Archive for the ‘多重債務>私的整理’ Category
履行不能についての民法の改正
履行不能について民法は改正を行っています。
① 412条の2第1項は,「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは,債権者は,その債務の履行を請求することができない」として,履行不能かどうかが「契約その他の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」判断されることを規定しています。
② 同条第2項は,「契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは」「その履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない」として,原始的不能の場合の損害賠償について規定しています。
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履行期と履行遅滞についての民法の改正
履行期と履行遅滞について民法は改正を行っています。
確定期限があるときについての412条1項と期限を定めなかったときについての同上3項は、改正前民法と同様ですが、不確定期限があるときについて定める同条2項は、「債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う」として、債務者が期限の到来を知った時だけでなく、期限の到来した後に履行の請求を受けた時にも履行遅滞になることを規定しています。
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法定利率についての民法の改正
法定利率について民法は改正を行っています。
① 404条1項は,「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利息が生じた最初の時点における法定利率による」とし,同条2項は,法定利率は,「年3パーセント」としています。
② 同条3項は,法定利率は,「3年を一期とし,一期ごとに」「変動する」として変動制を定めています。
③ 同条4項は,「各期における法定利率は」「法定利率に変動があった期のうち直近のもの」「における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合」を直近変動期における法定利率に加算し,又は玄さんした割合」とし,同条5項は,基準割合とは,「各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率」「の合計を60で除して計算した割合」としています。
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詐害行為取消の要件についての民法の改正
詐害行為取消の要件について民法は改正を行っています。
詐害行為取消の要件は,ア「債務者が債権者を害することを知って」「行為」をしたこと,イ「取消しを裁判所に請求」したこと,ウ受益者が「その行為の時において債権者を害することを知らなかった」場合でないこと(以上につき424条1項),エ「財産権を目的としない行為」でないこと(同条2項),オ債権者の債権が詐害行為「の前の原因に基づいて生じたものである場合」であること(同条3項),カ債権者の債権が「強制執行により実現することのできないもの」でないこと(同条4項)であるところ,改正民法は,さらに以下のような規定をおいています。
1 相当の対価を得てした財産の処分行為(相当価格処分行為)について
民法424条の2は,相当価格処分行為について,①「その行為が,不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により,債務者において隠匿,無償の供与その他の債権者を害することとなる処分」「をするおそれを現に生じさせるものであること」,②「債務者が,その行為の当時,対価として取得した金銭その他の財産について,隠匿等の処分をする意思を有していたこと」,③「受益者が,その行為の当時,債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと」のすべてに該当していた場合に限り,詐害行為として取消請求できるとしています。
2 特定の債権者に対する担保の供与等について
民法424条の3の1項は,既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について,①「その行為が,債務者が支払不能」「の時に行われたものであること」,②「その行為が,債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること」のいずれにも該当していた場合に限り,詐害行為として取消請求できるとしています。
また,同条2項は,既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為が「債務者の義務に属せず,又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合」について,①「その行為が,債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること」,②「その行為が,債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものである」のいずれにも該当していた場合には詐害行為として取消請求できるとしています。
3 過大な代物弁済等について
民法424条の4は,受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて,民法424条に規定する要件に該当するときは,「その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分について」詐害行為として取消請求できるとしています。
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債権者代位権についての民法の改正
債務者に対する債権を債権者が実現する手段として第三者に対し行使する権限として債権者代位権がありますが,改正民法は,これについて以下のような改正を行っています。
① 被保全債権の期限到来前は,保存行為を除き代位権を行使できないことにし,裁判上の代位を廃止(423条2項)しました。また,強制執行により実現することができないもの(同条1項),差押えを禁止された権利(同条1項但書)につき,被代位権利として行使できないとしました。
② 「被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは,相手方に対し,その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる」(423条の3)とする一方で,「被代位権利の目的が可分であるときは,自己の債権の額の限度においてのみ,被代位権利を行使することができる(423条の2),債務者は,債権者が代位権を行使した場合でも「被代位権利について,自ら取立てその他の処分をすること」ができ,「相手方も,被代位権利について,債務者に対して履行をすることを妨げられない」(423条の5)として,債権回収機能を限定的に認めました。
