Archive for the ‘雇用・労働’ Category

賃金と家族手当・住宅手当、ストック・オプション

2017-07-10

   労働基準法(労基法)11条が「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定めていることから、労基法上の「賃金」は「労働の対償」ということになりますが、家族手当や住宅手当のようなものも一定の要件のもとで「賃金」にあたるとされており(東京地裁平成13年1月29日判決)、「労働の対償」という要件は緩やかに考えられているようです。

   そこで、会社が取締役や従業員に対しあらかじめ設定された価格で自社株を購入する権利を付与するストック・オプションも労基法上の「賃金」にあたると考えられそうですが、東京地裁平成24年4月10日判決は、利益性を欠くとして、ストックオプションは、労基法上の「賃金」にあたらないとしています。


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労働条件の変更と労働契約法

2017-06-26

労働契約の継続中に合併、分社化といった企業の再編や定年延長、人事成果主義の導入といった人事制度の変更、経営の悪化などが生じた場合に労働条件の変更が必要になることがあり、

その方法として、

①個々の労働者との合意により変更する方法

②労働組合と団体交渉をして労働協約を締結して変更する方法

③就業規則の変更があります。

そして、労働契約法は、合意原則(同法3条1項、8条)を基本として「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更するすることはできない」と規定(同法9条)した上で、「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」と規定(同法10条)しています。

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配転命令権・出向命令権の濫用

2017-06-12

企業においては人事異動として、労働者の職種・職務内容または勤務場所を同一企業内において変更する配置転換(配転)や出向先の指揮命令に服して労働することになる出向が行われることがありますが、その配転命令権・出向命令権は無条件に認められるものではなく権利の濫用と評価されないことが必要となります(労働契約法3条5項、14条)。

1 配転命令権

まず、①業務上の必要性を欠いた配転命令は、権利の濫用とされます。この点最高裁昭和61年7月14日判決は、業務上の必要性について「労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化」などがこれにあたると述べています。

また、②労働者に均衡を失するほどの不利益を及ぼすときも権利の濫用とされます。労働者の職種保持の利益・キャリア形成の利益を著しく害する配転命令は権利の濫用と評価されることがあります(東京地裁平成22年2月8日判決)。また、勤務地の変更に関して、上記最高裁判決は、「労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる」場合に権利の濫用となるとしています。

2 出向命令権

出向命令も配転命令と同様に権利の濫用と評価されないことが必要とされます。そして、この点に関し、労働契約法14条は、「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする」と規定しています。

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成果主義賃金と公正な人事考課

2017-05-15

近年においては従来の年功賃金に代わって労働者の年齢・勤続年数にかかわらずその能力・成果を基準にして賃金処遇を行う成果主義賃金・人事が普及するに伴い、人事考課に関するトラブルが増加しています。

人事考課は、使用者が有する人事権の一部とされ、使用者の裁量に委ねられるのが基本ですが公正であることが必要と考えられていて、東京地裁平成16年3月31日判決は、成果主義による降給についてその有効性を認めた上「降給が決定される過程に合理性があること、その過程が従業員に告知されてその言い分を聞く等の公正な手続が存することが必要であ」ると判示し、また、東京地裁平成19年5月17日判決は、人事考課制度自体は合理性を有するとした上、問題となった人事考課は客観的評価基準に反して主観的・恣意的に行われたとして人事考課権の濫用を認めています。

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過重労働に起因する労働災害と損害賠償

2017-05-01

労働災害を救済する制度として労災補償制度や労災保険がありますが、これらは労働者・遺族の被害のすべてを補償するものではありません。

そこで、労働契約法5条が「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定していることから、労働者が過重労働によって疾病・死亡・自殺に至ったような場合、労働者やその遺族は、使用者に対し、この安全配慮義務違反を理由として損害賠償責任を追及することがあり、このような請求に関する裁判例を見ると、大阪高裁平成15年5月29日判決、神戸地裁平成20年4月10日判決、大阪高裁平成23年5月25日判決などが使用者の安全配慮義務違反を認めています。

なお、前記の大阪高裁平成23年5月25日判決では、労働者の生命・健康を損なうことがないような体制の構築・長時間労働の是正方策に関する任務を懈怠したとして、使用者である会社とは別に会社の取締役にその損害賠償責任を認めています。

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退職後の守秘義務と競業避止義務

2017-04-17

退職した労働者が在職中に得た企業秘密を使用したり競業する企業に就職した場合には退職後の守秘義務・競業避止義務違反としてトラブルになることがあります。

① 退職後の守秘義務が問題となった裁判例を見ると、労働者が退職後に設立した会社に製品の溶接技術を開示した事案に関する大阪地裁平成10年12月22日判決は、この溶接技術を不正競争防止法(不競法)上の営業秘密と認めた上、その後の取引奪取行為と併せて不正競争として営業の差止と損害賠償請求を認め、また、東京地裁平成14年8月30日判決は、誓約書に基づく守秘義務違反として損害賠償請求を認めていますが、東京地裁平成24年3月13日判決は、使用者が適切な秘密管理を講じていないとして守秘義務違反を否定しています。

