Archive for the ‘個人法務’ Category

不貞行為(不倫)に基づく不法行為責任

2020-10-05

 夫婦の一方が不貞行為(不倫)を行った場合、不貞行為に基づく不法行為責任が問題となります。

 そこで、この不貞行為による不法行為責任が問題になった裁判例を見ると、故意・過失が認められる限り、夫婦の一方と肉体関係を持った第三者は、相手方を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両者の関係が自然の情愛によって生じたかどうかにかかわらず、他の配偶者の権利を侵害したとして不法行為責任を負います(最高裁昭和54年3月30日)が、夫婦の婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特別の事情のない限り、第三者は、他の配偶者に対して不法行為責任を負わない(最高裁平成8年3月26日判決)とされています。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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子との面会交流とその許否の判断基準

2020-09-23

 民法766条1項の「子の監護をすべき者その他監護について必要な事項」には子との面会交流(面接交渉)が含まれ、「離婚の際に未成年の子の親権者と定められなかった親は、子の監護に関する処分の1つとして子との面接交渉を求めることができる」(東京高裁平成19年8月22日決定)とされています。

 そして、上記東京高裁決定は、「面接交渉が現実的に子の福祉に合致するかどうかという観点から判断されなければならない」とした上、「現在の状況において、未成年者らと申立方との面接交渉を実施しようとするときには、未成年者らに対して相手方に対する不信感に伴う強いストレスを生じさせることになるばかりか、未成年者らを父親である相手方と母親である抗告人との間の複雑な忠誠葛藤の場面にさらすことになるのであり、その結果、未成年者らの心情の安定を大きく害するなど、その福祉を害するおそれが高いものといわなければならない」として面接交渉の申立てを却下しています。

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婚姻費用とその分担の始期、その変更・取消

2020-09-14

 夫婦は、その資産、収入、その他一切の事情を考慮して婚姻から生ずる費用(婚姻費用)を分担する(民法760条)とされています。

 そして、婚姻費用とは、夫婦と未成熟の子によって構成される婚姻家族がその資産・収入・社会的地位等に応じた通常の社会生活を維持するのに必要な費用(大阪高裁昭和33年6月19日決定等)で、通常の衣食住の費用、子の教育費、子の出産費用、医療費などがこれにあたるとされています。

 いつからこれを分担するかについては過去にさかのぼった時点から支払いを命ずることができる(最高裁昭和40年6月30日決定)とされ、調停申立てなど権利者から義務者に対し請求した時点までさかのぼって請求できるとする(東京高裁昭和60年12月26日決定など)のが一般的なようです。

 また、調停が成立したり審判が確定した場合でも、その後にそれらの基礎となった事情に変化が生じたときは、婚姻費用分担義務の変更・取消の調停・審判をすることができる(大阪高裁昭和49年2月28日決定)とされています。

 なお、内縁の夫婦も婚姻費用の分担請求が可能(最高裁昭和33年4月11日判決)とされています。

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文書の提出命令・送付嘱託

2020-09-07

 裁判においては所持している文書を提出してその取り調べをしてもらうことになるところ、文書を所持していなくても文書提出命令や文書送付嘱託を申し立て証拠となる文書を取り調べることが考えられます(民事訴訟法219条、226条)。

 相手方当事者または第三者が提出義務を負う場合にはその相手方当事者または第三者に対し文書提出命令を申し立てることができます。また、文書の所持者に提出義務がなくても文書の送付嘱託を申し立てることができます。

 なお、文書提出命令の申立ては、文書の表示・趣旨・証明すべき事実・提出義務の原因を明らかにしてしなければならないとされています(同法221条1項)が、文書の表示・趣旨を明らかにすることが「著しく困難な場合」には文書の特定に必要な情報を開示する手続き(同法222条1項)の利用が可能です。

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地代借賃増減請求事件における調停前置主義

2020-08-31

 借地借家法11条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求や同法32条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てしなければならない(調停前置主義)とされ(民事調停法24条1項)、同項の事件について調停の申立てをすることなく訴えが提起された場合に受訴裁判所はその事件を調停に付さなければならないとされています(同法24条2項本文)。

 このように地代借賃増減請求事件において調停前置主義が採用されているのは、少額訴訟が多いことや専門的な知識経験を有する調停委員の活用の必要性などに鑑み、訴訟による前にまず調停手続きを活用するのが好ましいためなどと言われています。

 なお、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときはこの限りではないとして(同法24条2項但書)、調停前置主義の例外を認めています。

