Archive for the ‘経営’ Category
特定継続的役務提供と契約の中途解約
エステテイックサロン、英会話などの語学教育、パソコン教室などは特定継続的役務提供として特定商取引に関する法律(特商法)の規制の対象となるところ、このような役務の提供は長期間にわたることが多いため契約の中途解約権が認められており、また、損害賠償等の額が制限されています(同法49条)。
そこで、この中途解約に関する裁判例を見ると、契約が中途解約された場合の受講料の精算が問題となった事案につき、最高裁平成19年4月3日判決は、「本件料金規定は、契約締結時において、将来提供される各役務について一律の対価額を定めているのであるから、それとは別に、解除があった場合にのみ適用される高額の対価額を定める本件清算規定は、実質的には、損害賠償額の予定又は違約金の定めとして機能するもので、上記各規定の趣旨に反して受講者による自由な解除権の行使を制約するものといわざるを得ない。そうすると、本件清算規定は、役務提供事業者が役務受領者に対して法49条2項1号に定める法定限度額を超える額の金銭の支払を求めるものとして無効というべきであり、本件解除の際の提供済役務対価相当額は、契約時単価によって算定された本件使用済ポイントの対価額と認めるのが相当」として契約時の単価によって算定すべきとしています。
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不動産の借主による迷惑行為
不動産の賃貸借、使用貸借における借主の迷惑行為によってトラブルになることがあります。
借主の迷惑行為が問題となった裁判例を見ると、野鳩の餌付け・飼育による障害に基づく損害の賠償請求等が問題となった事案について、東京地裁平成7年11月21日判決は、「区分所有者の共同の利益に反する行為であり、その行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難な場合に当たる」として損害賠償請求を認めています。
また、騒音等の迷惑行為による契約の解除、競売請求等が問題となった事案について、東京地裁平成17年9月13日判決は、被告が「本件専有部分等を所有し続けることは、必然的に本件マンションの区分所有者の共同の利益に反することになる」「区分所有権及び敷地利用権の競売以外の方法によってはその障害を除去して共用部分の維持を図ることが困難である」として競売請求等を認めています。
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管理組合の役員に対する誹謗中傷と共同の利益に反する行為
マンション等の区分所有者が複数存在する不動産では「区分所有者の共同の利益に反する行為」(区分所有法6条1項)について差止請求(同法57条)等が考えられるところ、管理組合の役員に対する誹謗中傷がこの「区分所有者の共同の利益に反する行為」にあたるかどうかが問題となったことがあります。
最高裁平成24年1月17日判決は、「マンションの区分所有者が、業務執行に当たっている管理組合の役員らをひぼう中傷する内容の文書を配布し、マンションの防音工事等を受注した業者の業務を妨害するなどする行為は、それが単なる特定の個人に対するひぼう中傷等の域を超えるもので、それにより管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される場合には、法6条1項所定の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たるとみる余地がある」と判示しています。
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不動産の管理業者とのトラブル
マンション等の不動産の管理を管理業者に依頼することがありますが、この管理業者との間でトラブルが生じることがあります。
漏水事故について管理業者の債務不履行責任が問題になった事案について、 東京地裁平成5年1月28日判決は、給水管が「本件管理契約にいう共有部分ないし共用施設に当たらない」として管理会社の責任を否定しています。
一方、管理組合が管理業者との間で締結されたエレベーターの保守契約を契約期間の途中に解除した事案について、東京地裁平成15年5月21日判決は、「本件解約に伴って発生した不利益は、事務処理とは別の報酬の喪失に外ならず・・・本件解約は「不利な時期」においてなされた場合に当たらない」として
管理業者の請求を否定しています。
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マンションの眺望の阻害
マンションの購入を決めるにあたって考慮した眺望に不都合が生じた場合の取り扱いが問題となることがあります。
この問題に関する裁判例をみると、大阪高裁平成11年9月17日判決は、「売主は購入希望者に対し、その売買予定物の状況について、その実物を見聞できたのと同程度にまで説明する義務がある」「売主が説明したところが、その後に完成したマンションの状況と一致せず、かつそのような状況があったとすれば、買主において契約を締結しなかったと認められる場合には、買主はマンションの売買契約を解除することもでき、この場合には売主において、買主が契約が有効であると信頼したことによる損害の賠償をすべき義務がある」と判示しています。
また、東京地裁平成18年12月8日判決は、「隅田川花火大会の花火の観望という価値を重視し、これを取引先の接待にも使えると考えて同室を購入し、被告においてもこれを知っていたこと」「隅田川花火大会を巡る状況からみてこれを室内から観賞できるということは、取引先の接待という観点からみると少なからぬ価値を有していたと認められることを考慮すると」、被告は、「花火の観望を妨げないよう配慮すべき義務を負っていた」とし、「損害の賠償をしなければならない」と判示しています。
