Archive for the ‘個人法務’ Category

学校における自習時間中の事故による損害賠償責任

2025-06-16

 学校生活に関して児童生徒が被害者となる事故を学校事故と言うことがありますが,自習時間中の事故についての責任が問題となることがあります。

 この自習時間中の事故について,最高裁平成20年4月18日判決は,「本件事故は,朝自習の時間帯に,教室入口付近の自席に座っていた担任教諭の下に4,5名の児童が忘れ物の申告をするなどの話をしに来ており,被上告人X自身も,教科書を机に入れたりした後,ランドセルをロッカーにしまおうとして席を立ったという状況の下で発生したのであるが,朝自習の時間帯であっても,朝の会に移行する前に,忘れ物の申告等担任教諭に伝えておきたいと思っていることを話すために同教諭の下に行くことも,教科書など授業を受け るのに必要な物を机に入れてランドセルをロッカーにしまうことも,児童にとって必要な行動というべきであるから,「用もないのに自分の席を離れない」という学級の約束は,このような児童にとって必要な行動まで禁じるものではなく,児童が必要に応じて離席することは許されていたと解されるし,それは合理的な取扱いでもあったというべきである。そして,Aが日常的に乱暴な行動を取っていたなど,担任教諭において日ごろから特にAの動静に注意を向けるべきであったというような事情もうかがわれないから,Aが離席したこと自体をもって,担任教諭においてその動静を注視すべき問題行動であるということはできない。」「Aは,離席した後にロッカーから落ちていたベストを拾うため教室後方に移動し,ほこりを払うためベストを上下に振るなどした後,更に移動してベストを頭上で振り回したというのであり,その間,担任教諭は,教室入口付近の自席に座り,他の児童らから忘れ物の申告等を受けてこれに応対していてAの動静を注視していなかったというのであるが,ベストを頭上で振り回す直前までのAの行動は自然なものであり,特段危険なものでもなかったから,他の児童らに応対していた担任教諭において,Aの動静を注視し,その行動を制止するなどの注意義務があったとはいえず,Aがベストを頭上で振り回すというような危険性を有する行為に出ることを予見すべき注意義務があったともいえない。したがって,担任教諭が,ベストを頭上で振り回すという突発的なAの行動に気付かず,本件事故の発生を未然に防止することができなかったとしても,担任教諭に児童の安全確保又は児童に対する指導監督についての過失があるということはできない」として教諭に過失は認められないことを判示して,事故についての責任を否定しています。


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〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ  白金タワー  テラス棟4階
ひらま総合法律事務所  弁護士  平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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公立学校における授業中の事故による損害賠償責任

2025-06-09

 学校生活に関して児童生徒が被害者となる事故を学校事故と言うことがありますが,授業中に事故が生じた場合の責任が問題となることがあります。

 公立中学校での水泳の授業中における事故が問題となった最高裁昭和62年2月6日判決は,「国家賠償法一条一項にいう「公権力の行使」には,公立学校における教師の教育活動も含まれるものと解するのが相当であり」「学校の教師は,学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負つており,危険を伴う技術を指導する場合には,事故の発生 を防止するために十分な措置を講じるべき注意義務があることはいうまでもない」と判示して,公立学校における教師の教育活動は国家賠償法1条1項の「公権力の行使」にあたるとして安全配慮義務違反による責任を認めています。

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夫婦による遺言と共同遺言の禁止

2025-06-02

 民法975条は,「遺言は,二人以上の者が同一の証書ですることができない」と規定して共同遺言を禁止しているところ,夫婦が遺言書を作成する場合などにこの共同遺言の禁止との関係が問題となることがあります。

 二人の遺言が一通の証書につづりあわされている場合がこの同条が禁止する共同遺言にあたるかが問題となった最高裁平成5年10月19日判決は,「本件遺言書はB五判の罫紙四枚を合綴したもので,各葉ごとにDの印章による契印がされているが,その一枚目から三枚目までは,D名義の遺言書の形式のものであり,四枚目は被上告人B名義の遺言書の形式のものであって,両者は容易に切り離すことができる,というものである。右事実関係の下において,本件遺言は,民法九七五条によって禁止された共同遺言に当たらないとした原審の判断は,正当として是認することができる」と判示して,この場合の共同遺言該当性を否定しています。


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遺留分の侵害と遺留分額への相続債務の加算

2025-05-26

 遺留分を算定する際の基礎財産は,被相続人が相続開始時に有した財産に所定の贈与財産を加え,そこから相続債務を差し引いたもの(民法1043条1項)とされていますが,相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合において,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することの可否が問題となったことがあります。この問題について,最高裁平成21年3月24日判決は,「相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言により相続分の全部が当該相続人に指定された場合,遺言の趣旨等から相続債 務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り,当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表示されたものと解すべきであり,これにより,相続人間においては,当該相続人が指定相続分の割合に応じて相続債務をすべて承継することになると解するのが相当である」「そして,遺留分の侵害額は,確定された遺留分算定の基礎となる財産額に民法1028条所定の遺留分の割合を乗じるなどして算定された遺留分の額から,遺留分権利者が相続によって得た財産の額を控除し,同人が負担すべき相続債務の額を加算して算定すべきものであり」「その算定は,相続人間において,遺留分権利者の手元に最終的に取り戻すべき遺産の数額を算出するものというべきである。したがって,相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされ,当該相続人が相続債務もすべて承継したと解される場合,遺留分の侵害額の算定においては,遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないものと解するのが相当である」と判示して相続債務の加算を否定しています。


