Archive for the ‘経営’ Category
労働者の解雇期間中の賃金と中間利益の控除
権利の濫用になる解雇は無効とされる(労働契約法16条)ところ,解雇されたことにより就労しなかった期間の賃金の扱いが問題となります。
この解雇期間中の賃金について,最高裁昭和59年3月29日判決は,ユニオン・ショップ協定に基づく解雇が無効で,解雇期間中の労働者の労務提供の不履行が使用者の責に帰すべき事由による場合,労働者は反対給付としての賃金請求権を失わないとしています。
また,最高裁昭和62年4月2日判決は,使用者が労働者に対して負う解雇期間中の賃金支払債務のうち平均賃金額の六割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許され,右利益の額が平均賃金額の四割を超える場合には更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金の全額を対象として利益額を控除することが許される。そして,賃金から控除し得る中間利益は,その利益の発生した期間が右賃金の支給の対象となる期間と時期的に対応するものであることを要し,ある期間を対象として支給される賃金からそれとは時期的に異なる期間内に得た利益を控除することは許されないとしています。
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労働条件を変更するための変更解約告知
使用者からの労働条件の変更の申込を労働者が承諾しないことを理由として行われる解雇を変更解約告知と言います。
この変更解約告知に関する裁判例を見ると、東京地裁平成7年4月13日決定は、雇用契約により特定された職種等の労働条件を変更するために新契約締結の申込みを伴う雇用契約の解約を行うことは、当該労働条件の変更が会社の業務運営にとって必要不可欠であり、その必要性が労働条件の変更によって労働者が受ける不利益を上回っていて労働条件の変更を伴う新契約締結の申込みがそれに応じない場合の解雇を正当化するに足るやむを得ないものと認められ、かつ、解雇を回避するための努力が十分に尽くされているときには有効であるとしています。また、大阪地裁平成10年8月31日判決は、変更解約告知といわれるものは、その実質は労働条件変更のために行われる解雇であるが、労働条件変更については就業規則の変更によってされるべきものであり、ドイツ法と異なって明文のない我が国においては変更解約告知という独立の類型を設けることは相当でない。本件解雇の意思表示はその実質は整理解雇にほかならないのであるから整理解雇と同様の厳格な要件が必要であるとしています。
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人員整理のための整理解雇
業績の悪化や経営不振などといった使用者側の事情によって人員整理のためにおこなわれる解雇を整理解雇と言います。
この整理解雇が問題となった裁判例を見ると,東京高裁昭和54年10月29日判決が,整理解雇は,事業部門の閉鎖が企業の合理的運営上やむを得ない必要に基づいており,右事業部門に勤務する従業員を他の事業部門の同一あるいは類似の職種に配転する余地がなく,解雇対象者の選定が客観的・合理的基準に基づくものであることの三要件を充足する場合に有効となる。また,労働協約や就業規則における人事協議条項に基づく協議を経ない場合,その他労働者に対する十分な説明を欠くなど手続上の信義則に違反した場合には,整理解雇は権利の濫用として無効となるとしています。また,東京地裁平成12年1月21日決定が,いわゆる整理解雇の四要件は,整理解雇の範疇に属すると考えられる解雇について解雇権の濫用に当たるかどうかを判断する際の考慮要素を類型化したものであって各々の要件が存在しなければ法律効果が発生しないという意味での法律要件ではなく,解雇権濫用の判断は,本来事案ごとの個別具体的な事情を総合考慮して行うほかないものであるとしています。
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労働契約法16条が定める解雇権の濫用法理
労働契約法16条は,「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする」と規定しています。
この規定は,裁判例の蓄積によって確立した解除権濫用法理を明文化したものです。この法理に関する裁判例を見ると,最高裁昭和50年4月25日判決が,「使用者の解雇権の行使も,それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には,権利の濫用として無効になる」としています。また,最高裁昭和52年1月31日判決が,労働者に解雇事由がある場合においても,「当該具体的な事情のもとにおいて,解雇に処することが著しく不合理であり,社会通念上相当なものとして是認することができないときには,当該解雇の意思表示は,解雇権の濫用として無効になる」としています。
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労働契約の内容となる就業規則の合理性
労働者と使用者との間の労働契約について労働契約法7条は、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるものと規定しています。
この就業規則の効力について、最高裁昭和61年3月13日判決は、就業規則が労働者に対し一定の事項につき使用者の業務命令に服すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものである限りにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができるとしています。
