Archive for the ‘雇用・労働’ Category

有期契約労働者の更新拒絶(雇止め)の適法性

2025-02-17

 契約期間の定めのある有期労働者は,契約期間が満了するとその契約関係は終了することになりますが,契約の更新が繰り返されているような場合には更新の拒絶(雇止め)についてその適法性が問題となります。

 この有期労働者の雇止めの適法性が問題になった最高裁昭和61年12月4日判決は,「(1)P工場の臨時員は,季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく,その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり,上告人との間においても五回にわたり契約が更新されているのであるから,このような労働者を契約期間満了によつて雇止めにするに当たつては,解雇に関する法理が類推され,解雇であれば解雇権の濫用,信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかつたとするならば,期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。(2)しかし,右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上,雇止めの効力を判断すべき基準は,いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。(3) したがつて,後記のとおり独立採算制がとられている被上告人のP工場において,事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり,その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく,臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には,これに先立ち,期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らな かつたとしても,それをもつて不当・不合理であるということはできず,右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである」と判示しています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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割増賃金の支払方法

2025-02-10

 使用者が労働者に時間外・休日労働をさせた場合,割増賃金を支払うことになっているところ,この割増賃金に代えて一定額の手当を支給すること(手当制)や賃金に含めて定額払いとすること(定額給制)の適法性が問題となることがあります。

 この問題に関して,最高裁平成30年7月19日判決は,「労働基準法37条が時間外労働等について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは,使用者に割増賃金を支払わせることによって,時間外労働等を抑制し,もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに,労働者への補償を行おうとする趣旨によるものであると解される(最高裁昭和44年(行ツ)第26号同47年4月6日第一小法廷判決・民集26巻3号397頁,最 高裁平成28年(受)第222号同29年7月7日第二小法廷判決・裁判集民事256号31頁参照)。また,割増賃金の算定方法は,同条並びに政令及び厚生労働省令の関係規定(以下,これらの規定を「労働基準法37条等」という。)に具体的に定められているところ,同条は,労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまるものと解され,労働者に支払われる基本給や諸手当にあらかじめ含めることにより割増賃金を支払うという方法自体が直ちに同条に反するものではなく(前掲最高裁第二小法廷判決参照),使用者は,労働者に対し,雇用契約に基づき,時間外労働等に対する対価として定額の手当を支払うことにより,同条の割増賃金の全部又は一部を支払うことができる。そして,雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは,雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか,具体的事案に応じ,使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容,労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきである」と判示しています。


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時間外・休日労働についての割増賃金

2025-02-03

 所定労働時間を延長して働かせることを時間外労働,所定休日に労働させることを休日労働というところ,労働者に時間外・休日労働をさせた場合,使用者は,通常の労働時間または労働日の2割5分以上5割以下の範囲内で割増賃金を支払わなければならないとされています(労働基準法37条1項,2項)。

 この割増賃金に相当する部分と通常の労働時間の賃金に相当する部分かの判別が問題となった最高裁平成6年6月13日判決は,「本件請求期間に上告人らに支給された前記の歩合給の額が,上告人らが時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものではなく,通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことからして,この歩合給の支給によって,上告人らに対して法三七条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難なものというべきであり,被上告人は,上告人らに対し,本件請求期間における上告人らの時間外及び深夜の労働について,法三七条及び労働基準法施行規則一九条一項六号の規定に従って計算し た額の割増賃金を支払う義務があることになる」と判示しています。


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整理解雇の際における解雇を回避するための努力,説明・協議

2025-01-27

 使用者が経営不振の打開や経営の合理化を進めるために余剰人員の削減を目的とする解雇を整理解雇と言いますが,この整理解雇が認められるためには解雇を回避するための努力や説明・協議などが必要とされています。

 この解雇を回避するための努力等が認められるかが問題となった最高裁昭和58年10月27日判決は,「原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては,上告人において,園児の減少に対応し保母二名を人員整理することを決定すると同時に,被上告人ほか一名の保母を指名解雇して右人員整理を実施することを決定し,事前に,被上告人を含む上告人の職員に対し,人員整理がやむをえない事情などを説明して協力を求める努力を一切せず,かつ,希望退職者募集の措置を採ることもなく,解雇日の六日前にな つて突如通告した本件解雇は,労使間の信義則に反し,解雇権の濫用として無効である,とした原審の判断は,是認することができないものではなく,原判決に所論の違法はない」と判示しています。


