Archive for the ‘企業法務’ Category

企業間での人事異動としての出向と転籍

2017-04-10

企業間での人事異動として出向と転籍があります。出向は、労働者が使用者(出向元)との労働契約を維持しながら他の企業(出向先)の指揮命令に服して労働するもので一定期間が経過した後に復帰するのが通常であるのに対し、転籍は、従来の使用者(転籍元)との労働契約を終了させ新たに別の企業(転籍先)との労働契約関係に入るもので復帰を予定しないのが通常です。そこで、復帰を予定しているかどうかが出向と転籍を区別するひとつの要素となりますが、出向期間の延長によって復帰を予定しない形態のものもあり、この場合、どちらと見るべきかが問題となりますが、最高裁平成15年4月18日判決は、このような場合も元の使用者との労働契約が存続している限り出向にあたるとしています。

出向と転籍は他の企業への人事異動であることから労働者の地位を不安定にしたり労働条件を悪化させることがあり、出向・転籍後の労働条件・法律関係に関する紛争が増えています(東京地裁平成23年6月15日判決、東京地裁平成24年11月14日判決など)。

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2017年3月31日 公布された法令に関するお知らせ

2017-03-31

〇地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律(平成29年法律 第2号)

〇地方交付税法等の一部を改正する法律(平成29年法律 第3号)

〇所得税法等の一部を改正する等の法律(平成29年 第4号)

〇義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律(平成29年法律 第5号)

〇駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法の一部を改正する法律(平成29年法律 第6号)

〇在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律(平成29年法律 第7号)

〇独立行政法人日本スポーツ振興センター法の一部を改正する法律(平成29年法律 第8号)

〇独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律(平成29年法律 第9号)

〇特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律(平成29年法律 第10号)

〇過疎地域自立促進特別措置法の一部を改正する法律(平成29年法律 第11号)

〇津波対策の推進に関する法律の一部を改正する法律(平成29年法律 第12号)

〇関税定率法等の一部を改正する法律(平成29年法律 第13号)

〇雇用保険法等の一部を改正する法律(平成29年法律 第14号)

過去に公布された法令に関するお知らせ 取扱分野>>立法の動向>>会社法等

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退職の意思表示の瑕疵と撤回

2017-03-13

労働者の解雇についてはさまざまな法規制が存在するところ、解雇権の濫用に対する規制(労働契約法16条)を回避するために使用者が労働者に退職を勧奨することが少なくなく、退職の意思表示の瑕疵が問題となります。

退職の意思表示が詐欺・強迫(民法96条)や錯誤(民法95条)に基づくものであればその意思表示には瑕疵があることになります。そこで、東京地裁平成23年3月30日判決は、懲戒解雇の事由がないのに退職しなければ懲戒解雇になると誤信して退職を申し出たことを使用者が知っていた場合に要素の錯誤によってその退職の申し出は無効となるとしています。

また、一方的退職の場合はその意思表示が使用者に到達した時点で解約の効果が生ずるため撤回はできないと考えられますが、退職の意思表示が合意解約の申込みであれば、労働者は、一定期間中これを撤回することができる(大阪高裁平成16年3月30日決定)とされています。

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会計監査人の責任

2017-02-13

会社法2条6号所定の大会社は、会計監査人を置かなければならない(会社法328条)とされています。また、大会社以外の株式会社は、定款で会計監査人を設置することが出来る(会社法326条2項)とされています。

そして、会社法では、会計監査人は、役員等に含まれる(会社法423条1項)とされ、会社に対する責任(会社法423条)と第三者に対する責任(会社法429条)を負うとされています。

かつては会計監査人の損害賠償責任が認められるケースは少なかったようですが、近時の裁判例を見ると、企業による不祥事の影響のためか、大阪地裁平成20年4月18日判決は、会計監査人の会社に対する責任を認めており、また、東京地裁平成21年5月21日判決は、会計監査人の投資家に対する責任を認めています。

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2017年2月8日 公布された法令に関するお知らせ

2017-02-08

〇地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律(平成29年法律 第1号)

過去に公布された法令に関するお知らせ 取扱分野>>立法の動向>>会社法等

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賃金の支払いにおける全額払の原則と相殺

2017-02-06

賃金は労働者の生活を支えるものであることから、労働基準法(労基法)は、賃金が労働者に確実に渡るようにするため賃金の支払いに関するルールを定めており、その賃金の支払いに関するルールのひとつとして全額払の原則(労基法24条1項)があります。

全額払の原則とは、使用者は、法令が認めた例外(給与所得税の源泉徴収や社会保険料の控除)と労使協定による例外を除き、賃金の一部を控除して支払うことは許されずその全額を支払わなければならないというルールです。

