Archive for the ‘不動産’ Category
建物賃貸人・賃借人の地位の移転
建物の所有者が賃貸人である場合、建物の所有権が移転するとこれに伴って賃貸人の地位も新所有者に承継されるのが原則ですが、旧賃貸人に差し入れられた敷金は未払賃料に充当され、その残額が新賃貸人に承継されます(最高裁昭和44年7月17日判決等)。そして、この建物所有権の移転及び賃貸人の地位の移転について、当事者間において特別の定めがない限り、賃借人の承諾は不要と解されています。
これに対し、賃借人の地位の移転については、これを可能とする特別の定めがない限り、賃貸人の承諾が必要と解されており、賃貸人の承諾を得ずになされた賃借権の譲渡は賃貸人に対して効力を生ぜず、また、契約解除の理由となります。なお、賃貸人は、無断で譲り受けた者に対し、契約を解除しなくても建物の明渡を請求することができます(最高裁昭和26年5月31日判決)。
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借地契約における賃貸人による契約の更新拒絶
借地契約において、賃貸人が期間満了時に借地契約を終了させるためには借地権者からの更新請求や土地の使用の継続に対し遅滞なく異議を述べる必要があり、この異議がなければ借地契約は法定更新されることになります。
そこで、この異議が問題となった裁判例を見ると、契約の締結された時期が当事者双方に曖昧になっていた事案について、最高裁昭和39年10月16日判決は、期間満了から1年半を経過した後に述べた異議につき借地法6条の遅滞なく述べられた異議にあたるとし、また、期間が満了したと考えて異議を述べたが審理の結果賃貸人が主張するより後である訴訟が継続している間に期間が満了するに至った事案について、最高裁昭和56年3月13日判決は、その期間満了後の土地の使用継続についても異議が黙示的に述べられていると解することができ、別個に異議を述べる必要はないとしています。
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借家契約における賃借人の原状回復義務
賃貸借が終了した場合、賃借人は、賃貸人に対し、原状回復義務を負うことになりますが、賃貸借は賃借物を使用収益することを目的とするものであるため、通常の使用収益により生ずる減耗(通常損耗)については原状回復義務を負わないと考えられているところ、賃借人が通常損耗についても原状回復義務を負うとする特約が認められるのかという問題があります。
この問題に関する裁判例を見ると、自然損耗等についての原状回復費用を賃借人に負担させる特約について、消費者契約法10条により無効とした大阪高裁平成16年12月17日判決がありますが、最高裁平成17年12月16日判決は「賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負うためには、賃借人が補修費を負担することになる上記損耗の範囲につき、賃貸借契約書自体に具体的に明記されているか、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識して、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」としてこのような特約が認められる要件を判示しています。
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遺言による遺産分割の方法の指定・相続分の指定・遺贈
遺言をすることによって、遺産分割の方法の指定や相続分の指定、財産上の利益を与える遺贈をすることが出来ますが、「Aという財産を甲に、Bという財産を乙に相続させる」といった遺言が行われた場合、それが遺贈か相続分の指定か遺産分割の方法の指定なのかが問題となることがあります。
この点に関する裁判例を見ると、東京地裁昭和41年6月25日判決は、特別の事情のない限り遺産分割の方法の指定であって遺贈ないし相続分の指定ではないと判示しています。
また、最高裁平成3年4月19日判決は、遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特別の事情のない限り、遺贈と解すべきではなく、特定の相続人に特定の財産を取得させるべきことを指示する遺産分割の方法を定めたものであり、もし、その特定の財産の価額が特定の相続人の法定相続分の割合を超えるときは、相続分の指定を伴う遺産分割の方法を定めたものと解するのが相当であると判示しています。
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住宅等の建物に瑕疵がある場合における責任追及
住宅等の建物について漏水、有害物質の発生等といった不具合がある場合、契約関係にある当事者間においては瑕疵担保責任(売買契約であれば民法570条、請負契約であれば民法634条以下)を、契約関係にない当事者間においては不法行為責任(民法717条等)を追及することが考えられますが、当該不具合が条文でいうところの「瑕疵」にあたるかどうかが問題となります。
まず、売買契約における「瑕疵」に関する裁判例を見ると、大審院昭和8年1月14日判決が「売買ノ目的物ガアル性能ヲ有スルコトヲ売主ニオイテ特ニ保証シタルニカカワラズ之ヲ具備セザル場合ハ瑕疵ナルモノトスル」とし、最高裁平成22年6月1日判決が「売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては、売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべき」と判示しています。
次に、請負契約における「瑕疵」に関する裁判例を見ると、最高裁平成15年10月10日判決が「本件請負契約においては、上告人及び被上告人間で、本件建物の耐震性を高め、耐震性の面でより安全性の高い建物にするため、南棟の主柱につき・・・を使用することが、特に約定され、これが契約の重要な内容になっていたものというべきである。そうすると、この約定に違反して、・・・を使用して施工された南棟の主柱の工事には、瑕疵がある」と判示しています。
最後に、民法717条の不法行為(土地工作物責任)における「瑕疵」に関する裁判例を見ると、最高裁平成19年7月6日判決が「建物は、その利用者や隣人、通行人等の生命、身体又は財産を危険にさらすことがないよう基本的な安全性を備えていなければならず」とし、最高裁平成23年7月21日判決が「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵とは、居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず、当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する」と判示しています。
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2016年6月3日 公布された法令に関するお知らせ
