Archive for the ‘企業法務’ Category
新しい民法(6)賃貸借における敷金と原状回復
現行法では、敷金という用語が使われています(民法316条、619条2項)がその意義などについての規定が存在しなかったところ、改正法は、敷金の意義等について規定しています。また、現行法では、内容が不明確であったところ、改正法は、原状回復義務の範囲などについて規定しています。
まず、改正法は、敷金の意義について、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」としています。
また、敷金返還債務について、
①賃貸借が終了し、かつ、目的物が返還されたとき、
②別段の合意がない限り、賃借人が適法に賃借権を譲渡したときに生ずるとしています。
さらに、敷金の充当について、賃貸物の返還時または賃借権の適法な譲渡時において、賃貸借に基づく賃借人の賃貸人に対する金銭債務が残存するときは、敷金はその債務の弁済に当然に充当されるとし、また、敷金返還債務が生ずる前であっても、賃貸人の意思表示により敷金の充当ができるとしています(以上、改正民法622条の2)。
次に、改正法は、賃借人の収去義務について、使用貸借の規定を準用し、
①賃借人が賃借物を受け取った後にこれに附属させたものについては賃借人が収去義務を負うとする一方、附属物を分離することができない場合や附属物の分離に過分の費用を要する場合には、賃借人は、収去義務を負わないとしています(改正民法622条、599条)。
また、改正法は、原状回復義務について、賃借人は、賃借物に生じた通常損耗については原状回復義務を負わないとし、また、その他の損傷についても賃借人の帰責事由によらないものについては現状回復義務を負わないとしています(改正民法621条)。
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新しい民法(5)売買契約における売主の瑕疵担保責任
現行民法における売主の瑕疵担保責任の法的性質については、法定責任説、債務不履行説などが主張されていますが、改正法は、債務不履行説の立場に立って条文を整理したと説明されています。
まず、責任を負う場合について、改正法は、「瑕疵」という文言を使わず、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない(契約不適合)ものであるときと規定しています。また、契約不適合が「隠れた」ものであること、買主が善意であることを要求していません(以上、改正民法562条1項)。また、現行民法571条を削除して改正民法533条において同時履行の関係に立つ債務として債務の履行に代わる損害賠償債務を規定しています。
次に、改正法は、契約不適合があった場合に買主は、売主に対し、売主の帰責事由の有無を問わず追完請求権を行使できる(改正民法562条1項、565条)が、履行不能になっている場合や買主に帰責事由がある場合には行使できない(改正民法412条の2、562条2項、565条)としています。なお、追完の方法は、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しでその選択は買主が行いますが、売主の選択する方法が買主に不相当な負担を課すものでない場合には、売主は、買主の選択と異なる方法によることができる(改正民法562条1項)とされています。
また、改正法は、契約不適合があった場合に買主は、売主に対し、売主の帰責事由の有無を問わず代金減額請求権を行使できるとしていますが、追完が不能・売主が追完を拒絶する意思を明確に示した・定期行為の時期が経過した・追完を受ける見込みがないことが明らかであるときを除いて、相当な期間を定めて追完を催告することが必要であり(改正民法563条1項・2項、565条)、また、買主に帰責事由がある場合には行使できない(改正民法563条3項)としています。なお、解除及び損害賠償請求の要件・効果は、債務不履行の一般原則(改正民法564条)によることになります。
また、改正法は、権利を行使できる期間について、目的物の種類・品質が契約不適合の場合にはそれを知った時から1年(改正民法566条)としましたが、その他の場合については特則を設けていません。
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新しい民法(4)事業者が作成した約款に基づく取引
現行民法には約款に関する規定がありませんが、事業者が作成した約款に基づく取引が広く行われていることから、改正法では定型約款に関する規定が設けられます。
まず、適用の対象となる定型約款について、定型取引において契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体、定型取引について、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものと定義(改正民法548条の2第1項)しています。
また、定型約款が契約の内容になる場合について、
①定款約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき、
②定款約款の準備者があらかじめその定款約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときのいずれかを満たす状況で定型取引合意がなされた場合としています(改正民法548条の2第1項)。
なお、定型約款の準備者は、定型取引合意前か定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、定型約款の内容を開示しなければならない(改正民法548条の3)とされています。
また、定款約款の効力について、
①相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であり、
②その定型取引の態様およびその実状並びに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められる定款約款の条項は、合意をしなかったものとみなす(改正民法548条の2第2項)とされています。
さらに、定款約款の変更について、
①相手方の一般の利益に適合するときか
②契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性などの変更に係る事情に照らして合理的なもので、効力の発生時期を定め、約款変更する旨、変更後の約款内容、その効力の発生時期を周知しなければならない(改正民法548条の4第2項)とされています。
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新しい民法(3)法定利率の固定と変動
法定利率について、現行法は年5分と定めています(民法404条)が、改正法では、当初年3%とし、3年を1期として1期ごとに見直される(改正民法404条)ことになりました。また、この改正にあわせて商法514条が削除され、年6分の商事法定利率が廃止されることになりました。
