Archive for the ‘企業法務’ Category

債権管理と再度の時効中断

2015-03-30

   企業法務における債権管理として、その管理する債権の時効消滅を防止する必要があります。そして、消滅時効が進行する場合にその完成を阻止して時効消滅を防止する制度として消滅時効の中断が存在し、民法は、①請求②差押え・仮差押え・仮処分③承認を消滅時効の中断事由としています。

   このような消滅時効を中断させる措置を講じることによって、債権の時効消滅を防止することが出来ますが、以上の中断事由によって消滅時効の中断の効力が生じた場合でも、中断事由が終了したときから消滅時効は再び進行しますので、再度の消滅時効の中断が必要になる場合があります。

   この点、債務者に対して金銭の支払いを求める訴訟を提起して給付判決を得ている債権者が消滅時効の中断のために再度訴訟を提起することが可能であるのか疑問が生じますが、判例は「確定判決アリタルトキト雖他ニ時効中断ノ方法ナキトキハ再訴ノ提起ハ之ヲ許スヘキモノトス」として給付判決を得ている場合でも再度訴訟を提起することは可能としています(大審院昭和6年11月24日)。債権の時効管理においては、その消滅時効期間や起算点に加えて、中断事由についても十分な理解が必要となります。


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〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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フランチャイズ契約の解除・更新拒絶

2015-03-23

   フランチャイズ契約が解除や更新の拒絶によって解消されようとする場合、フランチャイザーとフランチャイジーの利害をいかに調整するかが問題となります。そして、従来の裁判例においては契約の解消が認められる場合を制限することによってフランチャイザーとフランチャイジーの利害の調整が図られています。

   すなわち、多くの裁判例においては、フランチャイジーのフランチャイズ契約が存続することへの期待を重視して、契約の解消には正当事由、やむを得ない事由等が必要であるという見解が採用されています。

   フランチャイズ契約の解消が問題となる場合にはさまざまなケースが存在することから、そのケースにおける個別具体的な事情を検討して上記の正当の事由等が認められるかどうかを判断することになります。


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労災事故と遺族年金

2015-03-16

   労災事故の被害者・遺族に対する損害賠償金からそれまでに給付されている障害補償年金や遺族補償年金などをどのように控除するのかという問題があります。

   この問題に関する判例は、賠償金の元本から控除されるとするものと遅延損害金から控除されるとするものとに分かれていましたが、新聞報道によれば、平成27年3月4日の最高裁大法廷判決が「遺族補償年金も、賠償金も、被害者の死亡で失われた利益を埋め合わせる目的が共通している」、遅延損害金は「賠償金の支払いの遅れに対して支払われる利子にあたるもので、目的が明らかに異なる」として、遺族補償年金は、性質が同じ賠償金の元本から控除されるという判断を示しています。

   給付金が賠償金の元本から控除されることになると遅延損害金もそれに応じて減るため、遅延損害金から控除される場合よりも被害者・遺族に対する損害賠償金の額は少なくなります。


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食品表示制度と食品表示法

2015-02-16

   景品表示法の他に食品表示を規制する法としては、日本農林規格法(JAS法)、食品衛生法、健康増進法が存在していましたところ、この食品表示に関連する三法の食品表示に関する規定を統合して一元化するものとして、平成25年6月28日、食品表示法が公布されました。この法律は、食品を接収する際の安全性と一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会の確保を目的として、

などについて規定しています。そして、表示義務の内容は食品表示基準で定めることになっています。新たな食品表示制度に注目する必要があります。


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M&Aの手段としての株式譲渡契約

2015-02-09

   企業がその事業活動を拡大するための手段として企業の買収・合併(M&A)がありますが、その中のひとつが株式譲渡契約です。株式譲渡契約の法的性質は、株式の売買契約ですが、対象となる企業の経営権を取得することがその目的であるため、事業の価値を低下させずに株式を取得することが必要になります。

   そこで、株式譲渡契約においては、株式譲渡の対価やその支払方法だけではなく、表明保証や誓約などについても定めるのが一般的になっています。紛争を防止するために、契約書の条項は適切かつ明確なものになるよう十分留意する必要があります。


