Archive for the ‘経営’ Category

高年齢者等の雇用の安定と定年後の再雇用の拒否・賃金

2016-12-19

我が国においては少子高齢化が進んで高齢者の就労を促進するために高齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)が改正(平成24年8月29日成立)されるなど高齢者等の雇用に関する新たな立法が見られるとともに裁判例も蓄積されてきています。

まず、定年後における再雇用契約の成否に関するものとして最高裁平成24年11月29日判決があり、再雇用契約の成否と成立する場合の契約内容について

「被上告人において嘱託雇用契約の終了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があると認められる一方、上告人において被上告人につき上記の雇用継続基準を満たしていないものとして本件規程に基づく再雇用をすることなく嘱託雇用契約の終期の到来により被上告人の雇用が終了したものとすることは、他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない以上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」、

「法の趣旨等に鑑み、上告人と被上告人との間に、嘱託雇用契約の終了後も本件規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当であり、その期限や賃金、労働時間等の労働条件については本件規程の定めに従うことになる」と判示しています。

また、期間の定めのない従業員との間での労働条件の相違等が問題となった東京高裁平成28年11月2日判決は、

「有期契約労働者である嘱託社員と無期契約労働者である正社員の間には、賃金の定めについて、その地位の区別に基づく定型的な労働条件の相違があり、これにより被控訴人らの賃金が定年時のものより減額されていることからは、控訴人が、高年齢者雇用安定法が定める選択肢の一つとして、被控訴人らと有期労働契約を締結したのは、賃金節約や雇用調整を弾力的に図る目的もあるものと認められる。・・・よって、当該労働条件の相違(本件相違)が期間の定めの有無に関連して生じたものであることは明らか」、

「労働契約法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者の間の労働条件の相違が不合理と認められるか否かの考慮要素として、

①職務の内容、

②当該職務の内容及び配置の変更の範囲のほか、

③その他の事情

を掲げており、その他の事情として考慮すべきことについて・・・労働条件の相違が不合理であるか否かについては、上記①及び②に関連する諸事情を幅広く総合的に考慮して判断すべき」とした上で、「本件相違は、労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情に照らして不合理なものであるということはできず、労働契約法20条に違反するとは認められない」と判示して、原判決を取消しています。


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株主総会決議の不存在の確認と決議無効の確認

2016-12-12

 株式会社の株主総会では会社の組織、運営などについて決議をしますが、議事録に総会が開催され決議が行われたと記載されていても実際には招集手続が一切なかったような場合、総会決議は不存在となります。

 そして、会社法は、株主総会の決議について、決議が存在しないことの確認を訴えによって請求できる(会社法830条1項)とし、最高裁平成2年4月17日判決は、取締役を選任する旨の株主総会決議が存在するとはいえない場合には、当該取締役によって構成される取締役会は正当な取締役会とはいえず、その取締役会で選任された代表取締役も正当に選任されたものではなく株主総会の招集権限を有しないので、この代表取締役が招集した株主総会において取締役を選任する旨の決議がなされたとしても、特段の事情がない限り、法律上存在しないものとしています。

 また、株主総会の決議の内容が法令に違反することを理由として決議が無効であることの確認を訴えによって請求できます(会社法830条2項)。

 そして、この確認の利益に関して、東京地裁平成26年11月20日判決は、当該決議の法的効力に関して疑義があり、これが前提となって当該決議から派生した法律上の紛争が現に存在する場合において、当該決議の法的効力を確定することが上記紛争を解決し当事者の法律上の地位ないし利益が害される危険を除去するために必要かつ適切であるときは確認の利益があるとしています。


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通勤災害に対する保険給付

2016-10-31

   労働者災害補償保険法(労災保険法)において「通勤」とは、労働者が就業に関し

①   住居と就業場所との往復

②   就業場所から他の就業場所への移動

③   ①の往復に先行または後続する住居間の移動を合理的な経路及び方法により行うこと(同法7条2項)とされています。

   そして、保険給付の対象となる「通勤災害」とは、この「通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」(同法7条1項2号)で、通勤駅の階段で転倒したことによる負傷などがこれに該当すると考えられますが、通勤に通常伴う危険が現実化したものと考えられているため、通勤中殺害されても、たまたま犯行の機会が通勤中であったという場合には「通勤災害」には当たらないとした裁判例(大阪高裁平成12年6月28日判決)があります。


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単元株制度

2016-10-17

 単元株制度とは、定款で決めた一定数を1単元とし、1単元に満たない株式については株主権を制限する制度です。

 単元未満株式には議決権などが認められません。株主に関する事務管理のコストを削減するという観点から株式の単位を調整するものです。

 これと類似するものとして、平成13年に法が改正される前に単位株制度が存在しましたが、単位株制度は株式の単位を引き上げるためのものであるのに対し、単元株制度はそのようなものではないと説明されています。


