Archive for the ‘社会福祉’ Category
医療機関の説明義務―インフォームドコンセント
医療機関による診療行為を受けるにあたっては、適切な情報を与えられた上で患者が決定する(インフォームドコンセント)ため、診療過程を通して、医療機関は、患者に対し、説明をした上で診療行為ごとに同意をえる必要があると考えられています。
この医療機関に要求される説明の内容や方法について、患者が宗教上の理由から輸血を拒否したことが問題となった事案に関して、最高裁平成12年2月29日判決が、手術に際して輸血する可能性があることを医師は説明しなければならないとしています。
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医療過誤を判断する基準としての医療水準
医療過誤においては医療機関に課される注意義務の程度が問題となるところ、この程度を判断する基準として医療水準という概念が存在します。
この医療水準に関する裁判例を見ると、最高裁平成7年6月9日判決は、「新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情が存しない限り、右知見は右医療機関にとっての医療水準である」と判示しています。
なお、この医療水準から要求される注意義務を軽減する特約の効力に関する裁判例として、東京高裁昭和42年7月11日判決は、手術の結果について異議を申し立てないとする誓約書についてその効力を否定しています。
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医師の診療拒否による法的責任
契約については契約締結の自由が認められるとされているところ、医師については「診療に従事する医師は、診察治療の要求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とされ、いわゆる応召義務が規定されている(医師法19条1項)ことから、診療拒否の法的責任が問題となります。
そこで、医師や医療機関の診療拒否についての法的責任が問題になった裁判例を見ると、神戸地裁平成4年6月30日判決が診療拒否について不法行為上の過失が推定されることと医療機関の不法行為に基づく責任が肯定される場合があることを判示しています。
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金融商品取引業者を規制する金融商品取引法
金融商品取引法は、金融商品取引業者の行為ルールと監督を定める法です。証券取引法を改正したもので、以下の事項を規定しています。
- 事故確認制度(同法39条)
- 適合性の原則(同法40条)
金融商品取引業者は、「金融商品取引について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けるおそれがあること」のないよう求められています。
- 記載事項の説明義務(金融商品取引業等に関する内閣府令117条1項)
目論見書、契約締結前の書面の交付の義務付けに関連するものです。
- 不実、誤解を生じさせる表示の禁止(同法38条1項1号、157条2号)
- 断定的判断の提供等による契約の締結の勧誘の禁止(同法38条1項2号)
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特商法が定める書面交付義務とクーリングオフ
一定の販売手法や特殊な取引を規制する法として特定商取引に関する法律(特商法)があります。そして、この特商法の規制対象である訪問販売等において法定の書面が交付されていない場合やその記載事項に欠落・虚偽がある場合、クーリングオフが可能とされています。
そこで、このような場合にあたるとしてクーリングオフを認めた裁判例を見ると、アポイントメントセールスによりダイヤを購入した事案につき、大阪地裁平成12年3月6日判決が、書面の提示をもって交付に換えることはできない、後日の送付は書面の交付にあたらないとしてクーリングオフを認めています。また、申込書に記載が欠けているがそれらが記載された注文書の控えを交付した事案につき、東京地裁平成12年3月6日判決が、「所定の記載要件は厳格に解すべきであり、記載要件が欠けている場合に、他の文書の記載をもってこれを補完することができると解すべきでない」としてクーリングオフを認めています。
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不動産の借主による迷惑行為
不動産の賃貸借、使用貸借における借主の迷惑行為によってトラブルになることがあります。
借主の迷惑行為が問題となった裁判例を見ると、野鳩の餌付け・飼育による障害に基づく損害の賠償請求等が問題となった事案について、東京地裁平成7年11月21日判決は、「区分所有者の共同の利益に反する行為であり、その行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難な場合に当たる」として損害賠償請求を認めています。
また、騒音等の迷惑行為による契約の解除、競売請求等が問題となった事案について、東京地裁平成17年9月13日判決は、被告が「本件専有部分等を所有し続けることは、必然的に本件マンションの区分所有者の共同の利益に反することになる」「区分所有権及び敷地利用権の競売以外の方法によってはその障害を除去して共用部分の維持を図ることが困難である」として競売請求等を認めています。
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相続放棄の申述と意思表示の瑕疵
相続人は、相続を承認するか放棄するかを選ぶことができますが、この相続の放棄につき錯誤等があった場合にその効力が否定されるかどうかが問題となります。
この点、最高裁昭和40年5月27日判決は、「相続放棄は家庭裁判所がその申述を受理することによりその効力を生ずるものであるが、その性質は私法上の財産法上の法律行為であるから、これにつき民法95条の規定の適用があることは当然である」と判示してその効力が否定される可能性を認め、また、福岡高裁平成10年8月26日判決は、「相続放棄の申述に動機の錯誤がある場合、当該動機が家庭裁判所において表明されていたり、相続の放棄により事実上および法律上の影響を受ける者に対して表明されているときは、法律行為の要素の錯誤として相続放棄は無効になる」として要素の錯誤があった場合は無効になると判示しています。
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成年被後見人が他人に損害を与えた場合における成年後見人の責任
責任無能力者が第三者に与えた損害について、責任無能力者を監督する義務を負う者が賠償責任を負う(民法714条1項)とされているところ、成年被後見人が第三者に損害を与えた場合に成年後見人がこの責任を負うかどうかが問題となります。
そこで、この問題に関する裁判例を見ると、鉄道駅構内に立ち入って轢死した認知症高齢者の遺族に対し鉄道会社が損害賠償を請求した事案について、最高裁平成28年3月1日判決は、「保護者や成年後見人であることだけでは直ちに法定の監督義務者に該当するということはできない」とした上で、「法定の監督義務者に該当しない者であっても、責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行いその態様が単なる事実上の監督を超えているなどその監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、衡平の見地から法定の監督義務を負う者と同視してその者に対し民法714条に基づく損害賠償責任を問うことができるとするのが相当であり、このような者については、法定の監督義務者に準ずべき者として、同条1項が類推適用される」と判示しています。
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祭祀(さいし)承継者の決定
祭祀承継者について民法897条は、被相続人が指定することができ、この指定が無い場合には慣習により定まる、慣習も無い場合には家庭裁判所が定めるとしているところ、家庭裁判所はどのようにして祭祀承継者を決めるかが問題となります。
そこで、この問題に関する裁判例を見ると、東京高裁平成18年4月19日判決が、「承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係、承継候補者と祭具等との間の場所的関係、祭具等の取得の目的や管理等の経緯、承継候補者の祭祀主催の意思や能力、その他一切の事情・・・を総合して判断すべきであるが、祖先の祭祀は今日もはや義務ではなく、死者に対する慕情、愛情、感謝の気持ちといった心情により行われるものであるから、被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって、被相続人に対し上記のような心情を最も強く持ち、他方、被相続人からみれば、同人が生存していたとすれば、おそらく指定したものであろう者をその承継者と定めるのが相当である」と判示しています。
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相続放棄の熟慮期間の起算点
民法915条1項は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に」「承認又は放棄をしなければならない」と定めているところ、この3箇月の熟慮期間の起算点が問題となります。
この点、最高裁昭和59年4月27日判決は、熟慮期間は、原則として、相続開始の原因たる事実およびこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から起算すべきとした上で、「右各事実を知った場合であっても、右各事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、・・・熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識したとき又は通常これを認識しうべき時から起算すべき」と判示しています。
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