Archive for the ‘お知らせ’ Category
遺産分割協議の債務不履行による法定解除
遺産分割においては共同相続人のひとりが相続財産を取得する代わりに親の世話をすることを他の共同相続人と約束することがありますが,この約束が守られなかった場合に債務不履行を理由として遺産分割協議を解除できるのかという問題があります。
この問題に関し,最高裁平成元年2月9日判決は,「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に,相続人の一人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであつても,他の相続人は民法五四一条によつて右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。 けだし,遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し,その後は右協議において右債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関 係が残るだけと解すべきであり,しかも,このように解さなければ民法九〇九条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ,法的安定性が著しく害されることになるからである」と判示してこの債務不履行による解除を否定しています。
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ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)
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遺留分侵害額請求権の代位行使の可否
遺留分を侵害された場合,遺留分権利者とその承継人が遺留分侵害額請求権者とされるところ,この権利者や被相続人の債権者が自己の債権を保全するために遺留分侵害額請求権を代位行使することの可否という問題があります。
この問題に関し,法改正前の遺留分減殺請求権について最高裁平成13年11月22日判決が「遺留分制度は,被相続人の財産処分の自由と身分関係を背景とした相続人の諸利益との調整を図るものである。民法は,被相続人の財産処分の自由を尊重して,遺留分を侵害する遺言について,いったんその意思どおりの効果を生じさせるものとした上,これを覆して侵害された遺留分を回復するかどうかを,専ら遺留分権利者の自律的決定にゆだねたものということができる」「そうすると,遺留分減殺請求権は,前記特段の事情がある場合を除き,行使上の一身専属性を有すると解するのが相当であり,民法423条1項ただし書にいう「債務者ノ一身ニ専属スル権利」に当たるというべきであって,遺留分権利者以外の者が,遺留分権利者の減殺請求権行使の意思決定に介入することは許されないと解するのが相当である。民法1031条が,遺留分権利者の承継人にも遺留分減殺請求権を認めていることは,この権利がいわゆる帰属上の一身専属性を有しないことを示すものにすぎず,上記のように解する妨げとはならない。なお,債務者たる相続人が将来遺産を相続するか否かは,相続開始時の遺産の有無や相続の放棄によって左右される極めて不確実な事柄であり,相続人の債権者は,これを共同担保として期待すべきではないから,このように解しても債権者を不当に害するものとはいえない」と判示して代位行使を否定しています。
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遺産共有持分と他の共有物が併存する場合の分割手続き
遺産分割前の遺産(相続財産)は共同相続人の共有(遺産共有)となるところ,遺産共有の状態にある共有持分とその他の共有持分が併存する場合にその分割の手続きが問題となります。
この問題に関し,最高裁平成25年11月29日判決は,「共有物について,遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分(以下「遺産共有持分」といい,これを有する者を「遺産共有持分権者」という。)と他の共有持分とが併存する場合,共有者(遺産共有持分権者を含む。)が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり,共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与された財産は遺産分割の対象となり,この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべきものと解するのが相当である」「民法258条に基づく共有物分割訴訟は,その本質において非訟事件であって,法は,裁判所の適切な裁量権の行使により,共有者間の公平を保ちつつ,当該共有物の性質や共有状態の実情に適合した妥当な分割が実現されることを期したものと考えられることに照らすと,裁判所は,遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ,その者に遺産共有持分の価格を賠償させてその賠償金を遺産分割の対象とする価格賠償の方法による分割の判決をする場合には,その判決において,各遺産共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で,遺産共有持分を取得する者に対し,各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができるものと解するのが相当である。」と判示しています。
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遺産分割の当事者と遺産確認の訴え
遺産分割は,被相続人の共同相続人間で行われることになりますが,遺産分割の前にその相続分を全部譲渡した共同相続人がその前提となる財産の遺産帰属性を確認することができるのかという問題があります。
この問題に関し,最高裁平成26年2月14日判決は,「遺産確認の訴えは,その確定判決により特定の財産が遺産分割の対象である財産であるか否かを既判力をもって確定し,これに続く遺産分割審判の手続等において,当該財産の遺産帰属性を争うことを許さないとすることによって共同相続人間の紛争の解決に資することを目的とする訴えであり,そのため,共同相続人全員が当事者として関与し,その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共 同訴訟と解されているものである」「しかし,共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する割合的な持分を全て失うことになり,遺産分割審判の 手続等において遺産に属する財産につきその分割を求めることはできないのであるから,その者との間で遺産分割の前提問題である当該財産の遺産帰属性を確定すべき必要性はないというべきである。そうすると,共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しないと解するのが相当である」と判示しています。
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相続財産から生ずる果実と遺産分割
相続財産の中に不動産がある場合,遺産分割が行われるまでにその賃料債権という果実が生じることがありますが,遺産分割によってその帰属が影響を受けるのかが問題となります。
この問題に関し,最高裁平成17年9月8日判決は,「遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けないものとい うべきである」と判示しています。
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特別受益の持戻しと生命保険金請求権
共同相続人の中に特別受益を得た者がいるときは,その持戻し(民法903条,904条)を行うことになりますが,その特別受益財産として持戻しの対象となるのかが問題となるものとして生命保険金請求権があります。
