Archive for the ‘相続’ Category

遺言が無効となる場合

2020-10-19

 財産処分の方法として遺言が認められていますが、その効力が否定され無効となる場合があります。

 まず、遺言能力のない者による遺言は無効とされます。民法は15歳を遺言のできる年齢としており(民法961条)、15歳以上で意思能力があれば未成年者や被保佐人でも単独で遺言をすることを認めていますが、成年被後見人については意思能力を回復していることに加えて医師2名以上の立会いが必要としています(同法973条)。意思能力が問題となった裁判例を見ると、事理弁識能力を欠くとして遺言を無効とした事例(東京高裁平成12年3月16日判決等)がありますが、統合失調症であっても無効としなかった事例(最高裁平成10年3月13日判決)があります。

 また、内容が不特定・不明確な遺言は無効とされます。裁判例を見ると、全財産を「公共に寄付する」という遺言に関し、最高裁平成5年1月19日判決は、受遺者の特定を遺言執行者にゆだねたものとして有効としています。一方、遺産の全部をある者に任せるという遺言に関し、東京高裁昭和61年6月18日判決は、遺言者とその者との関係その他の状況から遺贈と解するのが困難であるとして無効としています。

 さらに、二人以上の者が同一の証書で行う共同遺言は無効(同法975条)とされます。裁判例を見ると、二人の遺言の一方に氏名を自書しないという方式違背がある場合に関し、最高裁昭和56年9月11日判決は、全体が無効としていますが、別人の遺言書が合綴されている場合に関し、最高裁平成5年10月19日判決は、それが各別の用紙に記載され、容易に切り離すことができるものであれば有効としています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

共有物分割請求訴訟と遺産分割審判の関係

2019-09-24

共同相続人が遺産を分割する場合、遺産分割の手続(民法907条)によることになりますが、第三者が共同相続人か共有持分権を譲り受けた場合にどのような手続きによって共同所有関係を解消するかという問題があります。

 そこで、この問題に関する裁判例を見ると、最高裁昭和50年11月7日判決が、「第三者が右共同所有関係の解消を求める方法として裁判上とるべき手続きは、民法907条に基づく遺産分割審判ではなく、民法258条に基づく共有物分割訴訟である」としつつ「右分割判決によって共同相続人に分与された部分は、なお共同相続人間の遺産分割の対象となる」と判示しています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

医療過誤を判断する基準としての医療水準

2019-06-10

 医療過誤においては医療機関に課される注意義務の程度が問題となるところ、この程度を判断する基準として医療水準という概念が存在します。

 この医療水準に関する裁判例を見ると、最高裁平成7年6月9日判決は、「新規の治療法に関する知見が当該医療機関と類似の特性を備えた医療機関に相当程度普及しており、当該医療機関において右知見を有することを期待することが相当と認められる場合には、特段の事情が存しない限り、右知見は右医療機関にとっての医療水準である」と判示しています。

 なお、この医療水準から要求される注意義務を軽減する特約の効力に関する裁判例として、東京高裁昭和42年7月11日判決は、手術の結果について異議を申し立てないとする誓約書についてその効力を否定しています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

終身借家権(終身建物賃貸借)

2019-04-15

 建物の賃貸借に関し、借家人が生きている限り存続し、死亡したときに終了する終身借家権(終身建物賃貸借制度)という制度が認められています(高齢者の居住の安定確保に関する法律)。そして、この借家契約においては、

① 書面によって行われること(同法54条2号、57条)

② 都道府県知事の認可事業であること(同法52条以下)

③ 建物の規模及び設備等が国土交通省例で定める基準に適合すること

④ 借家人は60歳以上の者であること

 などが要件とされ、不確定期限(同法52条、54条2号)で、相続権が排除(同法52条)されます。

 なお、上記の制度の他に、期間が定められた契約で賃借人が死亡した場合には期間が満了する前でも契約が終了する期間付き死亡時終了建物賃貸借制度があります。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

不動産に関する消費者被害

2019-02-25

 詐欺的な取引によって消費者被害が生じることがあるところ不動産に関するものとして価値の乏しい土地を売りつける原野商法や不要なリフォーム工事を行わせるようなリフォーム詐欺があります。

 原野商法については所定の要件をみたす場合にクーリングオフによる契約の解除(宅地建物取引業法37条の2)が可能となりますが、クーリングオフができない場合でも契約を錯誤により無効(東京地裁昭和58年6月29日判決)、公序良俗違反(名古屋地裁昭和63年7月22日判決)とした裁判例、不法行為の成立を認めた裁判例(東京地裁平成2年9月5日判決、大阪高裁平成7年5月30日判決)があります。  また、リフォーム詐欺についてもクーリングオフや不実告知による契約の取消(消費者契約法4条1項1号、同条5項3号)などが考えられるところ、さらに、請負人の瑕疵担保責任と不法行為を認めた裁判例(高松高裁平成20年2月21日判決)があります。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

