Archive for the ‘企業法務’ Category

新しい民法(3)法定利率の固定と変動

2018-05-28

 法定利率について、現行法は年5分と定めています(民法404条)が、改正法では、当初年3%とし、3年を1期として1期ごとに見直される(改正民法404条)ことになりました。また、この改正にあわせて商法514条が削除され、年6分の商事法定利率が廃止されることになりました。

 また、現行法における金銭債務の損害賠償額の算定についての特則(民法419条1項)に関して、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率による(改正民法419条1項)ことにして、事後的に法定利率に変更があってもその影響を受けないようにしました。

 また、現行法には明文の規定がありませんが、改正法では、損害賠償の額を定める場合に利息相当額を控除するときは法定利率によることが明文化されました(改正民法417条2項)。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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新しい民法(2)保証人の保護の拡充

2018-05-21

 保証人が過酷な責任を負うことが少なくないところ、保証人の保護という観点からの改正が行われます。

まず、
①保証債務の付従性(改正民法448条2項)、主たる債務者の有する抗弁等(改正民法457条2項・3項)の内容の明文化、保証人の求償権(改正民法459条1項、459条の2、460条3号、462条)、通知義務(改正民法463条)の内容の明確化、連帯保証人に生じた事由の効力の相対的効力への変更(改正民法458条、441条)といった改正が行われます。

また、
②個人根保証契約への極度額の規律の適用(改正民法465条の2、465条の5)、元本の確定事由の規律の適用(改正民法465条の4)の拡大といった改正が行われます。

さらに、
③経営者保証の場合を除いて、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約の締結にあたっての公正証書による保証意思確認手続の義務付け(改正民法465条の6から465条の8)、保証人に対する情報提供の義務付け(改正民法458条の2、458条の3、465条の10)といった改正が行われます。

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社内メールの私的利用とその閲覧・監視

2018-05-07

 企業内における情報伝達の手段として社内メールが利用されているところ、従業員の了承を得ることなく使用者がこのメールを閲覧・監視することが従業員のプライバシー権の侵害にならないかが問題となります。
この問題に関する裁判例を見ると、東京地裁平成13年12月3日判決は、「監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害になる」としてプライバシー権の侵害となる場合について述べていますが、誹謗中傷メールの調査においてサーバーに保存されていた電子メールを本人の了承を得ることなく調査したという事案について、東京地裁平成14年2月26日判決は、「ファイルの内容を含めて調査の必要が存する以上、その調査が社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為であるとはいえない」としてプライバシー権の侵害を否定しています。

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年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱い

2018-05-01

 労基法附則136条は、「使用者は、・・・有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と規定しているところ、何が「不利益な取扱い」として許されないのか、また、そのような行為が労基法39条1項違反や民法1条2項の公序に反するものとして無効となるのかが問題となります。

そこで、この問題に関する裁判例を見ると、賞与の計算において年休の取得日を欠勤日として扱うことについて、最高裁平成4年2月18日判決は、許されないとしていますが、翌月における勤務予定表の作成後に請求した年休をタクシー運転手の精皆勤手当の算定で欠勤扱いすることについて、最高裁平成5年6月25日判決は、その措置の「趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年次有給休暇の取得に対する事実上の抑止力」等の事情を総合考慮して、この権利の行使を抑制しこの権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものでない限り、公序に反するとはいえないとしています。

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市街地再開発事業

2018-02-19

市街地再開発事業には第一種と第二種があります。そして、①第一種市街地再開発事業では公益を実現するために強制的に土地所有権等を別の権利に変換する権利変換を行う公用権利変換、②第二種市街地再開発事業では任意買収と収用という手法が用いられ、いずれの事業も都市再開発法に基づいて施工されます。
 第一種市街地再開発事業では、権利変換を希望しない申出をしない限り権利変換を受けることになりますが、第二種市街地再開発事業では、譲受け希望の申出をしない限り金銭補償となります。

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権利変換手法を使う都市計画事業(市街地再開発など)

