Archive for the ‘企業法務’ Category

住宅等の建物に瑕疵がある場合における責任追及

2016-10-24

   住宅等の建物について漏水、有害物質の発生等といった不具合がある場合、契約関係にある当事者間においては瑕疵担保責任(売買契約であれば民法570条、請負契約であれば民法634条以下)を、契約関係にない当事者間においては不法行為責任(民法717条等)を追及することが考えられますが、当該不具合が条文でいうところの「瑕疵」にあたるかどうかが問題となります。

   まず、売買契約における「瑕疵」に関する裁判例を見ると、大審院昭和8年1月14日判決が「売買ノ目的物ガアル性能ヲ有スルコトヲ売主ニオイテ特ニ保証シタルニカカワラズ之ヲ具備セザル場合ハ瑕疵ナルモノトスル」とし、最高裁平成22年6月1日判決が「売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては、売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべき」と判示しています。

   次に、請負契約における「瑕疵」に関する裁判例を見ると、最高裁平成15年10月10日判決が「本件請負契約においては、上告人及び被上告人間で、本件建物の耐震性を高め、耐震性の面でより安全性の高い建物にするため、南棟の主柱につき・・・を使用することが、特に約定され、これが契約の重要な内容になっていたものというべきである。そうすると、この約定に違反して、・・・を使用して施工された南棟の主柱の工事には、瑕疵がある」と判示しています。

   最後に、民法717条の不法行為(土地工作物責任)における「瑕疵」に関する裁判例を見ると、最高裁平成19年7月6日判決が「建物は、その利用者や隣人、通行人等の生命、身体又は財産を危険にさらすことがないよう基本的な安全性を備えていなければならず」とし、最高裁平成23年7月21日判決が「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵とは、居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず、当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する」と判示しています。


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〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
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単元株制度

2016-10-17

 単元株制度とは、定款で決めた一定数を1単元とし、1単元に満たない株式については株主権を制限する制度です。

 単元未満株式には議決権などが認められません。株主に関する事務管理のコストを削減するという観点から株式の単位を調整するものです。

 これと類似するものとして、平成13年に法が改正される前に単位株制度が存在しましたが、単位株制度は株式の単位を引き上げるためのものであるのに対し、単元株制度はそのようなものではないと説明されています。


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再入国の許可・みなし再入国の許可

2016-10-11

   日本に在留する外国人が再び日本に入国する予定で出国するときにあらかじめ再入国の許可を得るという再入国許可制度があります(出入国管理及び難民認定法26条)。そこで、日本に在留する外国人が再び日本に入国する予定で出国する場合、出国前に地方入国管理局に対し申請書、旅券等を提出して再入国許可を申請します。

   また、平成24年7月から、有効な旅券、在留カードを有する中長期在留の外国人が再入国の意図を表明して出国すれば再入国許可を得たものとみなされるみなし再入国許可という制度の運用が開始されました(出入国管理及び難民認定法26条の2)。

   ただし、「1年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある」といった上陸拒否事由に該当する(出入国管理及び難民認定法5条1項4号)場合には、あらかじめ再入国許可を申請して許可を受けることが必要(上陸拒否の特例、出入国管理及び難民認定法5条の2)で、上陸拒否の特例に該当すると判断されるとこの特例に該当する旨の通知書が交付されます。


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株式譲渡の自由と従業員持株制度

2016-09-20

   従業員に対する福利厚生や愛社精神の育成などのために自社の株式を有利な条件で従業員に保有させる従業員持株制度を導入している企業がありますが、株式の自由な譲渡を制限し、退職時には株式を一定額で会社に譲渡すると定められているのが通常であるため、このような譲渡制限契約が株式会社において株式の譲渡は原則として自由(会社法127条)とされていることや公序良俗(民法90条)に違反しないかが問題となります。

   この点につき裁判例を見ると、このような契約を有効としているものがほとんどのようです。従業員が制度の趣旨を了解し毎年8から30%の割合による配当を受けていた事案に関して最高裁平成7年4月25日判決は、退職の際には額面額で取得した株式を額面額で取締役会の指定する者に譲渡するとの合意は、商法204条1項(現会社法127条)や公序良俗に反しないとしています。

   また、日刊新聞を発行する非公開会社の事案に関して最高裁平成21年2月17日判決は、株式の保有資格者を原則として現役の従業員等に限定し、個人的理由により株式を売却する必要が生じたときなどには持株会が額面額で買い戻すとの定めは、その内容に合理性がないとは言えないとして会社法127条や公序良俗に反しないとしています。

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上場会社における一般株主を保護する独立役員

2016-08-29

   独立して経営監督機能を発揮することを期待されるものとして社外取締役が存在しますが、東京証券取引所(東証)では、一般株主保護の見地からより強い独立性を求めるため、上場会社に対し、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役である独立役員を1名以上確保することを企業行動規範の遵守すべき事項としています。また、当該企業行動規範の遵守状況を確認するため、東証への独立役員届出書の提出を求めています。


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撮影場所  –  地下鉄駅内  (ワシントンD.C.  コロンビア特別区)