次に、

② 退職後の競業避止義務が問題となった裁判例を見ると、上記の大阪地裁平成10年12月22日判決は、営業秘密の使用・開示の差止請求を認めつつ、義務の内容が広範に過ぎることや期間が不当に長期にわたることなどを理由にして公序違反として競業避止義務を無効としていますが、東京地裁平成20年11月18日判決は、不競法上の営業秘密の保護を内容とする競業避止義務を有効としています。

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企業間での人事異動としての出向と転籍

2017-04-10

企業間での人事異動として出向と転籍があります。出向は、労働者が使用者(出向元)との労働契約を維持しながら他の企業(出向先)の指揮命令に服して労働するもので一定期間が経過した後に復帰するのが通常であるのに対し、転籍は、従来の使用者(転籍元)との労働契約を終了させ新たに別の企業(転籍先)との労働契約関係に入るもので復帰を予定しないのが通常です。そこで、復帰を予定しているかどうかが出向と転籍を区別するひとつの要素となりますが、出向期間の延長によって復帰を予定しない形態のものもあり、この場合、どちらと見るべきかが問題となりますが、最高裁平成15年4月18日判決は、このような場合も元の使用者との労働契約が存続している限り出向にあたるとしています。

出向と転籍は他の企業への人事異動であることから労働者の地位を不安定にしたり労働条件を悪化させることがあり、出向・転籍後の労働条件・法律関係に関する紛争が増えています(東京地裁平成23年6月15日判決、東京地裁平成24年11月14日判決など)。

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日本の企業に雇用されている外国人の労働契約

2017-04-03

企業活動の国際化に伴い日本においても外国人労働者が増加しており、日本国内にある日本企業に雇用されている外国人の労働契約にどの国の法律が適用されるのか(準拠法の決定)が問題となります。

この問題に関して、法の適用に関する通則法(通則法)7条は、「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による」と規定していますので、労働契約の準拠法について当事者による明示の法選択があればそれによることになりますが、明示の法選択がない場合に通則法は、当該法律行為に最も密接な関係がある地の法(最密接関連地法)による(通則法8条1項)とした上、労働契約の特例として通則法12条3項で契約の履行地である労務給付地法を最密接関連地法と推定し、労務給付地法を特定できない場合には労働者を雇い入れた事業所の所在地の法である雇入事業所所在地法を最密接関連地法と推定することにしています。

この結果、当事者による明示の法選択がない場合、外国人労働者の労務給付地・雇入事業所所在地が日本であれば日本法が準拠法と推定されることになります。

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退職の意思表示の瑕疵と撤回

2017-03-13

労働者の解雇についてはさまざまな法規制が存在するところ、解雇権の濫用に対する規制(労働契約法16条)を回避するために使用者が労働者に退職を勧奨することが少なくなく、退職の意思表示の瑕疵が問題となります。

退職の意思表示が詐欺・強迫(民法96条)や錯誤(民法95条)に基づくものであればその意思表示には瑕疵があることになります。そこで、東京地裁平成23年3月30日判決は、懲戒解雇の事由がないのに退職しなければ懲戒解雇になると誤信して退職を申し出たことを使用者が知っていた場合に要素の錯誤によってその退職の申し出は無効となるとしています。

また、一方的退職の場合はその意思表示が使用者に到達した時点で解約の効果が生ずるため撤回はできないと考えられますが、退職の意思表示が合意解約の申込みであれば、労働者は、一定期間中これを撤回することができる(大阪高裁平成16年3月30日決定)とされています。

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労働者の能力不足・成績不良による解雇

2017-03-06

労働者の能力不足・成績不良・適格性の欠如は、労働者の解雇の理由となり、就業規則において「労働能率が劣り、向上の見込みがないとき」は解雇理由になるなどと規定されることがありますが、労働義務・付随義務違反といった債務不履行があるだけでは足りず、その事実が雇用を終了させてもやむをえないと認められる程度に達していることが必要で、能力不足等が解雇を正当化するのはそれが労働契約の継続を期待し難いほど重大な程度に達している場合に限られるとされています。

そこで、裁判例を見ると、配転や研修の機会を与えても能力・適格性が向上せず改善の余地がない場合は雇用の継続を期待し難いことから解雇は相当とされています(東京地裁平成15年12月22日判決、東京高裁平成25年3月21日判決)が、①問題となる能力・成績は容易に是正し難いほど不良であることを要し、また、たとえこのことが認められるとしても②指導・教育や職種転換(配転・降格)によって能力を活用する余地があればそれらの措置によって雇用を継続する努力が求められ(東京高裁平成25年4月24日判決)、東京地裁平成11年10月15日判決は、「労働能率が劣り、向上の見込みがないこと」という解雇理由による解雇が許されるのは、著しく労働能率が劣り向上の見込みがない場合に限られるところ人事考課の低さだけではこれに該当せず、教育・指導や配置転換の措置を尽くしていないとして解雇を無効としています。

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