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未決勾留日数の本刑への任意通算(裁定算入)
裁判所は、勾留状による拘禁である未決勾留の日数の全部または一部を本刑に算入することができる(刑法21条、任意通算)とされています。
この任意通算の可否に関する裁判例を見ると、最高裁昭和30年12月26日判決は、同一被告人に対する数個の公訴事実を併合審理する場合に無罪となった公訴事実につき発せられた勾留状による未決勾留日数を他の有罪とした公訴事実の本刑に算入できるとし、最高裁昭和55年12月23日判決は、起訴されなかった住居侵入の事実についての未決勾留日数は、右と一罪の関係にある起訴された常習累犯窃盗の罪の本刑に算入できるとしています。
一方、最高裁昭和32年12月25日判決は、未決勾留中の被告人が他事件の確定判決により懲役刑の執行を受けるに至ったときは、懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入できないとし、最高裁昭和40年7月9日判決は、他事件につき本刑である自由刑に算入された未決勾留と重複する未決勾留を、更に本件の本刑に裁定算入又は法定通算することはできないとし、最高裁昭和50年7月4日判決は、起訴されていない被疑事実についての未決勾留は、起訴事件の捜査に利用されたとしても起訴事件の本刑に算入できないとしています。
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〒108-0072東京都港区白金一丁目17番2号 白金アエルシティ 白金タワー テラス棟4階
ひらま総合法律事務所 弁護士 平間民郎(Tel:03-5447-2011)

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常習累犯窃盗・強盗罪
盗犯等の防止及び処分に関する法律3条によって窃盗罪(刑法235条)、強盗罪(同法236条)等の加重事由とされているものとして常習累犯窃盗・強盗罪があります。
これは、①常習として、窃盗(同法235条)、強盗(同法236条)、事後強盗(同法238条)、昏睡強盗(同法239条)の各罪またはその未遂罪を犯した者で、②その行為の前10年内にこれらの罪またはこれらの罪と他の罪との併合罪について、③3回以上、6月の懲役以上の刑の執行を受けまたはその執行の免除を得た者に対して刑を科すべきときは、④窃盗をもって論ずべきときは3年以上、強盗をもって論ずべきときは7年以上の有期懲役に処するとするものです。
この常習累犯窃盗・強盗罪に関する裁判例を見ると、東京高裁昭和27年2月21日判決は、刑の執行を受けるという要件について、執行の着手があればよいとしています。また、大審院昭和14年7月14日判決は、犯人の罪が同時に刑法56条の累犯の要件を具備するときは、さらに累犯加重がなされるとしています。
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刑の執行猶予の要件
刑の言渡しをする場合において、情状によって一定期間内その執行を猶予し、その期間を無事経過したときに刑の言渡しはその効力を失うとする制度を執行猶予と言います(刑法25条等)。
この執行猶予は、①前に禁固以上の刑に処せられたことがない者か、②前に禁固以上の刑に処せられたことがあってもその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者が、三年以下の懲役・禁固または五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときに情状により認められます。また、再度の執行猶予の場合はその要件が厳格になり、一年以下の懲役・禁固の言渡しを受けたときに情状に特に酌量すべきものがあるときに認められます。執行猶予の期間は、裁判確定の日から一年以上五年以下とされています(同法同条1項)。
この執行猶予の要件に関する裁判例を見ると、「前に」の意味について、最高裁昭和31年4月13日判決は、執行猶予を言い渡す判決の以前にという意味であり、既に刑に処せられた罪が現に審判すべき犯罪の前後いずれは問わないとしています。また、「禁固以上の刑に処せられたことがない者」の意味について、最高裁昭和24年3月31日判決は、禁固以上の確定判決を受けたことのない者をいい、その執行を受けなかった者を意味しないとしています。
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未決勾留日数の法定通算
上訴提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き全部これを本刑に通算するとされています。また、上訴申立後の未決勾留の日数も、検察官が上訴を申し立てたときおよび検察官以外の者が上訴を申し立てた場合において、その上訴審において原判決が破棄されたときは、全部本刑に通算するとされています(法定通算、刑事訴訟法495条)。
この法定通算に関する裁判例を見ると、旧法事件について、最高裁昭和26年7月20日判決は、被告人が控訴し更に上告した事件において、上告審が第一審、控訴審判決を破棄、自判した場合には、第一審判決後の未決勾留日数は、すべて本刑に通算されるとしています。
一方、最高裁昭和48年11月9日判決は、他事件の裁判確定によりその本刑に法定通算されるべき未決勾留と重複する未決勾留を本件の本刑に算入しても本件の裁判当時他事件の裁判が未確定の状態にあるときは直ちにこれを違法なものとはいえないが、後に他事件の裁判が確定し右勾留が本刑に通算されて刑の執行に替えられたときは、結局違法となるとしています。
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将来の証拠調べが不可能・困難となる場合の証拠保全
裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは証拠保全をすることができます(民事訴訟法234条等)。