そして、この原則との関係で、使用者が労働者に対して有する債権を自働債権とし賃金債権を受働債権として相殺することの可否が問題となるところ、通説・判例(最高裁昭和36年5月31日判決)は、使用者による相殺を24条違反として否定しています。

なお、使用者が労働者との合意によって賃金と相殺する相殺契約について、判例は、全額払の原則は労働者が自由な意思によって同意した場合にまで相殺を禁止する趣旨ではないとしてこれを適法としています(最高裁平成2年11月26日判決)。

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取締役等の役員の任務懈怠による損害賠償責任

2017-01-30

会社において、取締役などの役員がその任務を怠ったときはこれによって生じた損害を賠償する責任を負うとされています(会社法423条)。そして、取締役が違法な行為を積極的に行っていなくても、他の取締役について十分な監視をしなかったという監視義務違反を理由として責任を問われることがあります。

この点に関する裁判例を見ると、大阪地裁平成24年6月29日判決は、土壌環境基準値を大幅に超える六価クロムが検出された土壌埋め戻し材について、その開発、生産の担当でも実行本部の構成員でもない取締役は、担当取締役の職務執行が違法であることを疑わせる特段の事情が存在しない限り、担当取締役の職務執行が適法であると信頼すれば足り、基本的に担当取締役が土壌埋め戻し材の想定される用途に応じた安全性の調査をしたかどうかなどを監視する義務を負うものではないとしています。

これに対し、東京地裁平成24年9月7日判決は、違法な業務執行が行われないよう会社内の業務執行態勢を整備すべき職務上の義務を代表取締役は負っているところ、違法な業務を行う方針が債権管理部長の最終決済により決定されたにとどまり代表取締役はこの件の意思決定に直接関与しなかったことが認められたので、慎重な法令遵守の要求に応えるだけの業務執行態勢が整備されていなかったとして取締役の責任を認めています。


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撮影場所 – 地下鉄内 (ワシントンD.C. コロンビア特別区)

職務等級の引下げ

2017-01-16

企業内での職務を等級に分類して等級ごとに賃金(基本給・職務給)を決める制度を職務等級制度といいます。そして、職務等級の引下げは賃金の不利益変更をもたらすため、使用者による一方的な引下げは許されず、労働者の同意または就業規則上の根拠規定が必要とされます。

そこで、この点が問題となった裁判例を見ると、産前産後休業・育児休業を取得した後に短時間勤務を希望した従業員の職務を軽度のものに変更するのに伴い役割グレードを引下げ、年棒を減額したケースにつき東京高裁平成23年12月27日判決が、職務の変更と役割グレードの引下げが連動せず運用されている場合には、職務の変更が有効であるとしても役割グレードを一方的に引下げることは出来ないと判示しています。

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会社についての破産手続の開始決定と取締役の地位

2017-01-10

会社の取締役の終任事由としては、

がありますが、会社について破産手続開始決定があった場合に取締役がその地位を当然に去るのかどうかという問題については争いがあります。

この点、従来の裁判例は、地位喪失説(最高裁昭和43年3月15日判決)と地位残存説(大審院大正14年1月26日判決、最高裁平成16年6月10日判決)に分かれていましたが、最高裁平成21年4月17日判決は、会社が破産手続開始決定を受けた場合、破産財団についての管理処分権限は破産管財人に帰属しますが、役員の選任又は解任のような破産財団に関する管理処分権限と無関係な会社組織に係る行為等は、破産管財人の権限に属するものではなく、破産者たる会社が自ら行うことが出来るというべきであり、会社につき破産手続開始決定があっても直ちに会社と取締役又は監査役との委任関係は終了するものではないので、破産手続が開始した当時の取締役らは、破産手続の開始によりその地位を当然には失わず、会社組織に係る行為等については取締役らとしての権限を行使出来ると判示しています。


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株式の価格の評価方法

2017-01-02

株式会社においては、株式の内容を変える定款変更に反対する株主に会社に対して株式の買取請求をすることが認められており(会社法116条)、また、譲渡制限のある株式の譲渡の承認を得られなかった株主に会社や指定買取人に株式の買取請求をすることが認められています(会社法140条)が、このような場合にはその売買価格の評価方法が問題となります。

この評価方法としては、

などがありますが、裁判所はこれらの方法を併用しているようで、福岡高裁平成21年5月15日判決は、「各評価方法を概観しただけでも、それぞれ一長一短があることが明らかで、結局は、対象会社の特性に応じた株価算定をするしかないのであるが、ひとつの評価方法だけを選択して算出した場合、上記で指摘された短所が増幅される危険があるので、対象会社に適合すると思われる複数の算定方式を適切な割合で併用することが相当である」と判示しています。


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