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不明瞭な遺言の解釈

2025-05-19

 その人の最終意思を死後に実現するための制度として遺言が利用されますが,その趣旨が不明瞭な場合,その解釈が必要になります。

 この遺言の解釈が問題となった事案について,最高裁平成17年7月22日判決は,「遺言を解釈するに当たっては,遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく,遺言者の真意を探究すべきであり,遺言書が複数の条項から成る場合に,そのうちの特定の条項を解釈するに当たっても,単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出し,その文言を形式的に解釈するだけでは十分でなく,遺言書の全記載との関連,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して ,遺言者の真意を探究し,当該条項の趣旨を確定すべきである」と判示して,遺言者の真意を探求して遺言の趣旨を確定すべきとしています。


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遺留分の算定と相続分の譲渡

2025-05-12

 遺留分を算定する際の基礎財産は,被相続人が相続開始時に有した財産に所定の贈与財産を加え,そこから相続債務を差し引いたもの(民法1043条1項)とされていますが,この遺留分の算定において相続分の譲渡が考慮されるかという問題があります。

 この問題について,最高裁平成30年10月19日判決は,「共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは,積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し,相続分の譲渡に伴って個々の相続財産についての共有持分の移転も生ずるものと解される。そして,相続分の譲渡を受けた共同相続人は,従前から有していた相続分と上記譲渡に係る相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割手続等に加わり,当該遺産分割手続等において,他の共同相続人に対し,従前から有していた相続分と上記譲渡に係る相続分との合計に相当する価額の相続財産の分配を求めることが できることとなる。このように,相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができる。遺産の分割が相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法909条本 文)とされていることは,以上のように解することの妨げとなるものではない。したがって,共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,上記譲渡をした者の相続において,民法903条1項に規定する「贈与」に当たる」と判示して,相続分の譲渡が考慮されることを認めています。

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遺産共有持分と他の共有物が併存する場合の分割手続き

2025-04-07

 遺産分割前の遺産(相続財産)は共同相続人の共有(遺産共有)となるところ,遺産共有の状態にある共有持分とその他の共有持分が併存する場合にその分割の手続きが問題となります。

 この問題に関し,最高裁平成25年11月29日判決は,「共有物について,遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分(以下「遺産共有持分」といい,これを有する者を「遺産共有持分権者」という。)と他の共有持分とが併存する場合,共有者(遺産共有持分権者を含む。)が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり,共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与された財産は遺産分割の対象となり,この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべきものと解するのが相当である」「民法258条に基づく共有物分割訴訟は,その本質において非訟事件であって,法は,裁判所の適切な裁量権の行使により,共有者間の公平を保ちつつ,当該共有物の性質や共有状態の実情に適合した妥当な分割が実現されることを期したものと考えられることに照らすと,裁判所は,遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ,その者に遺産共有持分の価格を賠償させてその賠償金を遺産分割の対象とする価格賠償の方法による分割の判決をする場合には,その判決において,各遺産共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で,遺産共有持分を取得する者に対し,各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができるものと解するのが相当である。」と判示しています。


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遺産分割の当事者と遺産確認の訴え

2025-03-31

 遺産分割は,被相続人の共同相続人間で行われることになりますが,遺産分割の前にその相続分を全部譲渡した共同相続人がその前提となる財産の遺産帰属性を確認することができるのかという問題があります。

 この問題に関し,最高裁平成26年2月14日判決は,「遺産確認の訴えは,その確定判決により特定の財産が遺産分割の対象である財産であるか否かを既判力をもって確定し,これに続く遺産分割審判の手続等において,当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないとすることによって共同相続人間の紛争の解決に資することを目的とする訴えであり,そのため,共同相続人全員が当事者として関与し,その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共 同訴訟と解されているものである」「しかし,共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する割合的な持分を全て失うことになり,遺産分割審判の 手続等において遺産に属する財産につきその分割を求めることはできないのであるから,その者との間で遺産分割の前提問題である当該財産の遺産帰属性を確定すべき必要性はないというべきである。そうすると,共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しないと解するのが相当である」と判示しています。


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相続財産から生ずる果実と遺産分割

2025-03-24

 相続財産の中に不動産がある場合,遺産分割が行われるまでにその賃料債権という果実が生じることがありますが,遺産分割によってその帰属が影響を受けるのかが問題となります。

 この問題に関し,最高裁平成17年9月8日判決は,「遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けないものとい うべきである」と判示しています。


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特別受益の持戻しと生命保険金請求権

2025-03-17

 共同相続人の中に特別受益を得た者がいるときは,その持戻し(民法903条,904条)を行うことになりますが,その特別受益財産として持戻しの対象となるのかが問題となるものとして生命保険金請求権があります。

 この生命保険金請求権の持戻しが問題となった最高裁平成16年10月29日判決は,「養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である。もっとも,上記死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は,被相続人が生前保険者に支払ったものであり,保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相 当である。上記特段の事情の有無については,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率のほか,同居の有無,被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活 実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである」と判示しています。


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