Archive for the ‘社会福祉’ Category

プライバシーの侵害の成立要件

2018-11-05

 インターネット上の投稿などによるプライバシーの侵害が問題とされるケースが生じているところ、プライバシーの侵害の成立要件が問題となります。

 この点、小説によるプライバシーの侵害が問題となったいわゆる「宴のあと事件」について東京地裁昭和39年9月28判決が、
① 私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること、
② 一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められる事柄であること、
③ 一般の人々にいまだ知られていない事柄であること、
④ このような公開によって当該私人が実際に不快、不安の念を覚えたこと
をプライバシー侵害の成立要件としています。

そして、その後の裁判例では、上記判決で提示された要件で判断しているものが多いようです。

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精神病を原因とする離婚請求と裁量棄却

2018-10-08

 民法770条1項は、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(4号)を離婚原因として規定しているところ、当該離婚原因による離婚請求においては裁量棄却条項(同条2項)の適用がしばしば問題となります。

 そこで、精神病を原因とした離婚請求に関する裁判例を見ると、最高裁昭和33年7月25日判決は、「民法770条は、あらたに「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき」を裁判上離婚請求の一事由としたけれども、同条2項は、右の事由があるときでも裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは離婚の請求を棄却することができる旨を規定しているのであって、民法は単に夫婦の一方が不治の精神病にかかった一事をもって直ちに離婚の訴訟を理由ありとするものと解すべきでなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない法意であると解すべきである」と判示しています。

 また、最高裁昭和45年11月24日判決は、上記判例を踏まえた上、「これらの諸般の事情は、前記判例にいう婚姻関係の廃絶を不相当として離婚の請求を許すべきではないとの離婚障害事由の不存在を意味し、・・・民法770条1項4号に基づく離婚の請求を認容した原判決は正当として是認することができる」と判示しています。

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認知されていない子との間での扶養の権利義務

2018-09-10

 嫡出でない子と父との法律上の父子関係は認知によって発生するところ、認知のない血縁上の父子の間に扶養の権利義務関係は生じないかという問題があります。

 この問題に関する裁判例をみると、東京地裁昭和54年3月28日判決は、「非嫡出子については、父が認知しないかぎり法律上の父子関係が発生しなく、法律上の父子関係がない以上父は単に血縁上の子に対しては扶養義務を負わない」と判示しています。

 一方、認知請求訴訟の係属中でその判決が確定する前に扶養を請求した事案について、福岡家裁昭和40年8月6日審判は、認知請求を正当として扶養義務を肯定し、また、請求者が内縁の夫の子であると推定される事案について、東京家裁昭和50年7月15日審判は、認知請求事件の判決をまたずに扶養義務を肯定しています。

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内縁関係における費用の分担

2018-09-03

 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して婚姻から生じる費用(婚姻費用)を分担する(民法760条)とされているところ、内縁も婚姻に準ずる関係として婚姻におけるのと同様の費用の分担が認められるかどうかが問題となります。

 そこで、この問題に関する裁判例をみると、最高裁昭和33年4月11日判決が「内縁が法律上の婚姻に準ずる関係と認むべきであること前記説明の如くである以上、民法760条の規定は、内縁に準用されるものと解すべき」とした上、「被上告人の支出した医療費は、別居中に生じたものであるけれども、なお、婚姻から生じる費用に準じ、同条の趣旨に従い、上告人においてこれを分担すべきものといわなければならない」と判示しています。

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親族の扶養の程度・方法

2018-08-27

 親族の扶養の程度又は方法については、民法879条が当事者間の協議か扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮した上で家庭裁判所の審判で定めるとしています。

 また、扶養方法としては引取扶養と給与扶養があり、給与扶養については金銭給与扶養と現物給与扶養があるとされています。

 なお、扶養義務者が複数存在する場合、引取扶養をする者と給与扶養を行うものを決めることも可能で、大阪家裁昭和40年3月20日審判、仙台家裁昭和56年3月31日審判などは、扶養義務者のうちのある者に対し引取扶養を、他の者に対し金銭給与扶養を命じています。

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当ウェブサイト内のサイトページ追加(介護施設)のお知らせについて

