Archive for the ‘お知らせ’ Category
高齢者などによる縁組意思を欠いた養子縁組
養子縁組は、養親となるべき者と養子となるべき者との合意に基づく養子縁組届によって行われます(民法799条)が、財産的な法律関係を作出することのみを目的とする場合には縁組意思を欠くものとして養子縁組は無効とした裁判例(大阪高裁平成21年5月15日判決)があります。
また、判断能力が低下した高齢者の財産獲得を目的とする養子縁組がみられるところ、認知症を発症した高齢者の養子縁組を無効とした裁判例として東京高裁平成21年8月6日判決、名古屋家裁平成22年9月3日判決があります。
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交通事故などの不法行為による年金受給者の死亡
交通事故などの不法行為によって年金受給者が死亡した場合にその相続人が加害者に対し、この年金受給権の喪失を逸失利益として損害賠償請求できるかという問題があります。そこで、この問題に関する裁判例をみると、
① 地方公務員等共済組合法に基づく退職年金について、最高裁平成5年3月24日判決が「相続人は、加害者に対し、退職年金の受給者が生存していればその平均余命期間に受給することができた退職年金の現在額を同人の損害として、その賠償を求めることができる」と判示しています。
② 普通恩給および国民年金法に基づく国民年金(老齢年金)について最高裁平成5年9月21日判決が「普通恩給は、当該恩給権者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであるとともに、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても、同一の機能を営むものと認められるから」「普通恩給は、その逸失利益として相続人が相続によりこれを取得する」「国民年金(老齢年金)もまた、その目的・趣旨は右と同様のものと解されるから」「国民年金は、その逸失利益として相続人が相続によりこれを取得し、加害者に対してその賠償を請求することができる」と判示しています。
③ 国民年金法に基づく障害基礎年金と厚生年金保険法に基づく障害厚生年金について最高裁平成11年10月22日判決が「原則として、保険料を納付している被保険者が所定の障害等級に該当する障害の状態になったときに支給されるものであって・・・程度の差はあるものの、いずれも保険料が拠出されたことに基づく給付としての性格を有している。したがって」「その相続人は、加害者に対し」「障害年金の現在額を同人の損害として、その賠償を求めることができる」と判示しています。
④ 厚生年金保険法に基づく遺族年金について最高裁平成12年11月14日判決が「遺族厚生年金は、受給権者自身の生存中その生活を安定させる必要を考慮して支給するものであるから」「逸失利益には当たらない」と判示しています。
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交通事故によるペットの死傷と慰謝料・治療費の賠償
交通事故によって人が死傷した場合、財産的損害の賠償や精神的損害についての慰謝料が問題となりますが、飼っているペットが死傷した場合にも治療費の賠償や精神的損害についての慰謝料が問題となります。
そこで、この問題に関する裁判例を見ると、追突事故により飼い犬が負傷して後肢麻痺、排尿障害が残った事案につき、名古屋高裁平成20年9月30日判決が「愛玩動物のうち家族の一員であるかのように遇されているものが不法行為によって負傷した場合の治療費等については、生命を持つ動物の性質上、必ずしも当該動物の時価相当額に限られるとするべきではなく、当面の治療や、その生命の確保、維持に必要不可欠なものについては、時価相当額を念頭に置いた上で、社会通念上、相当と認められる限度において、不法行為との間に因果関係のある損害に当たる」として治療費と慰謝料の請求を認めています。
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交通事故の後発的事情(被害者の自殺、病死)による死亡
交通事故による後遺障害が残った被害者が後発的事情によって死亡した場合にこの後発的事情が損害の算定においてどのように評価されるかが問題となることがあります。
この点、後遺障害が残った被害者が自殺した場合について、最高裁平成5年9月9日判決は、「本件事故の態様が・・・に大きな精神的衝撃を与え、しかもその衝撃が長い年月にわたって残るようなものであったこと、その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となって、・・・が災害神経症状態に陥り、更にその状態から抜け出せないままうつ病になり、その改善をみないまま自殺に至ったこと、自らに責任のない事故で傷害を受けた場合には災害神経症状態を経てうつ病に発展しやすく、うつ病にり患した者の自殺率は全人口の自殺率と比較してはるかに高いなど原審の適法に確定した事実関係を総合すると、本件事故と・・・の自殺との間に相当因果関係があるとした上、自殺には同人の心因的要因も寄与しているとして相応の減額をして死亡による損害額を定めた原審の判断は、正当として是認することができ」ると判示しています。
一方、後遺障害が残った被害者が病死した場合について、最高裁平成8年4月25日判決は、「交通事故の被害者が事故に起因する傷害のために身体的機能の一部を喪失し、労働能力の一部を喪失した場合において、いわゆる逸失利益の算定に当たっては、その後に被害者が死亡したとしても、右交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、右死亡の事実は就労可能期間の認定上考慮すべきものではない」と判示しています。
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企業における内部統制システムと内部統制構築義務
会社法は、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務ならびに当該株式会社およびその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」と規定(同法348条3項4号、362条4項6号)するところ、この体制は、一般に「内部統制システム」と呼ばれており、裁判例においても内部統制構築義務が問題とされています。
