義について、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」としています。
また、敷金返還債務について、
①賃貸借が終了し、かつ、目的物が返還されたとき、
②別段の合意がない限り、賃借人が適法に賃借権を譲渡したときに生ずるとしています。
さらに、敷金の充当について、賃貸物の返還時または賃借権の適法な譲渡時において、賃貸借に基づく賃借人の賃貸人に対する金銭債務が残存するときは、敷金はその債務の弁済に当然に充当されるとし、また、敷金返還債務が生ずる前であっても、賃貸人の意思表示により敷金の充当ができるとしています(以上、改正民法622条の2)。
次に、改正法は、賃借人の収去義務について、使用貸借の規定を準用し、
①賃借人が賃借物を受け取った後にこれに附属させたものについては賃借人が収去義務を負うとする一方、附属物を分離することができない場合や附属物の分離に過分の費用を要する場合には、賃借人は、収去義務を負わないとしています(改正民法622条、599条)。
また、改正法は、原状回復義務について、賃借人は、賃借物に生じた通常損耗については原状回復義務を負わないとし、また、その他の損傷についても賃借人の帰責事由によらないものについては現状回復義務を負わないとしています(改正民法621条)。
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新しい民法(5)売買契約における売主の瑕疵担保責任
現行民法における売主の瑕疵担保責任の法的性質については、法定責任説、債務不履行説などが主張されていますが、改正法は、債務不履行説の立場に立って条文を整理したと説明されています。
まず、責任を負う場合について、改正法は、「瑕疵」という文言を使わず、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない(契約不適合)ものであるときと規定しています。また、契約不適合が「隠れた」ものであること、買主が善意であることを要求していません(以上、改正民法562条1項)。また、現行民法571条を削除して改正民法533条において同時履行の関係に立つ債務として債務の履行に代わる損害賠償債務を規定しています。
次に、改正法は、契約不適合があった場合に買主は、売主に対し、売主の帰責事由の有無を問わず追完請求権を行使できる(改正民法562条1項、565条)が、履行不能になっている場合や買主に帰責事由がある場合には行使できない(改正民法412条の2、562条2項、565条)としています。なお、追完の方法は、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しでその選択は買主が行いますが、売主の選択する方法が買主に不相当な負担を課すものでない場合には、売主は、買主の選択と異なる方法によることができる(改正民法562条1項)とされています。
また、改正法は、契約不適合があった場合に買主は、売主に対し、売主の帰責事由の有無を問わず代金減額請求権を行使できるとしていますが、追完が不能・売主が追完を拒絶する意思を明確に示した・定期行為の時期が経過した・追完を受ける見込みがないことが明らかであるときを除いて、相当な期間を定めて追完を催告することが必要であり(改正民法563条1項・2項、565条)、また、買主に帰責事由がある場合には行使できない(改正民法563条3項)としています。なお、解除及び損害賠償請求の要件・効果は、債務不履行の一般原則(改正民法564条)によることになります。
また、改正法は、権利を行使できる期間について、目的物の種類・品質が契約不適合の場合にはそれを知った時から1年(改正民法566条)としましたが、その他の場合については特則を設けていません。
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