3月, 2022年
営業譲渡と労働契約の承継
労働契約は使用者と労働者との間で締結されるところ、営業が譲渡された場合に労働契約が承継されるかどうかが問題となることがあります。
この問題に関する判例例を見ると、東京高裁平成17年5月31日判決が、営業譲渡に伴い譲渡人がその従業員と締結していた労働契約が当然に譲受人に承継されるものではないから、労働契約が営業譲渡に伴い譲渡人から譲受人に承継されるか否かは譲受人と譲渡人との間でその旨の特別の合意が成立しているか否かによるとし、譲渡人と譲受人の間の合意のうち①賃金等の労働条件を相当程度引き下げる改訂に異議のある従業員については個別に排除する②この目的を達成するために従業員全員に退職届を提出させて譲受人が再雇用するという形式を採り、退職届を提出しない従業員は譲渡人の解散を理由に解雇する旨の合意部分は民法90条に反するものとして無効となるとしています(最高裁平成18年5月16日決定は、この判断をを支持しています)。
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定年後の再雇用
労働契約の成立する場合として新規採用の他に再雇用の場合があります。
この再雇用が問題となった裁判例を見ると、労働契約の成立時期に関し最高裁昭和51年3月8日判決は、定年年齢到達後も「業務の都合によって会社が特に必要と認めた場合は嘱託として再雇用することがある」との就業規則の規定の下に定年退職後も特段の欠格事由のない限り当該労働者を直ちに嘱託として再雇用するとの労働慣行が確立している場合、営業成績や健康状態で特段の欠格事由のない労働者については定年退職した日の翌日に再雇用契約が成立したものといえるとしています。
なお、65歳までの雇用確保措置を定める高年法9条に関し、大阪高裁平成21年11月27日判決は、同法の改正経緯を踏まえると、事業主が転籍型の継続雇用制度を採用する場合、事業主と転籍先との間に同一企業グループの関係が存在するとともに転籍後も高年齢者の雇用が確保されるような関係性が認められなければならないと解するのが相当である。これらの関係性が認められる本件制度は同条1項2号で定める継続雇用制度に適合するものであり、事業主に同号違反を理由とした債務不履行や不法行為は成立しないとしています。
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相続の廃除原因となる被相続人に対する虐待、重大な侮辱、著しい非行
民法892条は、①被相続人に対する虐待、重大な侮辱と②推定相続人の著しい非行を相続人が相続から廃除される事由としています。
この相続の廃除事由を認めた裁判例として、東京高裁平成4年12月11日決定は、本条にいう虐待又は重大な侮辱は、被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を害する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的協同生活関係が破壊されその修復を著しく困難ならしめるものをも含むとし、非行を繰り返した当該相続人が暴力団の一員であった者と婚姻し、父母が婚姻に反対であることを知悉していながら、披露宴の招待状に招待者として父の名を印し父母の知人等に送付した行為はこれに当たるとしています。
なお、廃除事由が本条所定の事由に限られるかについて、名古屋高裁金沢支部昭和60年7月22日決定は、「右規定は一種の一般条項であるから廃除事由としては、虐待、侮辱行為に限定されず、そのほか遺留分を失うことが相当と判断される程度の有責行為であればその種類、内容は問わない」「廃除事由は、抽象的には、相続的共同関係を破壊するに足りる相続人の被相続人に対する重大な非行一般の趣旨に解することができ」としています。
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労働者に対する降格・減給
賃金は労働者の生活の糧として労働者に大きな影響を及ぼします。そのため、賃金にかかわる降格・減給が争いになることがあります。
この降格・減給に関する裁判例を見ると、東京地裁平成12年1月31判決は、備っていると判断された職務遂行能力が営業成績や勤務評価が低い場合にこれを備えないものとして降格させることを予定していない一般的な職能資格制度の下では、労働者の自由意思に基づいてなされた同意等の法的根拠なく、使用者が降格や職能給の減額措置を行うことはできないとしています。
また、東京地裁平成16年3月31日判決は、労働契約の内容として成果主義による基本給の降給が定められている場合であっても降給が許容されるためには、さらに降給が決定される過程に合理性があること、その過程が従業員に告知されてその言い分を聞く等の公正な手続が存することが必要である。降給の仕組み自体に合理性と公正さが認められその仕組みに沿った降給の措置が採られた場合には、個々の従業員の評価の過程に特に不合理ないし不公正な事情が認められない限り、当該降給の措置は当該仕組みに沿って行われたものとして許容されるとしています。
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