この生命保険金請求権の持戻しが問題となった最高裁平成16年10月29日判決は,「養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である。もっとも,上記死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は,被相続人が生前保険者に支払ったものであり,保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相 当である。上記特段の事情の有無については,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率のほか,同居の有無,被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活 実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである」と判示しています。
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生存配偶者の居住権の保障
2018年における相続法の改正により,生存配偶者に配偶者短期居住権と配偶者居住権という新しい居住権が規定されました。
配偶者居住権について,民法1028条1項は,「被相続人の配偶者」「は,被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において,次の各号のいずれかに該当するときは,その居住していた建物」「の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する」とし,同法1030条は,その存続期間について,「配偶者居住権の存続期間は,配偶者の終身の間とする。ただし,遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき,又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは,その定めるところによる」と規定しています。
また,同法1037条1項は,配偶者短期居住権について,「配偶者は,被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には,次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間,その居住していた建物」「の所有権を相続又は遺贈により取得した者」「に対し,居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては,その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有するとし,その存続期間について,「一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日,二 前号に掲げる場合以外の場合 第三項の申入れの日から六箇月を経過する日」と規定しています。
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特別受益における具体的相続分
民法903条,904条は,共同相続人のなかに,被相続人から遺贈を受け,または婚姻,養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは,そのような特別受益の持戻しを行うとして相続開始の時に被相続人が有した財産の価格に特別受益財産の価格を加えたものを相続財産とみなし,このみなし相続財産について法定・指定相続分の割合によって算定した相続分から当該遺贈または贈与の価格を控除した残額をその相続人の相続分(具体的相続分)としているところ,この具体的相続分の法的性質という問題があります。
この法的性質との関係で,具体的相続分の価格または割合の確認の利益が問題となった最高裁平成12年2月24日判決は,「具体的相続分は,このように遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって,それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず,遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり,右のような事件を離れて,これのみを別個独立に判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない」として「共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは,確認の利益を欠くものとして不適法である」と判示しています。
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労働者と使用者の合意による労働条件の変更
労働者及び使用者は,その合意により労働契約の内容である労働条件を変更することができる(労働契約法8条)とされているところ,この合意が認められるかどうかが問題となることがあります。
就業規則による労働条件の不利益変更についてこの同意の有無が問題となった最高裁平成28年2月19日判決は,「就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されるべきものと解するのが相当である」と判示しています。
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有期契約労働者の更新拒絶(雇止め)の適法性
契約期間の定めのある有期労働者は,契約期間が満了するとその契約関係は終了することになりますが,契約の更新が繰り返されているような場合には更新の拒絶(雇止め)についてその適法性が問題となります。
この有期労働者の雇止めの適法性が問題になった最高裁昭和61年12月4日判決は,「(1)P工場の臨時員は,季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく,その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり,上告人との間においても五回にわたり契約が更新されているのであるから,このような労働者を契約期間満了によつて雇止めにするに当たつては,解雇に関する法理が類推され,解雇であれば解雇権の濫用,信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかつたとするならば,期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。(2)しかし,右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上,雇止めの効力を判断すべき基準は,いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。(3) したがつて,後記のとおり独立採算制がとられている被上告人のP工場において,事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり,その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく,臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には,これに先立ち,期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らな かつたとしても,それをもつて不当・不合理であるということはできず,右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである」と判示しています。
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