この証拠保全に関する裁判例を見ると、広島地裁昭和61年11月21日決定は、証拠保全の事由について、当該事案に即して具体的に主張され、かつ、疎明されることを要するとし、診療録の改ざんのおそれを右事由とする場合にも具体的な改ざんのおそれを一応推認させるに足る事実を疎明する必要があるとしています。
また、広島高裁平成3年1月31日判決は、送達について、国立病院に対する医療過誤訴訟にかかる診療録等の証拠保全手続では、国の利害に関係ある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律に従って法務大臣が相手方に当たり、国立病院は呼出状の送達場所ではないとしています。
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違法収集証拠の証拠能力
裁判所は、自由な判断で心証を形成できる(自由心証主義、民事訴訟法247条)とされているところ、違法に収集された証拠に証拠能力が認められるのかという問題があります。
この問題に関する裁判例を見ると、東京高裁昭和52年7月15日判決は、証拠が著しい反社会的手段により人の精神的・肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法で採取されたときは、それ自体違法として証拠能力を否定されるとし、無断録音テープは通常話者の人格権を侵害するから、録音の手段・方法が著しく反社会的か否かで証拠能力の適否を決すべきであるとしています。
また、名古屋高裁昭和56年2月18日決定は、書証が窃盗等正当な保持者の意思に反して提出者によって取得されたものであり、これを証拠として取り調べることによって個人的秘密が法廷で明らかにされ人格権が侵害されると認められる場合には、その書証を証拠方法とすることは許されないとしています。
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自由心証と証拠契約の適法性
裁判所は、自由な心証により事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する(自由心証主義、民事訴訟法247条)とされているところ、証拠方法を一定のものに限定する証拠制限契約など事実の確定方法に関する当事者の合意である証拠契約の適法性が問題となります。
この問題に関する裁判例を見ると、東京地裁昭和42年3月28日判決は、係争事実の確定方法につき特定の証拠方法の提出のみを認める証拠契約は、弁論主義が適用され当事者の自由処分が許される事項に限り、裁判所の自由心証主義に抵触しない範囲で適法であるとし、建物の増改築に必要な賃貸人の承諾は書面によることを要するとする合意を有効としています。
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2021 夏季休業のお知らせ Schedule the summer holidays
当事務所の夏季休業日を以下のとおりお知らせします。
令和3年8月13日(金) ~ 同年同月18日(水)まで 終日休業
よろしくお願いします。
Our office will be closed for summer holidays during the following period:
From August 13th, 2021 to August 18th, 2021
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証明が困難な場合における損害額の認定
民事訴訟法248条は、損害賠償請求事件で賠償責任の認められる場合において「損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるとき」に裁判所は、「弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる」と規定しています。
この規定に関し、最高裁平成20年6月10日判決は、不法行為に基づく損害賠償を求める事案について、原告に損害が発生したことを前提とするのであれば、損害額の立証が極めて困難であったとしても本条により相当な損害額が認定されなければならないとしています。
そして、入札における談合による損害額に関し、東京高裁平成21年5月28日判決は、損害額は、談合されていなければ形成されていたであろう落札価格に基づく契約金額と現に締結された請負金額に係る契約金額との差額であるが、これを具体的に立証することはその損害の性質上極めて困難であるから、本条により相当な損害額を認定すべきであるとしています。
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自由心証主義と弁論の全趣旨
裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果を斟酌して自由な心証により事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断すると規定されています(自由心証主義、民事訴訟法247条)。
この弁論の全趣旨に関する裁判例を見ると、大審院昭和3年10月20日判決は、弁論の全趣旨とは、当事者の主張の内容・態度、訴訟の情勢から当然なすべき主張・証拠の申出を怠ったこと、始めに争わなかった事実を後になって争ったこと、裁判所・相手方の問いに釈明を避けたこと等、口頭弁論における一切の積極・消極の事柄を指すとしています。
そして、最高裁昭和27年10月21日判決は、上告人が不知と答えた第三者作成文書については、特段の立証がなくても弁論の全趣旨からその成立の真正を肯定し得るとし、最高裁昭和36年4月7日判決は、判決が証拠調べの結果と弁論の全趣旨を総合して事実を認定している場合、弁論の全趣旨が具体的に判示されていなくても記録の照合によりおのずから明らかであれば理由不備の違法はないとしています。
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