Archive for the ‘企業法務’ Category

期間の定めのある労働契約における期間途中の解雇

2022-09-19

   使用者は,期間の定めのある労働契約において,やむを得ない事由がある場合でなければ労働者を解雇することができない(民法628条,労働契約法17条1項)とされていることから,やむを得ない事由が認められて期間途中の解雇ができるかどうかが問題となることがあります。

   この期間途中の解雇に関する裁判例を見ると,福岡高裁平成14年9月18日決定は,期間の定めのある労働契約は,民法628条によりやむを得ない事由があるときに限り期間内解除ができるにとどまり,就業規則の解雇事由の解釈に当たっても雇用期間の中途でなされなければならないほどのやむを得ない事由の発生が必要であるとしています。また,宇都宮地裁栃木支部平成21年4月28日決定は,本条1項の「やむを得ない事由」は期間の定めのない労働契約の解雇の有効要件である「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合」よりも厳格なものであるとしています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



代々木公園のナディア

使用者の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効

2022-09-12

   使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働をすることができるよう必要な配慮をするとされている(労働契約法5条)ところ、この安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効という問題があります。

   この損害賠償請求権の消滅時効に関する裁判例を見ると、時効期間について、最高裁昭和50年2月25日判決は、民法167条1項により10年と解されるとしています。

   また、その起算点について、最高裁平成6年2月22日判決は、安全配慮義務違反によりじん肺に罹患したことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は、最終の行政上の決定を受けた時から進行するとし、最高裁平成16年4月27日判決は、じん肺によって死亡した場合の損害については、死亡の時から進行するとしています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



当事務所内で咲く花

労働契約の内容の合意による変更

2022-09-05

   労働者及び使用者は,その合意により,労働契約の内容である労働条件を変更することができます(労働契約法8条)。

   この労働条件変更の合意に関し,大阪高裁平成3年12月25日判決は,使用者が一方的に賃金を減額したのに対して労働者が不満ながら異議を述べずにこれを受領してきたからといってこれをもって賃金の減額に労働者が黙示の承諾をしたとはいえないとしています。また,東京高裁平成20年3月25日判決は,期間の定めのない雇用契約から1年の有期契約への変更,賃金の減額,退職金制度の廃止,生理休暇・特別休暇の無給化等多岐にわたる労働条件の変更につき,数分の社長説明及び個別面談での口頭説明によってその全体及び詳細を理解し記憶に留めることは到底不可能であり,使用者による労働条件の変更合意の申込みの内容の特定が不十分であるから口頭による労働条件の変更の合意が成立したと認めることはできないとしています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



当事務所内で咲く花

労働者の退職後における競業避止義務

2022-08-29

   企業がそのノウハウの外部への流出を防止するために就業規則や個別の特約により労働者に対し退職後の競業避止義務を課すことがあるところ、どの範囲までこの義務を課すことができるかが問題となることがあります。

   この労働者の退職後の競業避止義務に関し、東京地裁平成7年10月16日決定は、労働者の職務内容が使用者の営業秘密に直接かかわるために特別な当事者の信頼関係から合意がなくても当然に生じる場合と特別の合意によって初めて創設される場合とがあるが、前者の場合にはその禁止期間、禁止行為の範囲や場所を具体化した約定については禁止内容が不当なものでない限り原則として有効と解され、後者の場合には競業行為の禁止の内容が必要最小限度にとどまりかつ十分な代償措置が執られていなければならない。また、労働者に退職後の競業避止義務を負わせる特約に基づいて競業行為の差止請求をするに当たっては、当該競業行為によって使用者の営業上の利益が現に侵害されているか、又は侵害される具体的なおそれがあることを要するとしています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



代々木公園のナディア

就業規則による労働契約の内容である労働条件の変更

2022-08-22

   労働契約法9条本文は,「使用者は,労働者と合意することなく,就業規則を変更することにより,労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と定めていますが,同法10条は,その変更が「合理的なものであるときは,労働契約の内容である労働条件は,当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」としています。

   この就業規則による労働条件の変更について,最高裁昭和43年12月25日判決は,就業規則の作成又は変更によって,労働者の既得の権利を奪い,あるいは不利益な労働条件を一方的に課すことは原則として許されないが,労働条件の統一的かつ画一的処理の要請から当該条項が合理的なものである限り個別の同意がなくても労働者に適用されるとして,55歳停年制を新たに定めた就業規則の改正は,諸般の事情から合理的なもので有効と解されるとしています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



代々木公園のナディア

労働者の解雇期間中の賃金と中間利益の控除

2022-07-25

   権利の濫用になる解雇は無効とされる(労働契約法16条)ところ,解雇されたことにより就労しなかった期間の賃金の扱いが問題となります。

   この解雇期間中の賃金について,最高裁昭和59年3月29日判決は,ユニオン・ショップ協定に基づく解雇が無効で,解雇期間中の労働者の労務提供の不履行が使用者の責に帰すべき事由による場合,労働者は反対給付としての賃金請求権を失わないとしています。

