Archive for the ‘お知らせ’ Category

養育費を請求しないという合意の効力

2020-11-24

 離婚する夫婦に子供がいる場合、子供の養育費の扱いが問題となるところ、監護親になる側が以後養育費を一切請求しないとか一定額を受領した上で以後養育費を一切請求しないといった合意をすることがあります。

 この合意が問題となった裁判例を見ると、父母の間の合意は扶養料算定の一事情とすることができるが子を拘束しないとするもの(東京高裁昭和38年10月7日決定)や父母の間の合意は債権的な効力を持つにすぎないとして子を拘束しないとするもの(札幌高裁昭和51年5月31日決定)があります。

 一方、事情の変更がない限り、父母の間の合意は子を拘束するとするもの(札幌高裁昭和51年5月31日決定)もあります。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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民間委託と国家賠償責任

2020-11-16

 行財政改革の一環として行政事務が民間に委託されることが増えていますが、事務を委託した国や公共団体の国家賠償法上の責任が問題となります。

 この問題に関する裁判例を見ると、最高裁平成19年1月25日判決は、社会福祉法人が設置運営する児童養護施設の長は、本来都道府県が有する公的な権限を委譲されてこれを都道府県のために行使するものと解され、施設の職員等による養育監護行為は、都道府県の公権力の行使にあたる公務員の職務行為であるとして国家賠償法上の責任を認めています。

 また、東京地裁平成19年11月27日判決は、家庭福祉員は区の公務員・被用者ではないとしながら、家庭福祉員の調査を怠り、虐待が続発するのを放置し、制度運営要綱所定の権限を行使しなかった点に過失を認め、その権限不行使が著しく合理性を欠く違法なものであるとして国家賠償法上の責任を認めています。

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民法715条、同法709条による使用者・被用者の責任と国家賠償法1条

2020-11-09

 民法715条や同法709条によって使用者や被用者が損害賠償責任を負うことがありますが、国や公共団体が国家賠償法1条1項に基づく責任を負う場合に公務員個人に対して直接損害賠償を請求できないとされている(最高裁昭和30年4月19日判決等)ことが上記の責任にどう関係するかが問題となります。

 この点に関する裁判例を見ると、国・公共団体以外の者の被用者が第三者に損害を加えたが国・公共団体が同法1条1項に基づく損害賠償責任を負う場合について、最高裁平成19年1月25日判決は、被用者個人が民法709条に基づく損害賠償責任を負わないだけでなく、その使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を負わないとしています。

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遺留分の減殺請求

2020-11-02

 遺留分の減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき贈与・遺贈のあったことを知ったときから1年で消滅し、10年の除斥期間にかかる(民法1042条)とされていますが、遺留分の減殺請求は裁判外で行うことも可能とされています(最高裁昭和41年7月14日判決)。そして、遺贈、死因贈与、生前贈与という順序で減殺されます(同法1033条)。

 なお、被相続人の全財産が遺贈されたのに対し遺留分権利者が遺贈の効力を争わないで遺産分割を申入れた場合に関し、最高裁平成10年6月11日判決は、特段の事情がない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれているとしています。

 減殺請求を受けた受遺者・受贈者は、現物返還に代えて価額弁償をすることができる(同法1041条)とされ、最高裁平成12年7月11日判決は、価額賠償は、目的財産の各個につき許されるとしています。

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みなとタバコルール – 港区環境美化の推進等に関する条例

2020-11-01

港区環境美化の推進及び喫煙による迷惑の防止に関する条例(平成9年10月3日・条例第42号)の8条と9条です。


第8条(投棄の禁止)
 区民等は,公共の場所において,吸い殻等及び空き缶等をみだりに捨ててはならない。


第9条(みなとタバコルール)
 1 区民等は,公共の場所において,たばこの吸い殻をみだりに捨ててはならない。
 2 区民等は,公共の場所(指定喫煙場所を除く。以下同じ。)において,喫煙をしてはならない。
 3 区民等は,公共の場所以外の場所において喫煙する場合に,公共の場所にいる区民等にたばこの煙を吸わせることがないよう配慮しなければならない。
 4 事業者等(区,事業者及び関係行政機関をいう。以下同じ。)は,公共の場所にいる区民等が事業者等の有する敷地(指定喫煙場所を除く。以下同じ。)内で喫煙する者のたばこの煙を吸わされることがないようにするため,事業者等の有する敷地内において,灰皿の撤去又は移設,喫煙場所の確保その他の環境の整備を行わなければならない。
 5 事業者等は,従業員その他事業活動に関わる者に,第一項から第三項までの規定を遵守させるよう努めなければならない。

2020 WARM BIS参加のお知らせ

2020-11-01

 令和2年度の冬の地球温暖化対策の一つとして環境省が推進する,“暖房時の室温20℃設定で心地よく過ごすことのできるライフスタイル”「WARM BIZ」(ウォームビズ)に,ひらま総合法律事務所は参加しています。

