Archive for the ‘不動産’ Category

共有物分割請求訴訟と遺産分割審判の関係

2019-09-24

共同相続人が遺産を分割する場合、遺産分割の手続(民法907条)によることになりますが、第三者が共同相続人か共有持分権を譲り受けた場合にどのような手続きによって共同所有関係を解消するかという問題があります。

 そこで、この問題に関する裁判例を見ると、最高裁昭和50年11月7日判決が、「第三者が右共同所有関係の解消を求める方法として裁判上とるべき手続きは、民法907条に基づく遺産分割審判ではなく、民法258条に基づく共有物分割訴訟である」としつつ「右分割判決によって共同相続人に分与された部分は、なお共同相続人間の遺産分割の対象となる」と判示しています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

分割される共有物における共有関係の存続

2019-07-22

 共有関係が存続することを希望する者が存在する場合に共有物の一部を分割し残りの部分を共有にしておくことが共有物の分割請求訴訟において認められるのかという問題があります。

 このことが問題となった裁判例を見ると、最高裁平成4年1月24日判決が、土地の共有者が多数であるときに分割を請求する者の持分を分割し、その余を共有とすることを認めています。また、東京地裁平成5年6月30日判決が、土地の一部を共有とすることを認めています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

共有物の価格賠償による分割

2019-07-16

 物の所有の形態としては単独所有のほかに共同所有(共有)が認められるところ、「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」(民法256条1項)、「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる」(同法258条1項)などと規定されています。そこで、共有者は、共有物を分割することができますが、その方法として価格賠償による分割が認められるかが問題となります。

 この点、最高裁昭和62年4月22日判決は、「現物分割するに当たっては、・・・持分の価格に応じた分割をするとしても・・・取得する現物の価格に過不足をきたす事態の生じることは避けがたいところであり、このような場合には、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすることも現物分割の一態様として許される」として価格賠償による分割を認めています。さらに、最高裁平成8年10月31日は、上記のような制限をつけずに、一定の要件のもとで全面的価格賠償を認めています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

有名人による悪質商法の宣伝・広告

2019-07-08

 詐欺業者等がタレントなどの有名人を使用して宣伝・広告を行った場合、その有名人が悪質商法の推奨者として責任を負うかどうかという問題があります。

 そこで、悪質商法の宣伝・広告にかかわった有名人の責任が問題となった裁判例をみると、土地取引業者の宣伝パンフレットに推奨文を乗せたことが問題となった事案に関する大阪地裁昭和62年3月30日判決が、「被告会社あるいはその取り扱う商品の推薦を行う場合には、その推薦内容を裏付けるに足りる調査を行うべき義務がある」として不法行為の幇助責任を認めています。

 これに対し、抵当証券業者のテレビCMに出演したことが問題となった事案に関する東京地裁平成6年7月25日判決は、「テレビ放映することを前提とした広告に出演する者は、当該広告の視聴者が当該出演者の知名度、経験等を信用しその推奨する業者、商品であるということをひとつの動機として取引した場合に損害を被る危険があることを予見し得る場合には、当該広告に出演することを回避すべき義務を負う」としつつ、本件については自ら調査して予見すべき義務はないとして不法行為責任を否定しています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

終身借家権(終身建物賃貸借)

2019-04-15

 建物の賃貸借に関し、借家人が生きている限り存続し、死亡したときに終了する終身借家権(終身建物賃貸借制度)という制度が認められています(高齢者の居住の安定確保に関する法律)。そして、この借家契約においては、

① 書面によって行われること(同法54条2号、57条)

② 都道府県知事の認可事業であること(同法52条以下)

③ 建物の規模及び設備等が国土交通省例で定める基準に適合すること

④ 借家人は60歳以上の者であること

 などが要件とされ、不確定期限(同法52条、54条2号)で、相続権が排除(同法52条)されます。

 なお、上記の制度の他に、期間が定められた契約で賃借人が死亡した場合には期間が満了する前でも契約が終了する期間付き死亡時終了建物賃貸借制度があります。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

定期借家契約を終了させる通知

2019-04-08

 契約の更新がなく期間の満了により終了する契約期間が1年以上の定期借家契約においては、期間満了の1年前から6か月までの間に、家主は、借家人に対し、期間の満了により賃貸借が終了する旨の通知をしなければならず、この通知を怠ると家主は、借家人に対し、終了をもって対抗することができません(借地借家法38条4項)。