試用期間の終了時における本採用の拒否

2016-08-08

   労働者を採用するにあたって3ヶ月から6ヶ月程度の試用期間を設定して使用者がその人の従業員としての適格性を評価することがしばしば行われますが、従業員として不適格であると評価されて本採用を拒否された場合、その人が法的救済を受けることが出来るかが問題となります。

   この点につき、最高裁昭和48年12月12日判決は、個々の事案に応じて判断すべきであるとしつつ、当該事案においては、試用期間中も解約権を留保した労働契約が成立しているとした上、本採用の拒否はこの解約権の行使(解雇)にあたるため、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認できる場合にのみ許されるとして本採用の拒否についての法的救済を認めています。

   また、東京高裁平成21年9月15日判決は、約3ヶ月半の営業成績をもって従業員としての適格性を有しないと判定することは出来ず、解雇は無効としています。


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資格外活動と刑事処分・退去強制処分

2016-08-01

   出入国管理及び難民認定法(入管法)の別表第1に記載された「技術・人文知識・国際業務」「技能」などといった専門性のある就労活動をすることを予定する在留資格を認められた外国人による当該在留資格が予定していない就労活動や「留学」「家族滞在」などといった就労を予定していない在留資格を認められた外国人による就労活動(資格外活動)は、刑事処分や退去強制処分の原因となります。

   ①   入管法70条1項4号、73条により、上記のような資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる者には3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金、専ら行っていると明らかに認められないが資格外活動を行った者には1年以下の懲役もしくは禁錮または200万円以下の罰金が科されます(懲役等と罰金が併科されることもあります)。

   ②   資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる場合には、退去強制事由にも該当します(入管法24条4号イ)。また、専ら行っているとまでは認められない場合でも禁錮以上の刑に処せられた場合には、退去強制事由に該当します(入管法24条4号ヘ)。


When a foreign national intends to engage in an activity to operate profit-making businesses or an activity for receiving consideration other than the activity permitted under his/her status of residence, he/she must obtain permission to engage in an activity other than that permitted under* the status of residence previously granted, in advance.

Note:
The following passage was quoted from a Immigration Bureau of Japan web site: (https://www.isa.go.jp/en/).

*See the following ‘Permission to Engage in an Activity Other Than That Permitted by the Status of Residence Previously Granted’ Immigration Bureau of Japan web site: (https://www.isa.go.jp/en/applications/guide/nyuukokukanri07_00045.html) for further information.


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株券の発行

2016-07-18

   株券とは、株主としての地位を有価証券に表章したものです。

   平成16年における改正前の商法では株式会社においては株券を発行することが義務とされていましたが、現在の会社法では定款で定めない限り株券を発行することを義務とされません(会社法214条)。また、株式の振替制度が創設されました(社債、株式等の振替に関する法律)。

   株式の譲渡を容易にし、また、法律関係を明確にするためには株式を表彰させた株券が不可欠であるとかつては考えられていましたが、大量の紙の譲渡の手続きはかえって煩雑である、社債等との統一的な証券決済法制の整備やペーパレス化の必要があるなどといったことがその背景にあります。


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労働者のプライバシー(人格的利益)の保護

2016-07-11

   企業の活動と労働者のプライバシー(人格的利益)が衝突することがありますが、労働者のプライバシー(人格的利益)が重視されるようになっており、労働者のプライバシー(人格的利益)に関する裁判例は増加しています。

   まず、労働者のプライバシー(人格的利益)への干渉に関するものとして、労働者の思想調査のための監視・尾行が問題となった最高裁平成7年9月5日判決や個人的に賃借している不動産を家主に明け渡すよう上司が部下に強要することが問題となった横浜地裁平成2年5月29日判決などがあります。

   また、労働者のプライバシー(人格的利益)にかかわる情報の取得・開示に関するものとして、使用者がHIV抗体検査を行うことが問題となった千葉地裁平成12年6月12日判決やB型肝炎ウィルス感染検査を行うことが問題となった東京地裁平成15年6月20日判決などがあります。


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第三者による取締役の放漫経営についての責任追及

2016-07-04

   取締役などの会社の役員の任務懈怠によって第三者に損害が生じたとしても、会社の役員等と第三者とは直接の法律関係に立たないことから、不法行為が成立する場合を別にして第三者は役員等の責任を追及出来ないことになりそうですが、会社法は、役員等がその職務を行うにつき悪意または重大な過失があったときは連帯して第三者に対して損害賠償責任を負うとしています(429条、430条)。

   そこで、取締役の放漫経営によって会社の資産状態が悪化したことによって会社の債権者などの第三者が損害を被った場合、損害を被った第三者は、放漫経営をしていた取締役に対し、会社法429条等に基づいて損害賠償を請求することが考えられ、裁判例においても、その製品が原因で食中毒が起こったことにより会社が廃業・解散となった事案につき、本条項に基づいて解雇された従業員による元取締役に対する損害賠償請求を認めています(名古屋高裁金沢支部平成17年5月18日判決)。


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