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マンションの瑕疵と契約の解除
マンションを購入した後にさまざまな不都合が判明することがありますが、このような瑕疵がマンションの売買契約の解除原因となるかが問題となります。
まず、マンション内で自殺があったことが判明した事案について、横浜地裁平成元年9月7日判決は、「売買の目的物に瑕疵があるというのは、その物が通常保有する性質を欠いていることをいうのであって、右目的物が建物である場合、建物として通常有すべき設備を有しない等の物理物欠陥としての瑕疵のほか、建物は、継続的に生活する場であるから、建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に原因する心理的欠陥も瑕疵と解することができる」「解除をしうる瑕疵であるというためには、単に買主において右事由の存する建物の居住を好まないだけでは足らず、それが通常一般人において、買主の立場におかれた場合、右事由があれば、住み心地の良さを欠き、居住の用に適さないと感ずることに合理性があると判断される程度にいたったものであることを必要とする」とした上で、解除原因と認めています。
また、シックハウスであることが判明した事案について、東京地裁平成17年12月5日判決は、「本件建物にはその品質につき当事者が前提としていた水準に到達していないという瑕疵が存在する」「当該瑕疵は取引上要求される一般的な注意を払っていても容易に発見し得ないものであるというべきである」として、解除原因と認めています。
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アルバイトによる収入と個人再生手続の利用
個人再生手続を利用しようとする場合、小規模個人再生手続については「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」こと(民事再生法221条1項)、給与所得者等再生手続については上記の要件をみたす者で「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込み」があり、かつ、「その額の変動幅が小さいと見込まれる」こと(民事再生法239条1項)が要件とされるところ、アルバイトによって収入を得ている人がこれらの要件をみたして個人再生手続を利用できるかが問題となることがあります。
この点、アルバイトであることによって制度の利用を否定されることはなく、源泉徴収票や給与明細書などによって収入を得る見込みを検討しその利用要件をみたすかどうかを判断することになります。
なお、アルバイトにより収入を得ている場合に限りませんが、個人再生手続が開始した後にこれらの利用要件を欠くことになると再生手続の廃止事由(民事再生法191条1号)や再生計画不認可事由(民事再生法231条2項1号、241条2項1号)が生じることになります。
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外国人の退去強制と収容
入国警備官は、退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは収容令書により外国人を収容することができます(入管法39条)。そして、収容令書による収容期間は30日でやむをえない事由があるときは30日の延長が可能で、この間に退去強制令書を発布するかどうかを決定することになります(入管法41条1項)。なお、退去強制令書の執行を受けるまでの間、収容の効力を停止する仮放免という制度があります(入管法54条1項)。
この収容に関する裁判例をみると、収容令書により外国人を収容するためには、退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当な理由があるだけでは足りず、収容を必要とする合理的な理由が存在することが必要としたもの(東京高裁昭和47年4月15道判決)があります。
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取締役の報酬の決定方法
指名委員会等設置会社以外の株式会社においては、取締役の報酬等に関する所定の事項につき定款に定めがない場合には株主総会決議で定めなければならない(会社法361条1項)とされていますが、株主総会においては報酬の総額のみを決め、その配分を一任された取締役会がこの配分決定をさらに代表取締役に一任することが適法かという問題があります。
そこで、この問題に関する裁判例をみると、最高裁昭和31年10月5日判決がこのような一任を適法としています。なお、定款または株主総会の決議によって報酬の金額が定められていない場合について、最高裁平成15年2月21日判決は、具体的な報酬請求権は発生せず、取締役が会社に対して報酬を請求することはできないとしています。
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労働組合に対する便宜供与としてのチェック・オフ
労働組合との協定に基づいて、使用者が組合員の賃金から組合費を控除して組合に引き渡すことをチェック・オフと言います。
このチェック・オフは、労働者の賃金にかかわることから、労基法の賃金全額払の原則(同法24条1項)との関係が問題となり、最高裁平成元年12月11日判決は、チェック・オフについて全額払原則の適用を認め労使協定の締結を要件としています。
また、チェック・オフが有効となるには、使用者が個々の組合員から組合費支払いの委任を受けることが必要とされ、最高裁平成5年3月25日判決は、チェック・オフについて、組合員が使用者に組合費の支払いを委任し、使用者が組合に対し組合費を支払う一方、組合員との間で組合費相当額を賃金から控除する関係としています。
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