Archive for the ‘雇用・労働’ Category
年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱い
労基法附則136条は、「使用者は、・・・有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と規定しているところ、何が「不利益な取扱い」として許されないのか、また、そのような行為が労基法39条1項違反や民法1条2項の公序に反するものとして無効となるのかが問題となります。
そこで、この問題に関する裁判例を見ると、賞与の計算において年休の取得日を欠勤日として扱うことについて、最高裁平成4年2月18日判決は、許されないとしていますが、翌月における勤務予定表の作成後に請求した年休をタクシー運転手の精皆勤手当の算定で欠勤扱いすることについて、最高裁平成5年6月25日判決は、その措置の「趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年次有給休暇の取得に対する事実上の抑止力」等の事情を総合考慮して、この権利の行使を抑制しこの権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものでない限り、公序に反するとはいえないとしています。
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交通事故などによる死亡と葬儀費・墓碑建立費・香典等
交通事故などで被害者が死亡した場合にその葬儀関係費の処理が問題となります。まず、葬儀費に関する裁判例を見ると、合理的であると考えられる範囲で損害賠償請求としてその支払請求を認めています(最高裁昭和43年10月3日判決等)。
また、墓碑建立費や仏壇購入費についても損害賠償請求としてその支払請求を認めています(最高裁昭和44年2月28日判決等)。なお、香典については、死亡事故を契機とした収入であることから損害から控除されるように思われますが、裁判例を見ると、損害の填補という性質を有しないとして損害額からその額は控除されない(最高裁昭和43年10月3日判決)とされているようです。
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労災事故・不法行為の被害者になった外国人の逸失利益・慰謝料
日本に滞在する外国人の増加に伴い外国人が労災事故や不法行為の被害者となるケースが多くなっているようですが、このような場合の逸失利益や慰謝料をどのように算定するのかということが問題になります。
まず、逸失利益が問題になった裁判例を見ると、最高裁平成9年1月28日判決が「一時的に我が国に滞在し将来出国が予定される外国人の逸失利益を算定するに当たっては、当該外国人がいつまで我が国に居住して就労するか、その後はどこの国に出国してどこに生活の本拠をおいて就労することになるか、などの点を証拠資料に基づき相当程度の蓋然性が認められる程度に予測し、将来のあり得べき収入状況を推定すべきことな」り、「そうすると、予測されうる我が国での就労可能期間ないし滞在可能期間内は我が国での収入等を基礎として逸失利益を算定するのが合理的ということができる」「我が国における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、就労の態様等の事実的及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である」と判示しています。
また、慰謝料に関する裁判例を見ると、東京高裁平成13年1月25日判決が「死亡慰謝料の算定にあたっては、日本人と外国人とを問わず、その支払いを受ける遺族の生活の基盤がどこにあり、支払われた慰謝料がいずれの国で消費されるのか、そして当該外国と日本との賃金水準、物価水準、生活水準等の経済的事情の相違を考慮せざるを得ない」と判示しましたが、その後、日本人と同様の取り扱いをした大阪地裁平成20年1月31日判決や横浜地裁平成20年1月24日判決などが出ています。
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交通事故の後発的事情(被害者の自殺、病死)による死亡
交通事故による後遺障害が残った被害者が後発的事情によって死亡した場合にこの後発的事情が損害の算定においてどのように評価されるかが問題となることがあります。
この点、後遺障害が残った被害者が自殺した場合について、最高裁平成5年9月9日判決は、「本件事故の態様が・・・に大きな精神的衝撃を与え、しかもその衝撃が長い年月にわたって残るようなものであったこと、その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となって、・・・が災害神経症状態に陥り、更にその状態から抜け出せないままうつ病になり、その改善をみないまま自殺に至ったこと、自らに責任のない事故で傷害を受けた場合には災害神経症状態を経てうつ病に発展しやすく、うつ病にり患した者の自殺率は全人口の自殺率と比較してはるかに高いなど原審の適法に確定した事実関係を総合すると、本件事故と・・・の自殺との間に相当因果関係があるとした上、自殺には同人の心因的要因も寄与しているとして相応の減額をして死亡による損害額を定めた原審の判断は、正当として是認することができ」ると判示しています。
一方、後遺障害が残った被害者が病死した場合について、最高裁平成8年4月25日判決は、「交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益の算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではない」と判示しています。