③ 債権者が「被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは,遅滞なく,債務者に対し,訴訟告知をしなければならない(423条の6)としました。
④ 「登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は,その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは,その権利を行使しないときは,その権利を行使することができる。この場合においては,前3条の規定を準用する」(423条の7)として登記・登録請求権を保全するための債権者代位権の規定を設けました。
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債権の消滅時効についての民法・商法の改正
改正前の民法において,債権の消滅時効期間は原則として10年とされ,また,5年,3年,1年を時効期間とする短期消滅時効制度がありました。また,商法は,商事債権の消滅時効期間を5年としていました。さらに,時効の中断という制度がありました。ところが,これらの制度は,大きく改正されました。
① 改正民法166条1項1号は,「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」と規定して,債権の消滅時効期間を5年間としました(なお,債権者が権利行使をできる時をしらない場合については,同条同行2項で「権利を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき」と規定して従前と同様に10年間としています)。また,商法における商事債権の消滅時効についての規定が削除されました。
② 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については,改正民法167条が「二十年間」とすると規定して,消滅時効期間を20年間としました。
③ 短期消滅時効についての規定は削除され,債権の消滅時効期間は5年間に統一されました。
④ 時効の中断が時効の完成猶予及び更新に変わりました(改正民法147条)。そして,同条は,その事由について「裁判上の請求」「支払督促」等と規定しました。
⑤ 改正民法151条が,「権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは」「時効は完成しない」と規定して協議を行う旨の合意による時効の完成猶予の制度を導入しました。
⑥ 改正民法161条が,「その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は,時効は,完成しない」と規定して天災等の場合における時効の完成猶予期間を3か月としました。
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時効の中断事由としての差押え、仮差押え、仮処分
時効の中断事由として、差押え、仮差押え、仮処分が規定されている(民法154条等)ところ、差押え等によって時効中断の効力が生じるのはいつか、また、時効中断の効力はいつまで続くのかという問題があります。
まず、差押え等によって時効中断の効力が生じるのはいつかという問題に関する裁判例を見ると、動産執行に関し、最高裁昭和59年4月24日判決は、債権者が執行官に対し執行の申立をした時としていますが、金銭執行に関し、最高裁昭和43年3月29日判決は、債務名義に表示の住所に執行債務者が所在しないために執行が不能に終わった場合には、同金銭債権について時効中断の効力は生じないとしています。
次に、時効中断の効力はいつまで続くのかという問題に関する裁判例を見ると、仮差押えに関し、最高裁平成10年11月24日判決は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は継続し、被保全債権につき本案の勝訴判決が確定しても仮差押えによる時効中断の効力が消滅するものではないとしています。また、最高裁平成6年6月21日判決は、仮差押解放金の供託により仮差押執行が取り消されても時効中断の効力は継続するとしています。
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元本債務・利息債務の承認と相殺と債務の承認
時効の中断事由のひとつとして「承認」(民法147条3号、156条)が規定されているところ、どのような行為がこの「承認」にあたるかが問題となります。
この点、債務の一部の弁済は、債務全体の承認とされます(大審院大正8年12月26日判決)。また、利息の支払いは、元本債務についての承認とされます(大審院昭和3年3月24日判決)。さらに、支払いの猶予や延期の懇請も債務の承認となります(大審院大正10年3月4日判決)。
一方、他の事情が伴わない限り、相殺の意思表示に対し異議を述べなかったとしても債務を承認したことにはならない(大審院大正10年2月2日判決)し、利息債権についての強制執行に対し異議を述べなかったとしても元本債務を承認したことにはならない(大審院大正11年4月14日判決)とされています。
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第三者に対する訴訟告知
債権者から訴訟を提起された保証人が主たる債務者に対しそのことを通知するといったように当事者が当該訴訟に参加できる第三者に対し訴訟が係属したことを通知する訴訟告知という制度があります。
告知については当事者にくわえて補助参加人や告知を受けた者も告知できるとされています。また、告知を受けるのは、当該訴訟に参加することができる第三者とされています。
告知をされても参加を強制されるわけではありませんが、参加人となる利害関係のある被告知者は、参加しなかった場合や遅れて参加した場合でも告知に対応して参加できた時点に参加したものとして参加的効力を受けるとされています。
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差押債権者による取立て
差押命令が債務者に送達されて1週間が経過すると、差押債権者は、第三債務者から直接取立てをすることができます(民事執行法155条1項)。そして、この取立権によって、差押債権者は、自己の名において、差押債権に関し債務者の権利を行使できるとされており、最高裁平成11年9月9日判決は、生命保険に関し債務者の有する解約権を行使することができるとしています。
差押債権者が取立権を行使して第三債務者から支払いを受けたときはその限度で弁済を受けたものとみなされます(同法155条2項)。差押債権者は、取立権の行使により第三債務者から支払いを受けたときは直ちにその旨を執行裁判所に届け出なければならないとされています(同法155条3項)。
また、差押債権者が取立権に基づいて取立てをしたが第三債務者が支払わない場合や差押等が競合したのに供託しない場合、差押債権者は、取立訴訟を提起することができます(同法157条)。そして、差押債権者は、取立訴訟の判決に基づいて第三債務者の財産に対して強制執行をすることができます。
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