そこで、この義務に関する裁判例を見ると、大阪地裁平成12年9月20日判決が「健全な会社経営を行うためには、目的とする事業の種類、性質等に応じて生じる各種のリスク・・・の状況を正確に把握し、適切に制御すること、すなわちリスク管理が欠かせず、会社が営む事業の規模、特性等に応じたリスク管理体制(いわゆる内部統制システム)を整備することを要する」「取締役は、取締役会の構成員として、また、代表取締役又は業務担当取締役として、リスク管理体制を構築すべき義務を負い、さらに、代表取締役及び業務担当取締役がリスク管理体制を構築すべき義務を履行しているか否かを監視する義務を負うのであり、これもまた、取締役としての善管注意義務及び忠実義務の内容をなすものというべきである」と判示しています。また、金融取引により会社が多額の損害を被った事案につき最高裁平成22年12月3日判決は、この取引を担当しない取締役は原則的に内部統制構築義務を負うのみであるが、この取引を担当する取締役は、会社が特に定める取引に関する内部的行動規範・取扱規程を遵守しなければならないとしています。
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交通事故と医療過誤が競合する場合の共同不法行為
複数の者が加害者として交通事故に関与する場合、共同不法行為(民法719条)の成否が問題となるところ、このような類型のひとつとして交通事故と医療過誤が競合する場合があります。
そこで、この問題に関す裁判例を見ると、最高裁平成13年3月13日判決が交通事故により放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの事故後搬入された病院において適切な治療が施されていれば高度の蓋然性をもって被害者を救命することができたと認定された事案について、「本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが、・・・死亡という不可分の1個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって、本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから、被害者との関係においては、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。」と判示して共同不法行為の成立を認めた上、結果の発生に対する寄与度による責任の限定を否定しています。
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休職命令の要件
労働者の就労を一時禁止または免除することを休職といい、これには
①労働者の疾病・負傷を理由とする傷病休職、
②傷病以外の事故を理由とする事故欠勤休職、
③刑事事件で起訴された者を休職させる起訴休職、
④留学等のための自己都合休職、
⑤出向期間中の出向休職
などがありますが、使用者の一方的な休職命令による休職についてはその要件が問題となります。
そこで、この点が問題になった裁判例を見ると、傷病休職に関して、東京高裁平成7年8月30日判決が、傷病によって通常勤務に相当の支障が生ずることを要するとしています。
また、起訴休職に関して、東京地裁平成11年2月15日判決が、傷害事件で起訴された者に対する11か月の無給起訴休職につき処分無効としています。
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車の貸主やレンタカー業者の運行供用者としての責任
自動車による人身事故について自動車損害賠償保障法(自賠法)3条が「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)の損害賠償責任を定めているところ、有償ないし無償で自動車を貸し出した第三者が事故を起こした場合における所有者の運行供用者としての責任が問題となります。
1 レンタカー業者から自動車をレンタルした借受人が事故を起こした場合についての裁判例を見ると、約定の返還時間の約55時間後に借受人が事故を起こした場合につき和歌山地裁平成6年12月20日判決が業者の運行供用者としての責任を認め、また、約定の返還時間の6時間余り後に借受人の同居人が事故を起こした場合につき神戸地裁平成10年3月19日判決が業者の運行供用者としての責任を認めていますが、返還予定日から25日経過した後に借受人から無断転貸を受けた者が事故を起こした場合につき大阪地裁昭和62年5月29日判決が業者の運行供用者としての責任を否定しています。
2 所有者から自動車を無償で借り受けた借受人が事故を起こした場合についての裁判例を見ると、自動車販売会社が販売した中古車の整備を終えるまでの間に提供した代車で顧客の被用者が事故を起こした場合につき最高裁昭和46年11月16日判決が自動車販売会社の運行供用者としての責任を認め、また、父親が自動車を貸与した息子からさらに貸与を受けた者が事故を起こした場合につき最高裁昭和53年8月29日判決が父親の運行供用者としての責任を認めていますが、2週間後に返還するとの約束で貸与した友人が返還せず約1か月後に事故を起こした場合につき最高裁平成9年11月27日判決が貸与者の運行供用者としての責任を否定しています。
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労働時間とフレックスタイム制
労使協定で定める一定の期間(清算期間)につき一定の時間労働することを条件として始業・就業時刻の決定を個々の労働者にまかせる制度をフレックスタイム制(労働基準法32条の3)と言い、管理部門、研究・開発部門などで導入されています。
フレックスタイム制を採用する場合、始業・就業時刻を労働者に決定させることを就業規則等で定め、かつ、過半数組合・過半数代表者との間で労使協定を締結することが必要となります。そして、フレックスタイム制が採用されると時間外労働となるのは労働者が清算期間における法定労働時間を超えて労働する場合となります。
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賃金の調整的相殺
給与が月の途中に支払われた後において従業員が欠勤した場合に欠勤によって減額される分を使用者が翌月の給与から控除することを賃金の調整的相殺と言いますが、この取り扱いは過払賃金分の不当利得返還請求権と賃金債権との相殺になることから、使用者は原則として賃金の全額を支払わなければならないという「全額払の原則」との関係で適法かどうかが問題となります。
この点、賃金の調整的相殺は、賃金の精算調整にすぎないことから、過払いの時期と相殺の時期が合理的に接近していることや相殺される額が多額にわたらないことを要件として適法とされています(最高裁昭和44年12月18日判決等)。
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