7月, 2021年

自由心証主義と弁論の全趣旨

2021-07-26

 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果を斟酌して自由な心証により事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断すると規定されています(自由心証主義、民事訴訟法247条)。

 この弁論の全趣旨に関する裁判例を見ると、大審院昭和3年10月20日判決は、弁論の全趣旨とは、当事者の主張の内容・態度、訴訟の情勢から当然なすべき主張・証拠の申出を怠ったこと、始めに争わなかった事実を後になって争ったこと、裁判所・相手方の問いに釈明を避けたこと等、口頭弁論における一切の積極・消極の事柄を指すとしています。

 そして、最高裁昭和27年10月21日判決は、上告人が不知と答えた第三者作成文書については、特段の立証がなくても弁論の全趣旨からその成立の真正を肯定し得るとし、最高裁昭和36年4月7日判決は、判決が証拠調べの結果と弁論の全趣旨を総合して事実を認定している場合、弁論の全趣旨が具体的に判示されていなくても記録の照合によりおのずから明らかであれば理由不備の違法はないとしています。

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〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階

ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)


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取引行為に関する使用者責任における「事業の執行について」

2021-07-19

 ある事業のために他人を使用する者(使用者)または使用者に代わって他人を監督する者(代理監督者)は、その他人(被用者)が「その事業の執行について」第三者に加えた損害を賠償する責任を負う(使用者責任、民法715条)とされているところ、その他人(被用者)の行為が「その事業の執行について」に当たるかどうかが問題となります。

 この他人(被用者)の行為が「事業の執行について」に当たるかどうかが取引行為に関して問題となった裁判例を見ると、銀行の支店長が不良貸付金の回収のために支店長名義で靴下を購入しこれを処分した場合(最高裁昭和32年3月5日判決)、かつて手形作成準備業務を担当していた者が会計係員として割引手形を銀行に使送などする職務に配転した後に手形を偽造した場合(最高裁昭和40年11月30日判決)に事業の執行に当たるとしています。

 一方、会社において通勤等に自家用車を利用することが禁止され、出張の際も許可が必要とされており、又、本件出張についても特急列車を利用すれば十分間に合ったのに会社の業務に関して平素自家用車を用いたこのない者が会社に届け出ることなく自家用車を用いて出張した場合(最高裁昭和52年9月22日判決)、郵便局に所属する保険外務員が詐欺により簡易保険の契約者を誤信させ、契約者貸付けの方法を教示するなどして郵便局から金員を借り入れさせた上、その金員の融資を受けた場合(最高裁平成15年3月25日)に事業の執行に当たらないとしています。

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参加承継・引受承継

2021-07-12

 訴訟の係属中に一方当事者と第三者との間で権利や義務が移転した場合にその承継人が訴訟に加わる制度として参加承継・引受承継(民事訴訟法49条、50条等)があります。

 この制度に関する裁判例を見ると、土地賃貸借の終了を理由とする建物収去土地明渡請求訴訟の係属中に第三者が当該建物を賃借した場合に関し、最高裁昭和41年3月22日判決は、建物収去義務の一部といえる退去義務に関する紛争が第三者との間に移行し、かつ、従前の訴訟資料を利用して実効的解決を図り得るから当該第三者は承継人といえるとしています。

 また、その申立権者に関し、東京高裁昭和54年9月28日決定は、係争物の譲受人は自ら進んで訴訟参加し得るのであり、譲渡人には譲受人に訴訟を承継させるべく引受申立てをする利益はないとして申立権者にあたらないとしています。

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間接事実・補助事実の自白

2021-07-05

 民事訴訟法179条は、「裁判所において当事者が自白した事実」「は証明することを要しない」と規定していますが、ここでの事実は、法的効果の判断に直接必要な主要事実とされ、この主要事実の存否を推認させる事実である間接事実や証拠の信用性に関する事実である補助事実などの自白の取り扱いが問題となります。

 そこで、この問題に関する裁判例を見ると、最高裁昭和41年9月22日判決は、間接事実の自白は、裁判所及び自白した当事者のいずれをも拘束しないとしています。また、最高裁昭和52年4月15日判決は、補助事実である書証の成立の真正についての自白は、裁判所を拘束せず、その撤回は許されるとしています。

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