2018-02-13

都市計画事業には土地上に都市計画施設を整備する都市計画施設整備事業と市街地の整備をする市街地開発事業があります。そして、市街地開発事業には収用という手法を使うものと公用権利変換という手法を使うものがあり、公用権利変換は、公用換地と狭義の公用権利変換とにさらに分けることができるところ、公用換地という手法を使う事業として土地区画整理事業(土地区画整理法)と住宅街区整備事業(大都市における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法)、狭義の公用権利変換という手法を使う事業として第一種市街地再開発事業(都市再開発法)、換地と収用を併用する事業として新都市基盤整備事業(新都市基盤整備法)があります(なお、第二種市街地再開発事業では任意買収と収用という手法が使われます)。

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借地・借家に関する特約と消費者契約法

2018-01-22

借地・借家契約における特約については借地借家法上の強行法規や民法上の一般原則(公序良俗、信義則、権利濫用)との関係の他、消費者契約法との関係が問題となります。
 この点に関する裁判例を見ると、建物の賃貸借契約における自然損耗等についての原状回復義務を賃借人に負担させる旨の特約を同法10条により無効とした大阪高裁平成16年12月17日判決、更新料を支払うとの約定を同法10条より無効とした大阪高裁平成21年8月27日判決、更新料特約及び敷引特約をいずれも同法10条により無効とした京都地裁平成21年7月23日判決などがありましたが、最高裁平成23年3月24日判決が敷引特約について敷引金の額が高額に過ぎると評価されない限り同法10条に該当せず有効であるとし、また、最高裁平成23年7月15日判決が更新料支払特約について更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、同法10条に該当せず有効であるとしています。

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借家契約における迷惑行為防止特約

2018-01-15

マンションやアパートなどの賃貸借契約において、賃借人とその他当該建物を使用する者による近隣の居住者等に対し迷惑をかける行為を禁止する旨の特約が定められ、このような特約の違反が契約解除の原因として問題となることがあります。
このような特約に基づく契約の解除が問題となった裁判例を見ると、賃借人がショッピングセンターの秩序を乱したりすることを特約で禁止している場合に賃借人が他の賃借人と争ったことから賃貸人が賃借人に注意をしたところ、賃借人が賃貸人に対し暴言を吐いて暴行を加える等の事情があるときに賃貸人は契約を無催告で解除できるとした最高裁昭和50年2月20日判決、賃借人が共同生活上の秩序を乱し近隣の迷惑となる行為をしたことを理由とする契約解除を認めた東京地裁平成10年5月12日判決などがあります。

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借地契約における賃貸人による契約の更新拒絶

2017-12-25

借地契約において、賃貸人が期間満了時に借地契約を終了させるためには借地権者からの更新請求や土地の使用の継続に対し遅滞なく異議を述べる必要があり、この異議がなければ借地契約は法定更新されることになります。
そこで、この異議が問題となった裁判例を見ると、契約の締結された時期が当事者双方に曖昧になっていた事案について、最高裁昭和39年10月16日判決は、期間満了から1年半を経過した後に述べた異議につき借地法6条の遅滞なく述べられた異議にあたるとし、また、期間が満了したと考えて異議を述べたが審理の結果賃貸人が主張するより後である訴訟が継続している間に期間が満了するに至った事案について、最高裁昭和56年3月13日判決は、その期間満了後の土地の使用継続についても異議が黙示的に述べられていると解することができ、別個に異議を述べる必要はないとしています。

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借家契約における賃借人の原状回復義務

2017-12-18

賃貸借が終了した場合、賃借人は、賃貸人に対し、原状回復義務を負うことになりますが、賃貸借は賃借物を使用収益することを目的とするものであるため、通常の使用収益により生ずる減耗(通常損耗)については原状回復義務を負わないと考えられているところ、賃借人が通常損耗についても原状回復義務を負うとする特約が認められるのかという問題があります。
この問題に関する裁判例を見ると、自然損耗等についての原状回復費用を賃借人に負担させる特約について、消費者契約法10条により無効とした大阪高裁平成16年12月17日判決がありますが、最高裁平成17年12月16日判決は「賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負うためには、賃借人が補修費を負担することになる上記損耗の範囲につき、賃貸借契約書自体に具体的に明記されているか、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識して、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」としてこのような特約が認められる要件を判示しています。

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