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解雇が無効となった場合の賃金と中間利益

2025-01-20

 解雇が無効と判断された場合,その労働者には解雇期間中の賃金請求権が認められることになりますが,その労働者が解雇期間中に他の収入(中間利益)を得ていた場合にはこの中間利益の処理が問題となります。

 この問題について,最高裁昭和62年4月2日判決は,「使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは,使用者は右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益(以下「中間利益」という。)の額を賃金額から控除することができるが,右賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることは禁止されているものと解するのが相当である。したがって,使用者が労働者に対して有する解雇期間中の賃金支払債務のうち平均賃金の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきであり,右利益の額が平均賃金の4割を超える場合には,更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(労基法12条4項所定の賃金)の全額を対象として利益額を控除することが許されるものと解せられる」と判示しています。

 

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成果主義における年棒制

2025-01-13

 近年においては成果主義賃金・人事制度が普及しているところ,1年の賃金を労働者の成果・能力に即して支払う年棒制を導入している企業が存在します。

 この年棒制における給与額の決定が問題となった東京高裁平成20年4月9日判決は,期間の定めのない労働契約における年棒制について,年棒額決定のための成果・業績評価基準,年棒額決定手続,減額の限界の有無,不服申立手続等が制度化され就業規則に明示され,かつ,その内容が公正な場合に限り,使用者に評価決定権があると判示しています。


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休日の振替

2025-01-06

 労働基準法35条は,1項で「使用者は,労働者に対して,毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない」,2項で「前項の規定は,四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない」として週休制の原則を定めています。そして,労働契約上休日と定められた日を労働日に変更し,代わりに前後の労働日を休日に変更することを休日振替と言います。

 この休日の振替がゼネスト当日との間で行われたことが問題となった横浜地裁昭和55年3月28日判決は,交通ゼネストのため従業員の出勤がきわめて困難と予想されたため,就業規則の定めによりその直後の休日とゼネスト当日とを振り替える措置は適法であると判示しています。


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休業手当と使用者の帰責事由

2024-12-30

 労働基準法26条は,「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては,使用者は,休業期間中当該労働者に,その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」として,使用者の帰責事由に基づく休業の場合に使用者は平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があることを規定しています。そして,ストライキ不参加者の休業手当請求権が問題となった事案に関し,最高裁昭和62年7月17日判決は,本条の「使用者の責めに帰すべき事由」は,取引における過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念であり,民法536条2項よりも広く,使用者側に起因する経営,管理上の障害を含むとした上で,ストライキは組合が自らの主体的判断とその責任において行ったもので,使用者側に起因する経営,管理上の障害とはいえないと判示しています。


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休憩の自由利用の原則

2024-12-23

 労働基準法34条は,1項で使用者は,労働時間が六時間を超える場合においては少なくとも四十五分,八時間を超える場合においては少なくとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」,2項で「前項の休憩時間は,一斉に与えなければならない」,3項で「使用者は,第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない」として,休憩時間の原則について規定しています。

 この休憩時間の自由な利用と施設管理権の関係が問題となった最高裁昭和52年12月13日判決は,休憩時間の自由な利用が企業施設内で行われる場合には,使用者の企業施設の管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることができず,局所内における演説,集会,貼紙,掲示,ビラ配布等を局所管理者の許可にかからせることは合理的な制約であると判示しています。


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労働時間の1週40時間・1日8時間の原則

2024-12-16

 労働基準法32条は,1項で「使用者は,労働者に,休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて,労働させてはならない」,2項で「使用者は,一週間の各日については,労働者に,休憩時間を除き一日について八時間を超えて,労働させてはならない」として,1週40時間・1日8時間制の原則を規定しています。

 この労働時間に実作業に従事していない不活動仮眠時間に該当するかどうかが問題となった最高裁平成14年2月28日判決は,本法上の労働時間に該当するかどうかは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたかどうかによって決まる。本件仮眠時間においては,労働契約上の義務として,仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応することを義務づけられているので,本件仮眠時間は全体として本条の労働時間あると判示しています。


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