Archive for the ‘個人法務’ Category
虚偽の嫡出子・認知の届出と養子縁組
夫婦が自分たちの子でない者を嫡出子として届け出たり、父が自分の子でない者を認知して届け出た場合、そのような嫡出子届・認知届は虚偽のものとして無効ですが、事実上親子として生活している場合、そのような届出を養子縁組の届出とみなすことができないかという問題があります。
この問題に関する裁判例を見ると、最高裁昭和25年12月28日判決、最高裁昭和49年12月23日判決、最高裁昭和50年4月8日判決は、そのような届出について養子縁組届とみなすことを認めていませんが、両親の相続をめぐる確執から、実子がその両親及び実子と長年にわたって子として生活してきた者に対して提起した親子関係不存在確認の訴えについて最高裁平成18年7月7日判決は、「実親子関係の不存在を確定することが著しく不当な結果をもたらすものといえるときには、当該確認請求は権利の濫用に当たり許されない」と判示しています。
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借地・借家に関する特約と消費者契約法
借地・借家契約における特約については借地借家法上の強行法規や民法上の一般原則(公序良俗、信義則、権利濫用)との関係の他、消費者契約法との関係が問題となります。
この点に関する裁判例を見ると、建物の賃貸借契約における自然損耗等についての原状回復義務を賃借人に負担させる旨の特約を同法10条により無効とした大阪高裁平成16年12月17日判決、更新料を支払うとの約定を同法10条より無効とした大阪高裁平成21年8月27日判決、更新料特約及び敷引特約をいずれも同法10条により無効とした京都地裁平成21年7月23日判決などがありましたが、最高裁平成23年3月24日判決が敷引特約について敷引金の額が高額に過ぎると評価されない限り同法10条に該当せず有効であるとし、また、最高裁平成23年7月15日判決が更新料支払特約について更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、同法10条に該当せず有効であるとしています。
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借家契約における迷惑行為防止特約
マンションやアパートなどの賃貸借契約において、賃借人とその他当該建物を使用する者による近隣の居住者等に対し迷惑をかける行為を禁止する旨の特約が定められ、このような特約の違反が契約解除の原因として問題となることがあります。
このような特約に基づく契約の解除が問題となった裁判例を見ると、賃借人がショッピングセンターの秩序を乱したりすることを特約で禁止している場合に賃借人が他の賃借人と争ったことから賃貸人が賃借人に注意をしたところ、賃借人が賃貸人に対し暴言を吐いて暴行を加える等の事情があるときに賃貸人は契約を無催告で解除できるとした最高裁昭和50年2月20日判決、賃借人が共同生活上の秩序を乱し近隣の迷惑となる行為をしたことを理由とする契約解除を認めた東京地裁平成10年5月12日判決などがあります。
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借地契約における賃貸人による契約の更新拒絶
借地契約において、賃貸人が期間満了時に借地契約を終了させるためには借地権者からの更新請求や土地の使用の継続に対し遅滞なく異議を述べる必要があり、この異議がなければ借地契約は法定更新されることになります。
そこで、この異議が問題となった裁判例を見ると、契約の締結された時期が当事者双方に曖昧になっていた事案について、最高裁昭和39年10月16日判決は、期間満了から1年半を経過した後に述べた異議につき借地法6条の遅滞なく述べられた異議にあたるとし、また、期間が満了したと考えて異議を述べたが審理の結果賃貸人が主張するより後である訴訟が継続している間に期間が満了するに至った事案について、最高裁昭和56年3月13日判決は、その期間満了後の土地の使用継続についても異議が黙示的に述べられていると解することができ、別個に異議を述べる必要はないとしています。
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交通事故などによる死亡と葬儀費・墓碑建立費・香典等
交通事故などで被害者が死亡した場合にその葬儀関係費の処理が問題となります。まず、葬儀費に関する裁判例を見ると、合理的であると考えられる範囲で損害賠償請求としてその支払請求を認めています(最高裁昭和43年10月3日判決等)。
また、墓碑建立費や仏壇購入費についても損害賠償請求としてその支払請求を認めています(最高裁昭和44年2月28日判決等)。なお、香典については、死亡事故を契機とした収入であることから損害から控除されるように思われますが、裁判例を見ると、損害の填補という性質を有しないとして損害額からその額は控除されない(最高裁昭和43年10月3日判決)とされているようです。
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有責配偶者からの離婚請求
当事者の婚姻関係が破綻している場合、裁判によって離婚を請求することが考えられるところ、婚姻関係の破綻について責任のある側(有責配偶者)からの離婚請求が認められるのかという問題があります。
