交通事故などの不法行為による年金受給者の死亡
交通事故などの不法行為によって年金受給者が死亡した場合にその相続人が加害者に対し、この年金受給権の喪失を逸失利益として損害賠償請求できるかという問題があります。そこで、この問題に関する裁判例をみると、
① 地方公務員等共済組合法に基づく退職年金について、最高裁平成5年3月24日判決が「相続人は、加害者に対し、退職年金の受給者が生存していればその平均余命期間に受給することができた退職年金の現在額を同人の損害として、その賠償を求めることができる」と判示しています。
② 普通恩給および国民年金法に基づく国民年金(老齢年金)について最高裁平成5年9月21日判決が「普通恩給は、当該恩給権者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであるとともに、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても、同一の機能を営むものと認められるから」「普通恩給は、その逸失利益として相続人が相続によりこれを取得する」「国民年金(老齢年金)もまた、その目的・趣旨は右と同様のものと解されるから」「国民年金は、その逸失利益として相続人が相続によりこれを取得し、加害者に対してその賠償を請求することができる」と判示しています。
③ 国民年金法に基づく障害基礎年金と厚生年金保険法に基づく障害厚生年金について最高裁平成11年10月22日判決が「原則として、保険料を納付している被保険者が所定の障害等級に該当する障害の状態になったときに支給されるものであって・・・程度の差はあるものの、いずれも保険料が拠出されたことに基づく給付としての性格を有している。したがって」「その相続人は、加害者に対し」「障害年金の現在額を同人の損害として、その賠償を求めることができる」と判示しています。
④ 厚生年金保険法に基づく遺族年金について最高裁平成12年11月14日判決が「遺族厚生年金は、受給権者自身の生存中その生活を安定させる必要を考慮して支給するものであるから」「逸失利益には当たらない」と判示しています。
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