精神病を原因とする離婚請求と裁量棄却
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民法770条1項は、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(4号)を離婚原因として規定しているところ、当該離婚原因による離婚請求においては裁量棄却条項(同条2項)の適用がしばしば問題となります。
そこで、精神病を原因とした離婚請求に関する裁判例を見ると、最高裁昭和33年7月25日判決は、「民法770条は、あらたに「配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき」を裁判上離婚請求の一事由としたけれども、同条2項は、右の事由があるときでも裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは離婚の請求を棄却することができる旨を規定しているのであって、民法は単に夫婦の一方が不治の精神病にかかった一事をもって直ちに離婚の訴訟を理由ありとするものと解すべきでなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない法意であると解すべきである」と判示しています。
また、最高裁昭和45年11月24日判決は、上記判例を踏まえた上、「これらの諸般の事情は、前記判例にいう婚姻関係の廃絶を不相当として離婚の請求を許すべきではないとの離婚障害事由の不存在を意味し、・・・民法770条1項4号に基づく離婚の請求を認容した原判決は正当として是認することができる」と判示しています。
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