商品先物取引における諸問題

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2013-09-18

商品先物取引における諸問題

1. 適合性原則違反

   商品先物取引は、証拠金による差金決済で多額の取引ができるものであるため、極めて投機性が高く、膨大な損失を被る危険性を含んでいます。また、商品先物取引の制度や仕組みは複雑で理解が難しいですし、その相場動向を予想することも非常に難しいです。

   そのため、商品先物取引を行う人には、商品先物取引の制度や仕組み、先物取引特有の危険性などを理解し、相場の動向に関する情報を入手して、これに基づいて判断し外務員に対し的確に指示できる能力が必要となりますし、さらに、投資資金を失ったとしても家庭生活や事業経営に支障を来たさないだけの資金的余裕を有していること(適合性)が求められます。そこで、業者は、これらの適合性を備えていない人に対し取引を勧誘することを禁止されています。

2. 説明義務違反・断定的判断の提供

   商品先物取引の勧誘にあたっては、取引の仕組み、特徴、危険性の存在と程度等を分かりやすく説明し、相手方の十分な理解を得なければならず、業者には十分かつ具体的な説明をする義務(説明義務)が課されてます。また、商品先物取引における取引銘柄の価格は、需要と供給の関係だけでなく、政治動向、為替の変動、投機筋の思惑等多様な要素が複雑に絡み合って形成される極めて不確実なものですので、業者は、「今買えば絶対に儲かります」などと言う断定的判断の提供を禁止されています。

3. 新規委託者保護義務違反

   商品先物取引は、その相場を予想することが非常に難しく、また、膨大な損失を被る危険性を含むものであるため、業者には、取引経験のない新規委託者が不測かつ多額の損失を被らないよう、新規委託者を保護する義務が課されています。

4. 一任売買・無断売買の禁止

   委託者が外務員に対し取引について指示をする場合、商品、限月、取引年月日、場節、指し値または成り行きの別(価格)、枚数、建ち落ちの別を具体的に指示する必要があり、業者が、これらについての委託者からの具体的な指示なくして取引を行うことは禁止されています。また、業者が委託者に無断で取引を行うことは当然禁止されています。

5. 仕切拒否・仕切り回避

   業者が、取引を終了させることに応じず、取引の決済をしないこと(仕切り拒否)や取引終了に関する指示を撤回させ、取引を継続させること(仕切り回避)は違法となります。

6. 両建勧誘禁止

   既存の建玉に対し同一商品の反対の玉を建玉する両建は、新規建玉・既存の建玉と新規建玉の維持に証拠金が必要で、さらに委託手数料の負担が倍増します。また、両建をしてなお利益を得るには、相場変動を見極め、各建玉を各限月までに適時決済しなければならないことから、単に売りあるいは買い一方の建玉をする場合よりも仕切りのタイミングについて難しい判断が要求されることになりますので、商品先物取引に関する高度な知識と経験、相場観が必要となります。加えて、両建は、損失の拡大が防止され、後日その回復ができるかのように誤解させ、因果玉が放置されているにもかかわらず、一方の建玉を仕切ってあたかも利益が出たように錯覚させてしまい、委託者の損失の拡大を防ぐ機会を奪いかねません。

   他方、業者にとっては、両建によって委託者が取引を継続する結果手数料収入を確保し得るという利点があります。このようなことから、業者には、委託者の習熟度や理解度に応じて、両建の意味や機能、証拠金が必要になる等の不利益、他の対処方法を十分に説明する義務が課せられており、両建を勧誘することを禁止されています。

7. 特定売買・過当取引

   特定売買とは、「直し」、「途転」、「両建」、「日計り」、「不抜け」と呼ばれる売買のことです。既存の建玉を仕切って、同日内に再度同じ内容で新規建玉することを「直し」、既存の建玉を仕切って、同日内にその反対の玉を新規建玉することを「途転」、既存の建玉に対し、同一商品の反対の玉を建玉することを「両建」、新規に建玉し、同日内にその建玉を仕切ることを「日計り」、売買により利益が出ているにもかかわらず、委託手数料を差し引くと損失になってしまうことを「不抜け」といいます。「直し」は、既存の建玉を仕切らずに維持した場合と建玉の内容が変わらず、委託者にとっては単に手数料分を損することになり、「途転」も、無定見かつ頻繁に行われるといたずらに手数料負担を増やすことになります。「日計り」や「不抜け」も、その売買自体が委託者にとっては無益で、いずれも手数料負担を強いるものです(なお、「両建」については、前記しましたので省略します。)。


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