2018-06-08

 被介護者虐待が社会問題になっています。当ウェブサイト内の「取扱分野」のカテゴリー内の「社会福祉(旧高齢者)」において、以下のサイトページを追加したのでお知らせします。

介護施設に関する悩み

URL: http://hirama-law.jp/service/troubles-concerning-care-facilities/

今後とも、本サイトをご愛嬌いただけますよう心からお願い申し上げます。
ひらま総合法律事務所

相続人の共有財産の分割請求

2018-03-19

 遺産相続によって相続人の共有となった財産の分割は民法907条に基づく遺産分割の審判と民法258条に基づく共有物分割訴訟のいずれによるのかという問題があります。
 この点、相続人間で分割が問題になった場合について、最高裁昭和62年9月4日判決は、「遺産相続により相続人の共有となった財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判法の定めるところに従い、家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではない」と判示しています。
 一方、持分の譲渡を受けた第三者がいる場合について、最高裁昭和50年11月7日判決は、「第三者が右共同所有関係の解消を求める方法として裁判上とるべき手続は、民法907条に基づく遺産分割審判ではなく、民法258条に基づく共有物分割訴訟である」と判示しています。

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遺言の内容と異なる遺産分割協議

2018-03-12

 遺産に属する財産を共同相続人のうちの一人に遺贈するという遺言書がある場合、遺言をした者の死亡により、その財産は、受遺者に直ちに帰属することになりますが、その後に遺言の内容と異なる遺産分割協議が成立した場合に遺贈の効力が否定されるのかという問題があります。この点について、遺産に属する定期預金債権を共同相続人のうちの一人に遺贈するという内容の遺言とは異なる遺産分割協議が成立した事案に関する最高裁平成12年9月7日判決は、本件定期預金債権は遺言により特定遺贈されたもので本件遺産分割協議の対象とはされておらず、受遺者による遺贈の放棄はないのであるから、本件定期預金債権は遺言者の死亡によって直ちに受遺者に帰属したものであり、遺産分割協議が成立したということは遺贈の効力を左右しないとしています。

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遺産分割協議の法定・合意解除

2018-03-05

遺産分割協議において債務の負担について合意することがありますが、その債務の不履行を理由として遺産分割協議を解除することができるかという問題があります。
 この問題に関する裁判例を見ると、分割協議で合意された債務の不履行を理由として遺産分割協議を解除することはできないとしており、最高裁平成元年2月9日判決は、相続人のうちの一人が協議によって負担した債務を履行しなくても、債権を有する相続人は、民法541条により協議を解除することはできないとしています。
 これに対し、遺産分割の合意解除に関する裁判例を見ると、これはできるとしているようであり、最高裁昭和62年1月22日判決は、相続人らは、遺産分割協議のうち土地に関する部分を相続人全員の合意によって解除し改めて分割協議をしたものであり、2回目の分割協議による土地の共有持分の取得は地方税法73条の7第1号所定の「相続に因る不動産の取得」に該当するとし、また、最高裁平成2年9月27日判決は、共同相続人の全員が遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除したうえ、改めて遺産分割協議をすることは、法律上当然には妨げられるものではないとしています。

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遺言書の偽造・変造等による相続欠格

2017-11-20

民法891条は、相続人となる資格を失う相続欠格事由につき定めているところ、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿がこの相続欠格事由のひとつとされています(同条5号)。

そこで、この遺言書の偽造等が問題となった裁判例をみると、最高裁昭和56年4月3日判決は、「被相続人の遺言書がその方式を欠くために無効である場合又は有効な遺言書についてされている訂正がその方式を欠くために無効である場合に、相続人がその方式を具備させることにより有効な遺言書としての外形又は有効な訂正としての外形を作出する行為は、同条5号にいう遺言書の偽造又は変造にあたるけれども、相続人が遺言者たる被相続人の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨で右の行為をしたにすぎないときは、右相続人は同号所定の相続欠格者にはあたらない」と判示しています。

また、最高裁平成9年1月28日判決は、「相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法891条5号所定の相続欠格者には当たらない」「遺言書の破棄又は隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、これを遺言に関する著しく不当な干渉行為ということはできず、このような行為をした者に相続人となる資格を失わせるという厳しい制裁を課することは、同条5号の趣旨に沿わないからである」と判示しています。

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