Archive for the ‘企業法務’ Category

交通事故などによる死亡と葬儀費・墓碑建立費・香典等

2017-12-11

交通事故などで被害者が死亡した場合にその葬儀関係費の処理が問題となります。まず、葬儀費に関する裁判例を見ると、合理的であると考えられる範囲で損害賠償請求としてその支払請求を認めています(最高裁昭和43年10月3日判決等)。

また、墓碑建立費や仏壇購入費についても損害賠償請求としてその支払請求を認めています(最高裁昭和44年2月28日判決等)。なお、香典については、死亡事故を契機とした収入であることから損害から控除されるように思われますが、裁判例を見ると、損害の填補という性質を有しないとして損害額からその額は控除されない(最高裁昭和43年10月3日判決)とされているようです。

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労災事故・不法行為の被害者になった外国人の逸失利益・慰謝料

2017-12-04

日本に滞在する外国人の増加に伴い外国人が労災事故や不法行為の被害者となるケースが多くなっているようですが、このような場合の逸失利益や慰謝料をどのように算定するのかということが問題になります。

まず、逸失利益が問題になった裁判例を見ると、最高裁平成9年1月28日判決が「一時的に我が国に滞在し将来出国が予定される外国人の逸失利益を算定するに当たっては、当該外国人がいつまで我が国に居住して就労するか、その後はどこの国に出国してどこに生活の本拠をおいて就労することになるか、などの点を証拠資料に基づき相当程度の蓋然性が認められる程度に予測し、将来のあり得べき収入状況を推定すべきことな」り、「そうすると、予測されうる我が国での就労可能期間ないし滞在可能期間内は我が国での収入等を基礎として逸失利益を算定するのが合理的ということができる」「我が国における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、就労の態様等の事実的及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である」と判示しています。

また、慰謝料に関する裁判例を見ると、東京高裁平成13年1月25日判決が「死亡慰謝料の算定にあたっては、日本人と外国人とを問わず、その支払いを受ける遺族の生活の基盤がどこにあり、支払われた慰謝料がいずれの国で消費されるのか、そして当該外国と日本との賃金水準、物価水準、生活水準等の経済的事情の相違を考慮せざるを得ない」と判示しましたが、その後、日本人と同様の取り扱いをした大阪地裁平成20年1月31日判決や横浜地裁平成20年1月24日判決などが出ています。

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企業における内部統制システムと内部統制構築義務

2017-09-25

会社法は、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務ならびに当該株式会社およびその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」と規定(同法348条3項4号、362条4項6号)するところ、この体制は、一般に「内部統制システム」と呼ばれており、裁判例においても内部統制構築義務が問題とされています。

そこで、この義務に関する裁判例を見ると、大阪地裁平成12年9月20日判決が「健全な会社経営を行うためには、目的とする事業の種類、性質等に応じて生じる各種のリスク・・・の状況を正確に把握し、適切に制御すること、すなわちリスク管理が欠かせず、会社が営む事業の規模、特性等に応じたリスク管理体制(いわゆる内部統制システム)を整備することを要する」「取締役は、取締役会の構成員として、また、代表取締役又は業務担当取締役として、リスク管理体制を構築すべき義務を負い、さらに、代表取締役及び業務担当取締役がリスク管理体制を構築すべき義務を履行しているか否かを監視する義務を負うのであり、これもまた、取締役としての善管注意義務及び忠実義務の内容をなすものというべきである」と判示しています。また、金融取引により会社が多額の損害を被った事案につき最高裁平成22年12月3日判決は、この取引を担当しない取締役は原則的に内部統制構築義務を負うのみであるが、この取引を担当する取締役は、会社が特に定める取引に関する内部的行動規範・取扱規程を遵守しなければならないとしています。

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交通事故と医療過誤が競合する場合の共同不法行為

2017-09-19

複数の者が加害者として交通事故に関与する場合、共同不法行為(民法719条)の成否が問題となるところ、このような類型のひとつとして交通事故と医療過誤が競合する場合があります。

そこで、この問題に関す裁判例を見ると、最高裁平成13年3月13日判決が交通事故により放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの事故後搬入された病院において適切な治療が施されていれば高度の蓋然性をもって被害者を救命することができたと認定された事案について、「本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが、・・・死亡という不可分の1個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって、本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから、被害者との関係においては、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。」と判示して共同不法行為の成立を認めた上、結果の発生に対する寄与度による責任の限定を否定しています。

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休職命令の要件

2017-09-11

労働者の就労を一時禁止または免除することを休職といい、これには

①労働者の疾病・負傷を理由とする傷病休職、

②傷病以外の事故を理由とする事故欠勤休職、

③刑事事件で起訴された者を休職させる起訴休職、

④留学等のための自己都合休職、

⑤出向期間中の出向休職

などがありますが、使用者の一方的な休職命令による休職についてはその要件が問題となります。

そこで、この点が問題になった裁判例を見ると、傷病休職に関して、東京高裁平成7年8月30日判決が、傷病によって通常勤務に相当の支障が生ずることを要するとしています。