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時効の利益の放棄と時効の完成の事実の認識

2020-08-24

 「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない」と規定する民法146条の反対解釈から時効完成後の時効の利益の放棄は認められるとされているところ、この時効の利益の放棄といえるには時効の完成の事実の認識が必要かどうかという問題があります。

 この問題に関する裁判例を見ると、大審院大正4年3月11日判決や最高裁昭和35年6月23日判決などは、時効の利益の放棄には時効の完成の事実の認識が必要とした上で、時効の主張は時効の完成の事実を知ってこれをしたものと推定すると判示していましたが、最高裁昭和41年4月20日判決は、「時効完成の事実を知らなかったときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されない」「けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当である」と判示しています。

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裁判所による書類の送達

2020-08-18

裁判所が当事者その他の訴訟関係人に一定の方式により書類を交付する行為を送達と言います。

 送達は、送達名宛人に交付して行ない(交付送達、民事訴訟法101条)ますが、交付送達ができない場合は書留郵便で所定の場所宛に発送します(郵便に付する送達、同法107条)。そして、送達場所が不明など一定の場合には公示送達が認められます(同法110条)。

 名宛人や方法を誤ると送達は無効となります。

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裁判の期日における当事者の欠席

2020-08-11

   裁判の期日に当事者の一方ないし双方が欠席した場合に訴訟の促進や出席した当事者の利益を図るため、民事訴訟法はさまざまな規定を置いています。

   ①最初の口頭弁論期日に一方当事者が欠席した場合には同法158条が適用され、欠席者が提出していた準備書面等に記載した事項を期日に陳述したものとみなし、出席者の弁論とつきあわせて審理を進めます。

   ②続行期日に一方当事者が欠席した場合には同法158条の適用はありません(なお、簡易裁判所では続行期日でも同法158条が適用されます(同法277条)。

   ③期日に当事者双方が欠席した場合には同法263条が適用され、一月以内に期日指定の申立てをしないと取下擬制を認め、また、一月以内に期日指定の申立てをしても連続して2回その期日に欠席すると取下擬制を認めています。

   ④同法244条は、当事者の双方または一方が口頭弁論期日に欠席した場合には「審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるとき」には口頭弁論を終結して終局判決ができるとしています(ただし、一方当事者が欠席した場合に口頭弁論を終結して終局判決ができるのは出席した当事者の申出のあるときとしています)。


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最寄り駅;東京メトロ南北線/都営 三田線 「白金高輪駅」 4番出口から直通で徒歩1分
(ご来所には事前の電話予約が必要です。)アクセス(地図等)



当事務所内で咲く花


時効の中断事由としての差押え、仮差押え、仮処分

2020-08-03

 時効の中断事由として、差押え、仮差押え、仮処分が規定されている(民法154条等)ところ、差押え等によって時効中断の効力が生じるのはいつか、また、時効中断の効力はいつまで続くのかという問題があります。

 まず、差押え等によって時効中断の効力が生じるのはいつかという問題に関する裁判例を見ると、動産執行に関し、最高裁昭和59年4月24日判決は、債権者が執行官に対し執行の申立をした時としていますが、金銭執行に関し、最高裁昭和43年3月29日判決は、債務名義に表示の住所に執行債務者が所在しないために執行が不能に終わった場合には、同金銭債権について時効中断の効力は生じないとしています。

 次に、時効中断の効力はいつまで続くのかという問題に関する裁判例を見ると、仮差押えに関し、最高裁平成10年11月24日判決は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は継続し、被保全債権につき本案の勝訴判決が確定しても仮差押えによる時効中断の効力が消滅するものではないとしています。また、最高裁平成6年6月21日判決は、仮差押解放金の供託により仮差押執行が取り消されても時効中断の効力は継続するとしています。

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移送による裁判の主体の変更

2020-07-27

 裁判の主体は、訴えを提起された裁判所ですが、移送によって裁判の主体が変わることがあります。

(1)管轄違いに基づく移送

 訴えを提起された裁判所に管轄権がない場合でも訴えを却下しないで、申立または職権でその訴えを管轄裁判所に係属させるものが管轄違いによる移送(民事訴訟法16条)です。

(2)管轄裁判所による移送

 訴えを提起された裁判所に管轄権がある場合でも,「訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要」な場合などに移送が行われます(同法17条、18条、19条等)。

 移送の裁判(決定)は、被告の申立または職権で行われます。そして、移送の決定が確定すると、訴訟は訴えが提起された時から移送された裁判所に係属したものとみなされます(同法22条3項)。なお、移送の決定や移送の申立を却下した決定に対しては即時抗告(同法332条)で争うことができます。

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