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律(平成28年法律 第52号)
○総合法律支援法の一部を改正する法律(平成28年法律 第53号)
○刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律 第54号)
○国家戦略特別区域法の一部を改正する法律(平成28年法律 第55号)
○宅地建物取引業法の一部を改正する法律(平成28年法律 第56号)
○酒税法及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律(平成28年法律 第57号)
○中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律(平成28年法律 第58号)
○電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法等の一部を改正する法律(平成28年法律 第59号)
○特定商取引に関する法律の一部を改正する法律(平成28年法律 第60号)
○消費者契約法の一部を改正する法律(平成28年法律 第61号)
○情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律(平成28年法律 第62号)
○児童福祉法等の一部を改正する法律(平成28年法律 第63号)
○発達障害者支援法の一部を改正する法律(平成28年法律 第64号)
○障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律(平成28年法律 第65号)
○確定拠出年金法等の一部を改正する法律(平成28年法律 第66号)
○平成二十八年熊本地震災害関連義援金に係る差押禁止等に関する法律(平成28年法律 第67号)
○本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成28年法律 第68号)
過去に公布された法令に関するお知らせ 取扱分野>>立法の動向>>会社法等
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借地借家法上の建物
借地借家法は、借地権との関係では「建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権」を、借家権との関係では「建物の賃借権」を対象としていることから、同法の適用の有無を判断する際には建物にあたるかどうかや建物所有の目的が認められるかどうかが問題になります。
建物にあたる典型的なものとしては、住宅が思い浮かびますが、店舗、事務所なども建物にあたるとされています(最高裁平成4年2月6日判決)。
一方、地面に丸太を立て自動車に雨がかからない程度にトタンで覆った掘立式の車庫は、建物にあたらないとした裁判例(東京地裁昭和43年10月23日判決)があります。
また、建物所有の目的が認められるのは当該建物の所有が借地使用の主目的である場合とされ、ゴルフ練習場としての借地において事務所用建物を所有することを計画していたとしても、当該建物の所有は従たる目的にすぎないとして借地借家法の適用を否定した判例(最高裁昭和42年12月5日判決)があります。
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賃貸借契約におけるいわゆる事故物件
賃貸借契約の対象となっているマンション等が事故物件であった場合、このことの契約への影響や賃貸人の告知義務などが問題となります。
この点、事故が発生した場所が大都市か地方都市か、単身用か家族用か、事故の状況、付近住民の反応、報道などによって異なると考えられますが、大都市部にある賃料の月額が4万8000円の借上社宅で社員に事故があった事案に関する東京地裁平成13年11月29日判決は、2年程度で心理的瑕疵が消失するとして賃料の減額を2年間認めています。
また、大都市部にある賃料の月額が6万円の単身用のワンルームで賃借人に事故があった事案に関する東京地裁平成19年8月10日判決は、近所付き合いが相当程度希薄である、世間の耳目を集めるような特段の事情が認められないことなどを考慮して賃料の減額を3年間認めつつ、事故後に賃借した人が極短期間で退去したといった特段の事情が無い場合には、更に当該部屋を賃貸するにあたり、賃貸人に賃借希望者に対し事故があったことを告知する義務は無いとし、また、当該部屋の両隣・階下については、感じる嫌悪感の程度にかなりの差があることや大都市部のワンルームであることなどを考慮して、これらの部屋を新たに賃貸するにあたり、事故があったことを告知する義務は無いとしています。
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都心部における不動産の境界と価格
高齢社会の進行に伴い、高齢者の方々からのご自身の財産を子供らに譲る方法に関する御相談が増加傾向にありますが、この財産を譲る方法の中に生前贈与というものがあります。
もっとも、不動産や株式などその価格の評価が問題となる財産の贈与では税金などとの関係でトラブルが生じる可能性があります。特に都心部における不動産が対象となる場合はその評価額が高額になることが多いため深刻なトラブルになることがあります。
そこで、このようなトラブルを避けるため、当事務所では土地に関しては事前に土地家屋調査士を利用した測量を行うことを勧めています。測量によって境界を確認し確実な持ち分と価格を割り出すことにより、トラブルを回避することが出来ます。
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内縁の相手方による借家権の承継
借家人となっている内縁関係にある夫(ないし妻)が死亡した場合、その内縁関係における相手方は、死亡した者の相続人になりませんが、立法や判例により家屋に居住する利益を保護されています。
① 死亡した者に相続人がいない場合
借地借家法36条1項は、居住用建物の賃借人が相続人無くして死亡した場合、その当時事実上夫婦関係にあった同居者はその賃借人たる地位を承継するとしていますので、内縁関係にある相手方は、死亡した者の賃借人たる地位を承継し、借家に居住し続けることが出来ます。
② 死亡した者に相続人がいる場合
この場合について立法はありませんが、判例は、内縁の相手方が相続人の賃借権を援用することを認めており、借家の明渡しを請求されても、内縁の相手方は、相続人の借家権を援用してその請求を拒否出来るとしています(最高裁昭和42年2月21日判決)。
また、賃貸人と相続人が賃貸借契約を合意解除しても、当該解除は信義誠実の原則に反しないような特段の事由がある場合のほかは援用者に対抗出来ないとした裁判例(東京地裁昭和63年4月25日判決)や相続人による借家権の放棄は共同生活を営んでいた者との関係でその生活を覆すもので無効とした裁判例(大阪地裁昭和38年3月30日判決)があります。
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