また、起訴休職に関して、東京地裁平成11年2月15日判決が、傷害事件で起訴された者に対する11か月の無給起訴休職につき処分無効としています。

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車の貸主やレンタカー業者の運行供用者としての責任

2017-09-04

自動車による人身事故について自動車損害賠償保障法(自賠法)3条が「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)の損害賠償責任を定めているところ、有償ないし無償で自動車を貸し出した第三者が事故を起こした場合における所有者の運行供用者としての責任が問題となります。

1 レンタカー業者から自動車をレンタルした借受人が事故を起こした場合についての裁判例を見ると、約定の返還時間の約55時間後に借受人が事故を起こした場合につき和歌山地裁平成6年12月20日判決が業者の運行供用者としての責任を認め、また、約定の返還時間の6時間余り後に借受人の同居人が事故を起こした場合につき神戸地裁平成10年3月19日判決が業者の運行供用者としての責任を認めていますが、返還予定日から25日経過した後に借受人から無断転貸を受けた者が事故を起こした場合につき大阪地裁昭和62年5月29日判決が業者の運行供用者としての責任を否定しています。

2 所有者から自動車を無償で借り受けた借受人が事故を起こした場合についての裁判例を見ると、自動車販売会社が販売した中古車の整備を終えるまでの間に提供した代車で顧客の被用者が事故を起こした場合につき最高裁昭和46年11月16日判決が自動車販売会社の運行供用者としての責任を認め、また、父親が自動車を貸与した息子からさらに貸与を受けた者が事故を起こした場合につき最高裁昭和53年8月29日判決が父親の運行供用者としての責任を認めていますが、2週間後に返還するとの約束で貸与した友人が返還せず約1か月後に事故を起こした場合につき最高裁平成9年11月27日判決が貸与者の運行供用者としての責任を否定しています。

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労働時間とフレックスタイム制

2017-08-28

労使協定で定める一定の期間(清算期間)につき一定の時間労働することを条件として始業・就業時刻の決定を個々の労働者にまかせる制度をフレックスタイム制(労働基準法32条の3)と言い、管理部門、研究・開発部門などで導入されています。

フレックスタイム制を採用する場合、始業・就業時刻を労働者に決定させることを就業規則等で定め、かつ、過半数組合・過半数代表者との間で労使協定を締結することが必要となります。そして、フレックスタイム制が採用されると時間外労働となるのは労働者が清算期間における法定労働時間を超えて労働する場合となります。

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賃金の調整的相殺

2017-08-21

給与が月の途中に支払われた後において従業員が欠勤した場合に欠勤によって減額される分を使用者が翌月の給与から控除することを賃金の調整的相殺と言いますが、この取り扱いは過払賃金分の不当利得返還請求権と賃金債権との相殺になることから、使用者は原則として賃金の全額を支払わなければならないという「全額払の原則」との関係で適法かどうかが問題となります。

この点、賃金の調整的相殺は、賃金の精算調整にすぎないことから、過払いの時期と相殺の時期が合理的に接近していることや相殺される額が多額にわたらないことを要件として適法とされています(最高裁昭和44年12月18日判決等)。

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取締役の解任決議と解任の訴え

2017-07-31

取締役の解任について、会社法は、株主総会において理由のいかんにかかわらず取締役などの役員を解任することが出来る(同法339条1項)としていますが、解任が安易に行われると取締役の地位が不安定になることから、正当な理由のある場合を除き、取締役は、会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求出来る(同法339条2項)とされています。そこで、取締役の解任において正当な理由が認められるかどうかが問題となった裁判例を見ると、持病が悪化したことから療養に専念するためその有する株式全部を譲渡した元代表取締役を経営陣の一新をはかるため総会決議で解任した事案に関する最高裁昭和57年1月21日判決が当該解任には平成17年の改正前の商法257条1項但書にいう正当な事由がないとしています。

また、違法行為を行ったり不適任であったりする取締役であっても、少数株主が株主総会でこの者を解任することは容易ではないため、株主総会における決議のほか、会社法は、解任の訴えによって取締役を解任することを認めています(同法323条)。

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相続財産と死亡退職金・生命保険金

2017-07-18

死亡を原因として遺族などに支払われるものとして死亡退職金と生命保険金がありますが、これらが相続財産に含まれるかどうかが問題になります。

まず、死亡退職金に関する裁判例を見ると、退職金に関する規程において死亡退職金の第1順位の受給権者は配偶者で配偶者がいるときには子は支給を受けないとされていた事案に関する最高裁昭和55年11月27日判決は、「右規程は、専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者を定めたもので、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、右規程の定めにより直接これを自己固有の権利として取得する」として「右死亡退職金の受給権は相続財産に属さ」ないとしています。また、退職金支給規程の存在しない財団法人の理事長が死亡した事案に関する最高裁昭和62年3月3日判決は、「死亡退職金は」「相続という関係を離れて・・・配偶者であった被上告人個人に対して支給されたものである」とした原判決を維持しています。

次に、生命保険金に関する裁判例を見ると、保険契約者が特定の相続人を受取人として指定している場合について、大審院昭和11年5月13日判決、最高裁昭和40年2月2日判決、最高裁平成16年10月29日判決は、保険契約の効力として、保険金請求権は、相続人の固有財産に属し相続財産にはならないとし、また、保険契約者が受取人を単に相続人と指定している場合について、最高裁昭和48年6月29日判決は、特段の事情がない限り、相続人全員の固有財産となり、相続財産から離脱するとしています。

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