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労働者の健康診断

2016-10-03

   職場における労働者の健康と安全を確保し快適な職場環境の形成を促進することを目的とするものとして労働安全衛生法(労安衛法)が存在し、この法律は労働者の健康診断について規定していますが、健康診断の受診が労働契約上労働者の義務となるかという問題があります。

   この点に関する裁判例を見ると、最高裁平成13年4月26日判決が地方公務員である公立学校の教員につき、教職員の保健のみならず児童生徒の保健にも大きな影響を与えることやその一内容であるエックス線検査が教職員個人の保護に加え学校の結核からの防衛を目的にしていることを理由として結核予防法(7条1項)及び労安衛法66条5項に基づく受診義務を認めています。


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株式譲渡の自由と従業員持株制度

2016-09-20

   従業員に対する福利厚生や愛社精神の育成などのために自社の株式を有利な条件で従業員に保有させる従業員持株制度を導入している企業がありますが、株式の自由な譲渡を制限し、退職時には株式を一定額で会社に譲渡すると定められているのが通常であるため、このような譲渡制限契約が株式会社において株式の譲渡は原則として自由(会社法127条)とされていることや公序良俗(民法90条)に違反しないかが問題となります。

   この点につき裁判例を見ると、このような契約を有効としているものがほとんどのようです。従業員が制度の趣旨を了解し毎年8から30%の割合による配当を受けていた事案に関して最高裁平成7年4月25日判決は、退職の際には額面額で取得した株式を額面額で取締役会の指定する者に譲渡するとの合意は、商法204条1項(現会社法127条)や公序良俗に反しないとしています。

   また、日刊新聞を発行する非公開会社の事案に関して最高裁平成21年2月17日判決は、株式の保有資格者を原則として現役の従業員等に限定し、個人的理由により株式を売却する必要が生じたときなどには持株会が額面額で買い戻すとの定めは、その内容に合理性がないとは言えないとして会社法127条や公序良俗に反しないとしています。

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上場会社における一般株主を保護する独立役員

2016-08-29

   独立して経営監督機能を発揮することを期待されるものとして社外取締役が存在しますが、東京証券取引所(東証)では、一般株主保護の見地からより強い独立性を求めるため、上場会社に対し、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役である独立役員を1名以上確保することを企業行動規範の遵守すべき事項としています。また、当該企業行動規範の遵守状況を確認するため、東証への独立役員届出書の提出を求めています。


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傷病休職と労働契約の終了

2016-08-22

   休職とは、労働者に就労させることが適切でない場合に労働契約を存続させつつ労働義務を一時消滅させることで、傷病休職、事故欠勤休職、起訴休職、出向休職などがありますが、傷病休職において、どれ位回復していれば治癒したと判断され、労働契約の終了という効果が発生しないのかという問題があります。

   この点、裁判例をみると、従前の職務を支障なく行える状態にまでは回復していなくても、相当期間内に治癒することが見込まれ、かつ、当人に適切なより軽い作業が現に存在するときには、病気が治癒するまでの間、使用者は、労働者をその業務に配置すべき信義則上の義務を負い労働契約の終了という効果は発生しないとされているようです(東京地裁昭和59年1月27日判決、大阪地裁平成11年10月4日判決、大阪地裁平成11年10月18日判決、大阪地裁平成20年1月25日、東京地裁平成22年3月24日判決、東京地裁平成23年2月25日判決など)。


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試用期間の終了時における本採用の拒否

2016-08-08

   労働者を採用するにあたって3ヶ月から6ヶ月程度の試用期間を設定して使用者がその人の従業員としての適格性を評価することがしばしば行われますが、従業員として不適格であると評価されて本採用を拒否された場合、その人が法的救済を受けることが出来るかが問題となります。

   この点につき、最高裁昭和48年12月12日判決は、個々の事案に応じて判断すべきであるとしつつ、当該事案においては、試用期間中も解約権を留保した労働契約が成立しているとした上、本採用の拒否はこの解約権の行使(解雇)にあたるため、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認できる場合にのみ許されるとして本採用の拒否についての法的救済を認めています。

   また、東京高裁平成21年9月15日判決は、約3ヶ月半の営業成績をもって従業員としての適格性を有しないと判定することは出来ず、解雇は無効としています。


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株券の発行

2016-07-18

   株券とは、株主としての地位を有価証券に表章したものです。

   平成16年における改正前の商法では株式会社においては株券を発行することが義務とされていましたが、現在の会社法では定款で定めない限り株券を発行することを義務とされません(会社法214条)。また、株式の振替制度が創設されました(社債、株式等の振替に関する法律)。

   株式の譲渡を容易にし、また、法律関係を明確にするためには株式を表彰させた株券が不可欠であるとかつては考えられていましたが、大量の紙の譲渡の手続きはかえって煩雑である、社債等との統一的な証券決済法制の整備やペーパレス化の必要があるなどといったことがその背景にあります。


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