 ただ、この終了の通知を怠った場合でも、改めてその通知をした日から6か月が経過することにより定期借家契約は終了する(同法38条4項但書)とされており、東京地裁平成21年3月19日判決は、「借地借家法38条所定の定期建物賃貸借契約においては、契約の更新がないことを有効に定めることが可能であるから、契約は期間満了によって終了する。すなわち、賃貸人が借地借家法26条1項所定の更新しない旨の通知をしなくても、同項に基づいて従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされることはない。

 また、期間満了後に賃借人が建物の使用を継続し、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったとしても、同条2項に基づいて従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされることはないし、更新しない旨の明示かつ有効な合意が存在することから、民法619条1項に基づいて従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定(法律上の事実推定)されることもない(あるいは当然に推定が覆される)ものと解される。」  「他方、期間の満了によって直ちに賃借人が建物を明け渡さなければならないとすると、賃借人が期間を失念していたような場合には、代替する借家を見つけていないこともあり得るので、賃借人にとって酷な事態になりかねない。

 そこで、借地借家法38条4項は、契約期間が1年以上である場合には、期間満了の1年前から6か月前までの間に、契約が終了する旨の通知を賃貸人に義務づけ、賃借人に契約終了に関する注意を喚起し、代替物件を探すためなどに必要な期間を確保することとした。

 そして、通知期間内に通知を怠った 場合には、これにより賃借人が不測の損害を被ることにもなりかねないので、賃借人を保護する観点から、賃貸人が通知期間後の通知をしてから6か月間賃貸借の終了を対抗することができないものとした。

 ただし、これは一種の制裁として賃借人による建物の占有が適法化されるものであるから、賃借人の側から契約終了を認めて契約関係から離脱することは自由にできるものと解される。」  「借地借家法38条所定の定期建物賃貸借契約のうち契約期間が1年以上のものについて、賃貸人が期間満了に至るまで同条4項所定の終了通知を行わなかった場合、賃借人がいかなる法的立場に置かれるかについては争いがあるところ、上記…で述べた定期建物賃貸借契約や終了通知の法的性格ないし法的位置づけ等に照らすと、定期建物賃貸借契約は期間満了によって確定的に終了し、賃借人は本来の占有権原を失うのであり、このことは、契約終了通知が義務づけられていない契約期間1年未満のものと、これが義務づけられた契約期間1年以上のものとで異なるものではないし、後者について終了通知がされたか否かによって異なるものでもない、 ただし、契約期間1年以上のものについては、賃借人に終了通知がされてから6か月後までは、 賃貸人は賃借人に対して定期建物賃貸借契約の終了を対抗することができないため、賃借人は明渡しを猶予されるのであり、このことは、契約終了通知が期間満了前にされた場合と期間満了後にされた場合とで異なるものではない」と判示しています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

定期借家契約における事前説明文書

2019-03-25

 借家契約のなかには普通の借家契約と異なり契約が更新されることがなく期間の満了によって終了する定期借家契約が存在するところ、この定期借家契約においては、契約を締結するに際し、契約書とは別に事前に書面を交付してこの契約が定期借家契約であることを説明しなければならない(借地借家法38条2項)とされ、このような事前の書面による説明を怠った場合には、契約書が作成されていても、その契約は普通の借家契約となります(同法38条3項)。

 そこで、家主は、定期契約書とは別に説明用の事前説明文書を作成した上でこれを借家人になろうとする者に対し交付し、さらにこれから締結しようとしている契約が定期借家契約であることを説明することが必要になります。

 なお、最高裁平成24年9月13日判決は,この事前説明文書について、
「法38条1項の規定に加えて同条2項の規定が置かれた趣旨は、定期建物賃貸借に係る契約の締結に先立って、賃借人になろうとする者に対し、定期建物賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了することを 理解させ、当該契約を締結するか否かの意思決定のために十分な情報を提供することのみならず、説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止することにあるものと解される。」「以上のような法38条の規定の構造及び趣旨に照らすと、同条2項は、定期建物賃貸借に係る契約の締結 に先立って、賃貸人において、契約書とは別個に、定期建物賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により 終了することについて記載した書面を交付した上、その旨を説明すべきものとしたことが明らかである。」「そして、紛争の発生を未然に防止しようとする同項の趣旨を考慮すると、上記書面の交付を要するか否かについては、当該契約の締結に至る経緯、当該契約の内容についての賃借人の認識の有無及び程度等といっ た個別具体的事情を考慮することなく、形式的、画一的に取り扱うのが相当である。」「法38条2項所定の書面は、賃借人が、当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず、契約書とは別個独立の書面であることを要する」と 判示しています。