 今年度は,厚生労働省が公表した新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を実践に取り入れつつ,過度な暖房使用を控えながらも快適に過ごすための工夫を行い,暖かく楽しく過ごせる家庭・職場環境づくりを図って低酸素社会作りに貢献します。

 期間は昨年と同様,11月1日から3月31日までです。ご理解をいただきますようお願いします。

厚生労働省:新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を公表しました
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html (外部リンク)

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遺留分の侵害とその額の算定

2020-10-26

 被相続人による贈与や遺贈によって奪われることのない相続人に留保される相続財産についての一定の割合を遺留分と言います。

 兄弟姉妹以外の相続人は、
 ① 直系尊属だけが相続人となる場合は3分の1、
 ② それ以外の場合は2分の1が遺留分とされています(民法1028条)。

 この遺留分は、相続の開始した時に被相続人が有していた財産の価額に贈与した財産の価額を加えた額から債務の額を控除した額に基づいて算定されます(同法1029条1項)。

 ここで算入される贈与は、相続が開始する前1年間にされたものですが、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは1年前に行われたものも算入されます(同法1030条)。

 そして、遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で遺贈及び贈与の減殺を請求することができます(同法1031条)。

 遺留分権利者及びその承継人の取得する額が遺留分の額に達しないときにその不足額が侵害額となります。この遺留分の侵害額の算定に関する裁判例を見ると、相続人のうちの一人に対し財産の全部を相続させる旨の遺言がなされた場合に関し、最高裁平成21年3月24日判決は、特段の事情のない限り、遺留分権利者の法定相続分に応じた相続債務の額を遺留分の額に加算することは許されないとしています。

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遺言が無効となる場合

2020-10-19

 財産処分の方法として遺言が認められていますが、その効力が否定され無効となる場合があります。

 まず、遺言能力のない者による遺言は無効とされます。民法は15歳を遺言のできる年齢としており(民法961条)、15歳以上で意思能力があれば未成年者や被保佐人でも単独で遺言をすることを認めていますが、成年被後見人については意思能力を回復していることに加えて医師2名以上の立会いが必要としています(同法973条)。意思能力が問題となった裁判例を見ると、事理弁識能力を欠くとして遺言を無効とした事例(東京高裁平成12年3月16日判決等)がありますが、統合失調症であっても無効としなかった事例(最高裁平成10年3月13日判決)があります。

 また、内容が不特定・不明確な遺言は無効とされます。裁判例を見ると、全財産を「公共に寄付する」という遺言に関し、最高裁平成5年1月19日判決は、受遺者の特定を遺言執行者にゆだねたものとして有効としています。一方、遺産の全部をある者に任せるという遺言に関し、東京高裁昭和61年6月18日判決は、遺言者とその者との関係その他の状況から遺贈と解するのが困難であるとして無効としています。

 さらに、二人以上の者が同一の証書で行う共同遺言は無効(同法975条)とされます。裁判例を見ると、二人の遺言の一方に氏名を自書しないという方式違背がある場合に関し、最高裁昭和56年9月11日判決は、全体が無効としていますが、別人の遺言書が合綴されている場合に関し、最高裁平成5年10月19日判決は、それが各別の用紙に記載され、容易に切り離すことができるものであれば有効としています。

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婚姻・内縁の不当破棄による損害賠償

2020-10-12

 婚約、内縁は身分上の関係として婚姻と区別されます。しかし、これを不当に破棄すれば婚姻を破壊した場合と同様に損害賠償義務を負うことになります(民法709条、710条等)。

 婚姻に関する裁判例を見ると、長期間にわたり肉体関係が継続した事案に関し、最高裁昭和38年9月5日判決は、結納の授受や同棲がなかったとしても婚約が成立するとした上で、これを不当に破棄した者は慰謝料の支払義務を負うとしています。

 また、内縁に関し、最高裁昭和33年4月11日判決は、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し、婚約予約の不履行や不法行為を理由として損害賠償を請求できるとし、最高裁昭和38年2月1日判決は、第三者であっても内縁関係に不当に干渉してこれを破綻させた者は、不法行為による損害賠償義務を負うとしています。

 一方、住居・生計が別で子供の養育は男性側が行うという約定をして意図的に婚姻を回避していたという事案に関し、最高裁平成16年11月18日判決は、その継続について法的な権利・利益を有するとはいえないとして、その関係を突然かつ一方的に解消されたとしても不法行為による慰謝料の支払を請求できないとしています。

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不貞行為(不倫)に基づく不法行為責任

2020-10-05

 夫婦の一方が不貞行為(不倫)を行った場合、不貞行為に基づく不法行為責任が問題となります。

 そこで、この不貞行為による不法行為責任が問題になった裁判例を見ると、故意・過失が認められる限り、夫婦の一方と肉体関係を持った第三者は、相手方を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両者の関係が自然の情愛によって生じたかどうかにかかわらず、他の配偶者の権利を侵害したとして不法行為責任を負います(最高裁昭和54年3月30日)が、夫婦の婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特別の事情のない限り、第三者は、他の配偶者に対して不法行為責任を負わない(最高裁平成8年3月26日判決)とされています。

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