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休職命令の要件
労働者の就労を一時禁止または免除することを休職といい、これには
①労働者の疾病・負傷を理由とする傷病休職、
②傷病以外の事故を理由とする事故欠勤休職、
③刑事事件で起訴された者を休職させる起訴休職、
④留学等のための自己都合休職、
⑤出向期間中の出向休職
などがありますが、使用者の一方的な休職命令による休職についてはその要件が問題となります。
そこで、この点が問題になった裁判例を見ると、傷病休職に関して、東京高裁平成7年8月30日判決が、傷病によって通常勤務に相当の支障が生ずることを要するとしています。
また、起訴休職に関して、東京地裁平成11年2月15日判決が、傷害事件で起訴された者に対する11か月の無給起訴休職につき処分無効としています。
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労働時間とフレックスタイム制
労使協定で定める一定の期間(清算期間)につき一定の時間労働することを条件として始業・就業時刻の決定を個々の労働者にまかせる制度をフレックスタイム制(労働基準法32条の3)と言い、管理部門、研究・開発部門などで導入されています。
フレックスタイム制を採用する場合、始業・就業時刻を労働者に決定させることを就業規則等で定め、かつ、過半数組合・過半数代表者との間で労使協定を締結することが必要となります。そして、フレックスタイム制が採用されると時間外労働となるのは労働者が清算期間における法定労働時間を超えて労働する場合となります。
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賃金の調整的相殺
給与が月の途中に支払われた後において従業員が欠勤した場合に欠勤によって減額される分を使用者が翌月の給与から控除することを賃金の調整的相殺と言いますが、この取り扱いは過払賃金分の不当利得返還請求権と賃金債権との相殺になることから、使用者は原則として賃金の全額を支払わなければならないという「全額払の原則」との関係で適法かどうかが問題となります。
この点、賃金の調整的相殺は、賃金の精算調整にすぎないことから、過払いの時期と相殺の時期が合理的に接近していることや相殺される額が多額にわたらないことを要件として適法とされています(最高裁昭和44年12月18日判決等)。
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取締役の解任決議と解任の訴え
取締役の解任について、会社法は、株主総会において理由のいかんにかかわらず取締役などの役員を解任することが出来る(同法339条1項)としていますが、解任が安易に行われると取締役の地位が不安定になることから、正当な理由のある場合を除き、取締役は、会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求出来る(同法339条2項)とされています。そこで、取締役の解任において正当な理由が認められるかどうかが問題となった裁判例を見ると、持病が悪化したことから療養に専念するためその有する株式全部を譲渡した元代表取締役を経営陣の一新をはかるため総会決議で解任した事案に関する最高裁昭和57年1月21日判決が当該解任には平成17年の改正前の商法257条1項但書にいう正当な事由がないとしています。
また、違法行為を行ったり不適任であったりする取締役であっても、少数株主が株主総会でこの者を解任することは容易ではないため、株主総会における決議のほか、会社法は、解任の訴えによって取締役を解任することを認めています(同法323条)。
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賃金と家族手当・住宅手当、ストック・オプション
労働基準法(労基法)11条が「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定めていることから、労基法上の「賃金」は「労働の対償」ということになりますが、家族手当や住宅手当のようなものも一定の要件のもとで「賃金」にあたるとされており(東京地裁平成13年1月29日判決)、「労働の対償」という要件は緩やかに考えられているようです。
そこで、会社が取締役や従業員に対しあらかじめ設定された価格で自社株を購入する権利を付与するストック・オプションも労基法上の「賃金」にあたると考えられそうですが、東京地裁平成24年4月10日判決は、利益性を欠くとして、ストックオプションは、労基法上の「賃金」にあたらないとしています。
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最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)
当事務所内で咲く花
労働条件の変更と労働契約法
労働契約の継続中に合併、分社化といった企業の再編や定年延長、人事成果主義の導入といった人事制度の変更、経営の悪化などが生じた場合に労働条件の変更が必要になることがあり、
その方法として、
①個々の労働者との合意により変更する方法
②労働組合と団体交渉をして労働協約を締結して変更する方法
③就業規則の変更があります。
そして、労働契約法は、合意原則(同法3条1項、8条)を基本として「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更するすることはできない」と規定(同法9条)した上で、「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」と規定(同法10条)しています。
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