取締役の責任を限定する経営判断の原則

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2016-12-26

 取締役による経営判断の結果として会社が損害を被った場合に善管注意義務違反として損害賠償責任を負うことがありますが、経営の専門家である取締役が会社のために誠実に判断したがその判断が裏目に出た場合まで責任を問うことになると取締役の経営を萎縮させるおそれがあります。そこで、アメリカでは裁判所が取締役の判断を尊重する「経営判断の原則」が認められており、我が国においてもこの考え方を採用すべきとする見解が存在します。

 そこで、経営判断に関して取締役の責任が問題となった近時の裁判例を見ると、最高裁平成22年7月15日判決は、事業再編計画の策定は、完全子会社とすることのメリットの評価を含め、将来予測にわたる経営上の専門的判断に委ねられているとし、この場合における株式取得の方法や価格についても取締役が株式の評価額のほか取得の必要性、株式の取得を円滑に進める必要性の程度等をも総合考慮して決定することが出来、その決定の過程、内容に著しく不合理な点がない限り、取締役としての善管注意義務に違反するものではないとして取締役の責任を否定しています。

 これに対し、名古屋高裁平成25年3月28日判決は、金銭を払い込んだ会社の経営破綻によって償還を受けられなかったという事案につき、気分ひとつで約定された償還を履行しないことがあり得るような人物が支配する会社に対し、何らの担保もなくして更に15億円ものコマーシャルペーパーを引き受けることは、およそ経営の意思決定に参画する者の行動としては自殺的行為としか評価出来ないと言って取締役の責任を認めています。


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撮影場所 – リバティ・ベル・センター (ペンシルバニア州フィラデルフィア)

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