この問題に関する裁判例としては、「踏んだり蹴ったり判決」と呼ばれる最高裁昭和27年2月19日判決が破綻について責任のある者からの離婚請求を認めないという考え方(消極的破綻主義)を採用したとされていますが、この判決が出た後、破綻についての責任が双方にある場合に責任の小さい者からの請求を認めるとした最高裁昭和30年11月24日判決や破綻後の異性との関係は有責行為にならないとした最高裁昭和46年5月21日判決を経て、最高裁昭和62年9月2日判決は、「有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚請求を許容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない」と判示しています。
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遺言書の偽造・変造等による相続欠格
民法891条は、相続人となる資格を失う相続欠格事由につき定めているところ、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿がこの相続欠格事由のひとつとされています(同条5号)。
そこで、この遺言書の偽造等が問題となった裁判例をみると、最高裁昭和56年4月3日判決は、「被相続人の遺言書がその方式を欠くために無効である場合又は有効な遺言書についてされている訂正がその方式を欠くために無効である場合に、相続人がその方式を具備させることにより有効な遺言書としての外形又は有効な訂正としての外形を作出する行為は、同条5号にいう遺言書の偽造又は変造にあたるけれども、相続人が遺言者たる被相続人の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨で右の行為をしたにすぎないときは、右相続人は同号所定の相続欠格者にはあたらない」と判示しています。
また、最高裁平成9年1月28日判決は、「相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法891条5号所定の相続欠格者には当たらない」「遺言書の破棄又は隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、これを遺言に関する著しく不当な干渉行為ということはできず、このような行為をした者に相続人となる資格を失わせるという厳しい制裁を課することは、同条5号の趣旨に沿わないからである」と判示しています。
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親権者の子に対する監護教育権と医療行為への同意
親権者は、子供の利益を図るために子の監護及び教育を行う権利を有し、また、義務を負う(民法820条)ところ、この監護教育の権利・義務に基づいて子に対する医療行為について同意する権限が認められると考えられていますが、親権者の宗教上の理由による子に対する手術への同意拒否は親権の濫用に当たるとして児童相談所長が親権喪失宣告を申し立てた事例につき名古屋家裁平成18年7月25日審判は、手術の拒否に合理的理由を認めることはできないとして親権者の職務の執行を停止して職務代行者として選任した弁護士の同意によって手術を行わせています。また、手術をしなければ数ヶ月以内に死亡するが手術により視力が失われるとして親権者が子に対する手術への同意を拒否した事案につき津家裁平成20年1月25日審判も、親権の濫用の可能性が高いとして同様の対応をしています。
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身寄りや資力のない人による成年後見制度の利用
成年後見制度を利用する場合、費用を負担できる資力や申立てを行ってくれる親族などが必要になりますが、費用の負担が難しい人や身寄りのいない人が少なくありません。そこで、4親等内の親族がいない場合、市区町村長が申し立てをすることができるとされているところ、国民年金等を受給して特別養護老人ホームに入所している人につき成年後見を開始して社会福祉士を成年後見人に選任した事案につき非訟事件手続法26条により手続費用を市長に負担させている(大阪家裁平成14年5月8日審判)一方で、弁護士を成年後見人に選任した事案につき本人の資産内容を考慮して非訟事件手続法28条により手続費用を申立人である区長ではなく本人に負担させています(東京家裁平成14年5月14日審判)。
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離婚後における親子の面会交流の方法
離婚により親権者・監護者でなくなった親が子と会ったり手紙・電話等で交流することを面会交流と言います(民法766条)が、父母の葛藤が激しかったり信頼関係の再構築が十分でない場合などには家庭裁判所調査官の指導(大阪家裁昭和54年11月5日審判)、弁護士の付き添い(名古屋家裁平成2年5月31日審判)などといった第三者の指導や立会いがその条件とされることがあります。また、子が別居している親と会いたがらない場合などには直接会うのではなく手紙、写真、ビデオの送付などによる間接的な交流にとどめる(浦和家裁平成12年10月20日、京都家裁平成18年3月31日等)ことがあります。
なお、面会交流の合意が履行されない場合に家庭裁判所による履行勧告や強制執行が問題となるところ、強制執行につき大阪高裁平成14年1月15日決定は、「面接交渉義務を負う者が、正当の理由がないのに義務を履行しない場合には、面接交渉権を行使できる者は、特別の事情のない限り、間接強制により、権利の実現を図ることができる」とし、最高裁平成25年3月28日決定は、間接強制が認められるために必要な給付内容の特定につき、面会交流の日時または頻度、各回の面会交流時間の長さ等が具体的に定められていることとしています。
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