また、会社の都合による特別な場合のほかは満65歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日が到来したときは、それ以後雇用契約を更新しないと定める就業規則の合理性について、最高裁平成30年9月14日判決は、期間雇用社員について労働契約法にいう合理的な労働条件を定めるものであるとしています。
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時間外・休日・深夜労働についての割増賃金の支払い
使用者は、時間外・休日・深夜労働について割増賃金を支払わなければならない(労働基準法37条1項4号)とされています。そして、この割増賃金は、時間外労働の場合は通常の労働時間又は労働日の賃金の25%以上、休日労働の場合は35%以上(同法同条1項2項)、深夜労働の場合は通常の労働時間の賃金の25%以上(同法同条4項)とされています。
この割増賃金の支払いと通常の労働時間の賃金に支払いについて、裁判例は、支払いが通常の労働時間の賃金と割増賃金部分との判別が不可能な場合には割増賃金が支払われたとはいえないとしています(最高裁平成6年6月13日判決、最高裁平成24年3月8日判決、最高裁平成29年7月7日判決等)。
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職場環境への配慮等についての親会社の責任
使用者は、労働者の職場環境に配慮する義務を負うとされますが、グループ企業においては、子会社の職場環境についてコンプライアンスを統括する親会社の責任が問題とされることがあります。
この親会社の責任が問題となった裁判例を見ると、親会社が自社及び子会社等のグループ会社における法令遵守体制を整備し法令等の遵守に関する相談窓口を設け相談への対応を行っていたという事案に関し、最高裁平成30年2月15日判決は、親会社が子会社の従業員による相談の申出に求められた対応をしなかったことをもって信義則上の義務違反とはいえないとしています。
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労働契約の内容となる就業規則の合理性
労働者と使用者との間の労働契約について労働契約法7条は、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるものと規定しています。
この就業規則の効力について、最高裁昭和61年3月13日判決は、就業規則が労働者に対し一定の事項につき使用者の業務命令に服すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が合理的なものである限りにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができるとしています。また、会社の都合による特別な場合のほかは満65歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日が到来したときは、それ以後雇用契約を更新しないと定める就業規則の合理性について、最高裁平成30年9月14日判決は、期間雇用社員について労働契約法にいう合理的な労働条件を定めるものであるとしています。
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使用者の安全配慮義務と労働者のメンタルヘルス
使用者は、労働者に対しその安全に配慮する義務を負うとされるところ、労働者のメンタルヘルスに関してもこの安全配慮義務違反が問題となります。
この問題に関する裁判例を見ると、過重な業務によってうつ病が発症し増悪した場合に関し、最高裁平成26年3月24日判決は、使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり、当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって過失相殺をすることはできないとしています。
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会社分割における労働契約の承継
会社分割においては、その事業に「主として従事する労働者」であって分割契約または分割計画に氏名が記載された者であるか、一定期間内に異議を申し出たかどうか等により労働契約の承継の有無が決まるとされています(労働契約承継法2条1項1号、3条、4条1項4項、5条1項3項)。
この労働契約の承継の効力について、最高裁平成22年7月12日判決は、労働契約の承継のいかんが労働者の地位に重大な変更をもたらし得るものであることから、分割会社が分割計画書を作成するに先立ち、承継される営業に従事する個々の労働者との間で協議を行わせ当該労働者の希望等をも踏まえつつ分割会社に承継の判断をさせることによって、労働者の保護を図ろうとする5条協議の趣旨からすると、承継法3条に基づき労働契約が承継対象となった特定の労働者との関係において5条協議が全く行われなかった場合及び5条協議が行われた場合であっても、その際の分割会社からの説明や協議の内容が著しく不十分で法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合、当該労働者は承継法3条の定める労働契約承継の効力を争うことができるとしています。
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