 また、東京地裁平成24年3月3日判決が、「定期建物賃貸借契約の更新がないこととする定めが有効であるためには、賃貸人において、賃借人に対し、 賃貸借契約締結前に、締結される建物賃貸借契約が、同法38条1項の規定による定期建物賃貸借契約であること、当該建物賃貸借契約は契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了することを記載した書面を契約書とは別に交付するとともに、これを口頭で説明することを要すると解される(同条3項参照)。」  「説明書面を交付して行うべき説明は、締結される建物賃貸借契約が、一般的な建物賃貸借契約とは異なる類型の定期建物賃貸借契約であること、その特殊性は、同法26条所定の法定更新の制度及び同法28条所定の更新拒絶に正当事由を求める制度が排除されることにあるといった定期建物賃貸借契約という制度の少なくとも概要の説明と、その結果、当該賃貸借契約所定の契約期間の満了によって確定的に同契約が終了することについて、相手方たる賃借人が理解してしかるべき程度の説明を行うことを要する」と判示しています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

建物の借主の追い出し屋

2019-03-04

 不動産に関するトラブルにはさまざまなものがありますが、建物の鍵を交換して賃借人を締め出すなどのいわゆる「追い出し屋」による被害が近時増加しているようです。賃借人の了解を得ずに部屋の鍵を交換して賃借人が建物に入ることをできなくしたり、賃借人の了解を得ずに部屋の中に入って賃借人の持ち物を外に運び出すといったことをします。

 そこで、このような追い出し屋が問題になった事案に関する裁判例を見ると、大阪高裁平成23年6月10日判決が、賃借人を追い出し、室内にある動産を処分した不動産の管理業者と賃貸人の共同不法行為を認めています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

不動産に関する消費者被害

2019-02-25

 詐欺的な取引によって消費者被害が生じることがあるところ不動産に関するものとして価値の乏しい土地を売りつける原野商法や不要なリフォーム工事を行わせるようなリフォーム詐欺があります。

 原野商法については所定の要件をみたす場合にクーリングオフによる契約の解除(宅地建物取引業法37条の2)が可能となりますが、クーリングオフができない場合でも契約を錯誤により無効(東京地裁昭和58年6月29日判決)、公序良俗違反(名古屋地裁昭和63年7月22日判決)とした裁判例、不法行為の成立を認めた裁判例(東京地裁平成2年9月5日判決、大阪高裁平成7年5月30日判決)があります。  また、リフォーム詐欺についてもクーリングオフや不実告知による契約の取消(消費者契約法4条1項1号、同条5項3号)などが考えられるところ、さらに、請負人の瑕疵担保責任と不法行為を認めた裁判例(高松高裁平成20年2月21日判決)があります。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

不動産の借主による迷惑行為

2019-01-15

 不動産の賃貸借、使用貸借における借主の迷惑行為によってトラブルになることがあります。

 借主の迷惑行為が問題となった裁判例を見ると、野鳩の餌付け・飼育による障害に基づく損害の賠償請求等が問題となった事案について、東京地裁平成7年11月21日判決は、「区分所有者の共同の利益に反する行為であり、その行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難な場合に当たる」として損害賠償請求を認めています。

 また、騒音等の迷惑行為による契約の解除、競売請求等が問題となった事案について、東京地裁平成17年9月13日判決は、被告が「本件専有部分等を所有し続けることは、必然的に本件マンションの区分所有者の共同の利益に反することになる」「区分所有権及び敷地利用権の競売以外の方法によってはその障害を除去して共用部分の維持を図ることが困難である」として競売請求等を認めています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

« Older Entries Newer Entries »
ページの上へ

   Copyright© 2010-2025 ひらま総合法律事務所: 東京都港区白金で弁護士相談 All Rights Reserved.   プライバシーポリシー