相続放棄の申述と意思表示の瑕疵

2018-12-10

 相続人は、相続を承認するか放棄するかを選ぶことができますが、この相続の放棄につき錯誤等があった場合にその効力が否定されるかどうかが問題となります。

 この点、最高裁昭和40年5月27日判決は、「相続放棄は家庭裁判所がその申述を受理することによりその効力を生ずるものであるが、その性質は私法上の財産法上の法律行為であるから、これにつき民法95条の規定の適用があることは当然である」と判示してその効力が否定される可能性を認め、また、福岡高裁平成10年8月26日判決は、「相続放棄の申述に動機の錯誤がある場合、当該動機が家庭裁判所において表明されていたり、相続の放棄により事実上および法律上の影響を受ける者に対して表明されているときは、法律行為の要素の錯誤として相続放棄は無効になる」として要素の錯誤があった場合は無効になると判示しています。



【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

 

祭祀(さいし)承継者の決定

2018-11-26

 祭祀承継者について民法897条は、被相続人が指定することができ、この指定が無い場合には慣習により定まる、慣習も無い場合には家庭裁判所が定めるとしているところ、家庭裁判所はどのようにして祭祀承継者を決めるかが問題となります。

 そこで、この問題に関する裁判例を見ると、東京高裁平成18年4月19日判決が、「承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係、承継候補者と祭具等との間の場所的関係、祭具等の取得の目的や管理等の経緯、承継候補者の祭祀主催の意思や能力、その他一切の事情・・・を総合して判断すべきであるが、祖先の祭祀は今日もはや義務ではなく、死者に対する慕情、愛情、感謝の気持ちといった心情により行われるものであるから、被相続人と緊密な生活関係・親和関係にあって、被相続人に対し上記のような心情を最も強く持ち、他方、被相続人からみれば、同人が生存していたとすれば、おそらく指定したものであろう者をその承継者と定めるのが相当である」と判示しています。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

相続放棄の熟慮期間の起算点

2018-11-19

 民法915条1項は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に」「承認又は放棄をしなければならない」と定めているところ、この3箇月の熟慮期間の起算点が問題となります。

 この点、最高裁昭和59年4月27日判決は、熟慮期間は、原則として、相続開始の原因たる事実およびこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から起算すべきとした上で、「右各事実を知った場合であっても、右各事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、・・・熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識したとき又は通常これを認識しうべき時から起算すべき」と判示しています。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

マンションの瑕疵と契約の解除

2018-09-24

 マンションを購入した後にさまざまな不都合が判明することがありますが、このような瑕疵がマンションの売買契約の解除原因となるかが問題となります。

 まず、マンション内で自殺があったことが判明した事案について、横浜地裁平成元年9月7日判決は、「売買の目的物に瑕疵があるというのは、その物が通常保有する性質を欠いていることをいうのであって、右目的物が建物である場合、建物として通常有すべき設備を有しない等の物理物欠陥としての瑕疵のほか、建物は、継続的に生活する場であるから、建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に原因する心理的欠陥も瑕疵と解することができる」「解除をしうる瑕疵であるというためには、単に買主において右事由の存する建物の居住を好まないだけでは足らず、それが通常一般人において、買主の立場におかれた場合、右事由があれば、住み心地の良さを欠き、居住の用に適さないと感ずることに合理性があると判断される程度にいたったものであることを必要とする」とした上で、解除原因と認めています。

 また、シックハウスであることが判明した事案について、東京地裁平成17年12月5日判決は、「本件建物にはその品質につき当事者が前提としていた水準に到達していないという瑕疵が存在する」「当該瑕疵は取引上要求される一般的な注意を払っていても容易に発見し得ないものであるというべきである」として、解除原因と認めています。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

認知されていない子との間での扶養の権利義務

2018-09-10

 嫡出でない子と父との法律上の父子関係は認知によって発生するところ、認知のない血縁上の父子の間に扶養の権利義務関係は生じないかという問題があります。

 この問題に関する裁判例をみると、東京地裁昭和54年3月28日判決は、「非嫡出子については、父が認知しないかぎり法律上の父子関係が発生しなく、法律上の父子関係がない以上父は単に血縁上の子に対しては扶養義務を負わない」と判示しています。

 一方、認知請求訴訟の係属中でその判決が確定する前に扶養を請求した事案について、福岡家裁昭和40年8月6日審判は、認知請求を正当として扶養義務を肯定し、また、請求者が内縁の夫の子であると推定される事案について、東京家裁昭和50年7月15日審判は、認知請求事件の判決をまたずに扶養義務を肯定しています。

【お問い合わせ先】
〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号  白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

Photographing place – Liberty Bell Center

« Older Entries Newer Entries »
ページの上へ

   Copyright© 2010-2022 ひらま総合法律事務所: 東京都港区白金で弁護士相談 All Rights Reserved.   プライバシーポリシー