   また,最高裁昭和62年4月2日判決は,使用者が労働者に対して負う解雇期間中の賃金支払債務のうち平均賃金額の六割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許され,右利益の額が平均賃金額の四割を超える場合には更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金の全額を対象として利益額を控除することが許される。そして,賃金から控除し得る中間利益は,その利益の発生した期間が右賃金の支給の対象となる期間と時期的に対応するものであることを要し,ある期間を対象として支給される賃金からそれとは時期的に異なる期間内に得た利益を控除することは許されないとしています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



代々木公園のナディア

誹謗中傷対策としての侮辱罪の法定刑の引き上げ

2022-07-18

   令和4年6月13日,侮辱罪の法定刑を「1年以下の懲役若しくは禁固若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」(刑法230条)とする「刑法等の一部を改正する法律」が成立しました。

   法務省のホームページは,この法定刑の引上げの必要性について,「インターネット上の誹謗中傷が特に社会問題となっていることを契機として,誹謗中傷全般に対する非難が高まるとともに,こうした誹謗中傷を抑止すべきとの国民の意識が高まっている 近時の誹謗中傷の実態への対処として,侮辱罪の法定刑を引き上げ,厳正に対処すべきとの法的評価を示し,これを抑止するとともに,悪質な侮辱行為に対して厳正に対処することが必要」としています。

   この規定は,同年7月7日から施行されます。


参照(外部リンク)
内閣府大臣官房政府広報室「政府広報オンライン」サイト 令和4年(2022年)4月8日 SNSの誹謗中傷  あなたが奪うもの、失うもの#NoHeartNoSNS(ハートがなけりゃSNSじゃない!)
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上での誹謗中傷等について紹介しています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



当事務所内で咲く花

労働条件を変更するための変更解約告知

2022-07-11

   使用者からの労働条件の変更の申込を労働者が承諾しないことを理由として行われる解雇を変更解約告知と言います。

   この変更解約告知に関する裁判例を見ると、東京地裁平成7年4月13日決定は、雇用契約により特定された職種等の労働条件を変更するために新契約締結の申込みを伴う雇用契約の解約を行うことは、当該労働条件の変更が会社の業務運営にとって必要不可欠であり、その必要性が労働条件の変更によって労働者が受ける不利益を上回っていて労働条件の変更を伴う新契約締結の申込みがそれに応じない場合の解雇を正当化するに足るやむを得ないものと認められ、かつ、解雇を回避するための努力が十分に尽くされているときには有効であるとしています。また、大阪地裁平成10年8月31日判決は、変更解約告知といわれるものは、その実質は労働条件変更のために行われる解雇であるが、労働条件変更については就業規則の変更によってされるべきものであり、ドイツ法と異なって明文のない我が国においては変更解約告知という独立の類型を設けることは相当でない。本件解雇の意思表示はその実質は整理解雇にほかならないのであるから整理解雇と同様の厳格な要件が必要であるとしています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



当事務所内で咲く花

人員整理のための整理解雇

2022-07-04

   業績の悪化や経営不振などといった使用者側の事情によって人員整理のためにおこなわれる解雇を整理解雇と言います。

   この整理解雇が問題となった裁判例を見ると,東京高裁昭和54年10月29日判決が,整理解雇は,事業部門の閉鎖が企業の合理的運営上やむを得ない必要に基づいており,右事業部門に勤務する従業員を他の事業部門の同一あるいは類似の職種に配転する余地がなく,解雇対象者の選定が客観的・合理的基準に基づくものであることの三要件を充足する場合に有効となる。また,労働協約や就業規則における人事協議条項に基づく協議を経ない場合,その他労働者に対する十分な説明を欠くなど手続上の信義則に違反した場合には,整理解雇は権利の濫用として無効となるとしています。また,東京地裁平成12年1月21日決定が,いわゆる整理解雇の四要件は,整理解雇の範疇に属すると考えられる解雇について解雇権の濫用に当たるかどうかを判断する際の考慮要素を類型化したものであって各々の要件が存在しなければ法律効果が発生しないという意味での法律要件ではなく,解雇権濫用の判断は,本来事案ごとの個別具体的な事情を総合考慮して行うほかないものであるとしています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



当事務所内で咲く花

労働契約法16条が定める解雇権の濫用法理

2022-06-27

   労働契約法16条は,「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする」と規定しています。

   この規定は,裁判例の蓄積によって確立した解除権濫用法理を明文化したものです。この法理に関する裁判例を見ると,最高裁昭和50年4月25日判決が,「使用者の解雇権の行使も,それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には,権利の濫用として無効になる」としています。また,最高裁昭和52年1月31日判決が,労働者に解雇事由がある場合においても,「当該具体的な事情のもとにおいて,解雇に処することが著しく不合理であり,社会通念上相当なものとして是認することができないときには,当該解雇の意思表示は,解雇権の濫用として無効になる」としています。


【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



代々木公園のナディア

« Older Entries Newer Entries »
ページの上へ

   Copyright© 2010-2022 ひらま総合法律事務所: 東京都港区白金で弁護士相談 All Rights Reserved.   プライバシーポリシー