また、現行法における金銭債務の損害賠償額の算定についての特則(民法419条1項)に関して、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率による(改正民法419条1項)ことにして、事後的に法定利率に変更があってもその影響を受けないようにしました。
また、現行法には明文の規定がありませんが、改正法では、損害賠償の額を定める場合に利息相当額を控除するときは法定利率によることが明文化されました(改正民法417条2項)。
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新しい民法(2)保証人の保護の拡充
保証人が過酷な責任を負うことが少なくないところ、保証人の保護という観点からの改正が行われます。
まず、
①保証債務の付従性(改正民法448条2項)、主たる債務者の有する抗弁等(改正民法457条2項・3項)の内容の明文化、保証人の求償権(改正民法459条1項、459条の2、460条3号、462条)、通知義務(改正民法463条)の内容の明確化、連帯保証人に生じた事由の効力の相対的効力への変更(改正民法458条、441条)といった改正が行われます。
また、
②個人根保証契約への極度額の規律の適用(改正民法465条の2、465条の5)、元本の確定事由の規律の適用(改正民法465条の4)の拡大といった改正が行われます。
さらに、
③経営者保証の場合を除いて、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約の締結にあたっての公正証書による保証意思確認手続の義務付け(改正民法465条の6から465条の8)、保証人に対する情報提供の義務付け(改正民法458条の2、458条の3、465条の10)といった改正が行われます。
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社内メールの私的利用とその閲覧・監視
企業内における情報伝達の手段として社内メールが利用されているところ、従業員の了承を得ることなく使用者がこのメールを閲覧・監視することが従業員のプライバシー権の侵害にならないかが問題となります。
この問題に関する裁判例を見ると、東京地裁平成13年12月3日判決は、「監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害になる」としてプライバシー権の侵害となる場合について述べていますが、誹謗中傷メールの調査においてサーバーに保存されていた電子メールを本人の了承を得ることなく調査したという事案について、東京地裁平成14年2月26日判決は、「ファイルの内容を含めて調査の必要が存する以上、その調査が社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為であるとはいえない」としてプライバシー権の侵害を否定しています。
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年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱い
労基法附則136条は、「使用者は、・・・有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と規定しているところ、何が「不利益な取扱い」として許されないのか、また、そのような行為が労基法39条1項違反や民法1条2項の公序に反するものとして無効となるのかが問題となります。
そこで、この問題に関する裁判例を見ると、賞与の計算において年休の取得日を欠勤日として扱うことについて、最高裁平成4年2月18日判決は、許されないとしていますが、翌月における勤務予定表の作成後に請求した年休をタクシー運転手の精皆勤手当の算定で欠勤扱いすることについて、最高裁平成5年6月25日判決は、その措置の「趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年次有給休暇の取得に対する事実上の抑止力」等の事情を総合考慮して、この権利の行使を抑制しこの権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものでない限り、公序に反するとはいえないとしています。
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市街地再開発事業
市街地再開発事業には第一種と第二種があります。そして、①第一種市街地再開発事業では公益を実現するために強制的に土地所有権等を別の権利に変換する権利変換を行う公用権利変換、②第二種市街地再開発事業では任意買収と収用という手法が用いられ、いずれの事業も都市再開発法に基づいて施工されます。
第一種市街地再開発事業では、権利変換を希望しない申出をしない限り権利変換を受けることになりますが、第二種市街地再開発事業では、譲受け希望の申出をしない限り金銭補償となります。
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権利変換手法を使う都市計画事業(市街地再開発など)
都市計画事業には土地上に都市計画施設を整備する都市計画施設整備事業と市街地の整備をする市街地開発事業があります。そして、市街地開発事業には収用という手法を使うものと公用権利変換という手法を使うものがあり、公用権利変換は、公用換地と狭義の公用権利変換とにさらに分けることができるところ、公用換地という手法を使う事業として土地区画整理事業(土地区画整理法)と住宅街区整備事業(大都市における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法)、狭義の公用権利変換という手法を使う事業として第一種市街地再開発事業(都市再開発法)、換地と収用を併用する事業として新都市基盤整備事業(新都市基盤整備法)があります(なお、第二種市街地再開発事業では任意買収と収用という手法が使われます)。
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借地・借家に関する特約と消費者契約法
借地・借家契約における特約については借地借家法上の強行法規や民法上の一般原則(公序良俗、信義則、権利濫用)との関係の他、消費者契約法との関係が問題となります。
この点に関する裁判例を見ると、建物の賃貸借契約における自然損耗等についての原状回復義務を賃借人に負担させる旨の特約を同法10条により無効とした大阪高裁平成16年12月17日判決、更新料を支払うとの約定を同法10条より無効とした大阪高裁平成21年8月27日判決、更新料特約及び敷引特約をいずれも同法10条により無効とした京都地裁平成21年7月23日判決などがありましたが、最高裁平成23年3月24日判決が敷引特約について敷引金の額が高額に過ぎると評価されない限り同法10条に該当せず有効であるとし、また、最高裁平成23年7月15日判決が更新料支払特約について更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、同法10条に該当せず有効であるとしています。
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