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事業者間の公正な競争の確保と不正競争防止法

2015-01-26

   知的財産を規制する法律には特許法・商標法・著作権法などさまざまなものが存在しますが、事業者間の不正な競争を規制することによって知的財産の保護等を図る法が不正競争防止法です。この法律は、①他人の商品・営業の表示として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の表示を使用してその他人の商品・営業と混同させる行為②他人の商品・営業の表示として著名なものを自己の商品・営業として使用する行為③他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為④不正の手段によって営業秘密を取得して自ら使用したり第三者に開示する行為⑤技術的制限手段により視聴・記録・複製が制限されているコンテンツの視聴等を可能にする一定の装置又はプログラムを譲渡等する行為⑥図利加害目的で他人の商品・役務の表示と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有したりそのドメイン名を使用する行為⑦商品・役務やその広告等にその品質・内容等について誤認させるような表示をする行為⑧競争関係にある他人の信用を害する虚偽の事実を告知したり流布する行為⑨パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人が正当な理由なくその商標を使用等する行為を不正競争行為とし、また、①外国の国旗等の商業上の使用②国際機関の標章の商業上の使用③外国公務員等に対する贈賄を条約に基づく禁止行為としています。そして、このような行為に対する民事上の措置として①侵害の停止等の差止請求②損害賠償請求③信用回復措置請求④損害額の推定⑤相当な損害額の認定⑥損害計算のための鑑定⑦相手方の具体的態様の明示義務⑧書類提出命令⑨秘密保持命令⑩尋問の公開停止などについて規定し、また、刑事上の措置として①営業秘密侵害罪等の犯罪②国外犯③法人の処罰などについて規定しています。


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所在不明株主への対応

2015-01-19

   通知または催告が5年以上継続して到達しない所在不明株主について、会社は、以後、通知または催告をしなくてよいとされています(会社法196条1項)が、継続して5年間剰余金の配当が受領されていないという事情がこれに加わるとこの所在不明株主が保有する株式を売却することが出来ます。

   所在不明株主の保有する株式が売却されると、所在不明株主は、株主としての地位を失うことになります。そこで、この制度を利用することによって、会社は、株主の管理コストを削減することが出来ます。また、事業承継やM&Aの際の株主の整理にこの制度を利用することが出来ます。

   上記のような機能がありますので、株主の管理コストの削減や事業承継等が問題となっている会社では、この制度の利用を検討する価値があります。


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不当な表示・景品の規制と景品表示法

2015-01-05

   ホテルなどで料理のメニューに記載されている食材と異なる食材を使用するという「食品偽装」が大きな問題となったことがありますが、このような不当表示を規制する法として不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)が存在します。この法律は、不当な表示や景品を規制することによって一般の消費者の利益を保護しようとするもので、①商品・サービスの品質、規格その他の内容についての不当表示である優良誤認表示と商品・サービスの価格その他の取引条件についての不当表示である有利誤認表示を禁止し、また、②顧客誘引の手段として取引に付随して提供する経済上の利益である景品類の最高額、総額等を規制しています。

   事業者としては、行き過ぎた表現や過剰な景品にならないよう留意して広告等を行うことが必要になります。


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親子会社、兄弟会社と不当な取引制限

2014-12-29

   私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)ではカルテルや入札談合といった不当な取引制限の禁止や企業結合の規制が定められていますが、ある会社が他の会社の議決権の過半数を保有する関係にある親子会社や親会社が同じである兄弟会社の間で事業を再編するために合併・会社分割・事業譲渡や事業の生産、販売拠点の統合等を行おうとする場合、公正取引委員会への届出の要否や不当な取引制限の成否などが問題となります。

   この点、独禁法上の同一の「企業結合集団」内の会社であれば、合併・会社分割・事業譲渡について公正取引委員会への届出は不要とされています。また、学説に争いはありますが、親子会社や兄弟会社の間での事業の生産、販売拠点の統合等については不当な取引制限は成立しないとする見解が有力なようです。

   このような問題を適切に解決するためには、判例・学説に加えて行政処分や公正取引委員会のガイドラインなどの検討も必要になります。


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知的財産制度と「知的財産立国」

2014-12-22

   知的創造活動によって生み出されたものを財産として保護するものが知的財産制度ですが、この知的財産制度を規律する特許法、意匠法、商標法、弁理士法、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律を改正することを内容とする「特許法等の一部を改正する法律」が平成26年4月25日に成立し、同年5月14日に公布されました。改正の主な内容は以下のようなものです。

   日本政府は、世界最高の「知的財産立国」を目指してさまざまな施策を推進しており、この改正もその一環と言えます。


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